AI時代に拡大するデータセンター需要――建築基準法上の用途と行政庁ごとに異なる判断がもたらす課題

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生成AIやクラウドサービスの普及を背景に、従来より高密度な計算処理を担うデータセンターの重要性が急速に高まっています。今後も国内各地で整備が進むと見込まれる一方、建築基準法第48条による立地規制では、データセンターをどの用途として扱うのかについて、統一された考え方が示されていません。

データセンターには、サーバーを設置する機械室のほか、監視室、事務室、電源設備、冷却設備など、複数の機能が含まれます。そのため、実際の建築確認や用途地域の適合性を判断する際には、「事務所」「倉庫」「工場」など、どの用途に該当するのかが問題となります。建築主事を置く行政庁によって判断が異なる場合があり、一部地域では、その用途判断を含む立地の適法性をめぐって係争に発展しています。

本記事では、国外の既往研究をもとにデータセンターの基本的な仕組みと今後の需要を整理したうえで、建築基準法上の用途分類、行政庁ごとに判断が分かれることの問題点、国が検討している規制・制度の見直しと、最後に研究結果からどのような構造課題があるのか、中長期的な視点から解説します。

目次

データセンターとは

データセンターとは、サーバーやネットワーク機器などの情報通信設備を集中的に設置し、データの保存、処理及び通信を行う施設です。電子メールやWebサイト、クラウドサービス、動画配信サービスなど日常的に利用する多くのデジタルサービスは、データセンターによって支えられています。

近年、データセンターの立地をめぐり国内で係争に発展する例もありますが、データセンターそのものは決して新しい施設ではありません。従来は企業や行政機関が保有する情報システムを安全に運用するための施設として発展し、電子メール、業務システム、Webサービスなどの情報を保存・配信することが主な役割でした。そのため、比較的安定した電力需要を前提とした企業内データセンターや地域向けコロケーション施設が中心といえました。

しかし、近年の生成AI(Artificial Intelligence:AI)の急速な普及により、データセンターの役割は変化しています。生成AIの学習や推論では、高性能GPU(Graphics Processing Unit)を大量に用いた膨大な演算処理が必要となることから、従来の「情報を保存・配信する施設」から、「大規模な計算処理を担う社会インフラ」へと発展しています。

近年の研究では、AIデータセンターは従来のデータセンターとは異なる電力需要特性を有し、高い電力密度や急激な負荷変動を伴う新たな需要として位置付けられており、政府でも従来のデータセンターとは分け、「次世代AIデータセンター」という用語を使っています。

データセンターまたは次世代AIデータセンターについて、法令横断的に統一された定義は存在しません。一部、電気通信事業法上の電気通信設備を収容・運用する建築物として位置付けることができるものの、高性能GPU、受変電設備、大容量蓄電池(リチウムイオン電池内部の電解液が消防法上の危険物に該当する)及び冷却設備等が不可分に構成され、電気通信機能にとどまらず、電力・情報処理を担う社会基盤としての性格を強めています。このため、従来のデータセンターや建築物内に設けられる一般的なサーバールームとは異なるものとして扱う必要があります。

この変化は建築計画にも大きな影響を与えているといえます。従来のデータセンターでは建築物内部のサーバールームが中心的な設備でしたが、次世代AIデータセンターでは受変電設備、無停電電源装置(UPS)、非常用発電設備、冷却設備、通信設備などのインフラ設備が大規模化し、建築計画だけでなく、電力供給や冷却能力を含めた総合的な施設計画が求められるようになっています。

また、データセンターの規模については、国内外で統一された分類基準が確立されていませんが、国外の既存研究や公的資料では、サーバールーム面積、建物の延べ面積、ラック数、IT設備容量、受電容量など、複数の指標によって整理されています。本記事では、既往研究及び国内外の施設事例を踏まえ、データセンターの規模を概ね表1のように整理しました。

区分サーバールーム面積の目安延べ面積の目安電力容量の目安主な用途・形態
マイクロ/エッジ数㎡~100㎡数十~500㎡数十kW~1MW未満基地局、店舗、工場、地域分散処理
小規模100~500㎡500~2,000㎡~数MW企業内データセンター、自社サーバー
中規模500~3,000㎡2,000~10,000㎡数MW~10MW地域型コロケーション
大規模3,000~10,000㎡10,000~30,000㎡10~50MW大規模コロケーション
ハイパースケール10,000㎡超30,000~100,000㎡超数十~100MW以上大規模クラウド、検索、動画配信、生成AI等
(参考)キャンパス型複数棟10万㎡超100MW超AI・クラウド拠点
表1 データセンターの規模区分(既往研究及び施設事例を基に筆者作成)
※国際的に統一された分類ではなく、複数の既往研究・事業事例をもとにした本記事上の便宜的整理

上表のように、従来型データセンターと次世代AIデータセンターでは、求められる役割や施設規模が異なります。現在、国内外で整備が進んでいるハイパースケールデータセンターは、単なる建築物ではなく、大規模な電力供給設備や通信ネットワークと一体となった都市インフラの一つとしての性格を強めているといえます。

一方で、その立地によっては、大量の電力需要、受変電設備や非常用発電設備から生じる騒音、冷却設備による排熱、建築物の巨大化など、周辺市街地や地域インフラに影響を及ぼす可能性があります。

この点においては、現行法上の適用対象ではないものの、建築基準法第51条が敷地位置の調整を求めている卸売市場、火葬場、ごみ処理施設などと同様に、個々の建築確認だけでなく、都市計画的な立地調整を要する施設に近づいていると見ることもできます。

AI時代で需要が急増する理由と今後の需要予測

データセンターの需要は、インターネットやクラウドサービスの普及に伴いこれまでも着実に拡大してきました。しかし、近年の需要増加は、保存量や通信量の増加だけでは説明できません。生成AIの普及により、データセンターには膨大な計算処理能力が求められるようになり、施設の規模や電力需要が大きく変化しています。

AIは「保存」だけでなく「計算」を必要

冒頭でお伝えしたように、従来のデータセンターは、電子メール、Webサイト、企業システムなどの情報を保存・配信することが主な役割でした。一方、生成AIでは、大量のデータを用いてAIモデルを構築する「学習」と、学習済みモデルを利用して文章や画像などを生成する「推論」が行われます。

近年の基盤モデルには総パラメータ数が数千億から1兆規模に達するものもあるとされます。
なお、Mixture of Experts(MoE)型では推論時に一部のパラメータのみを利用するため、総パラメータ数がそのまま計算量を表すわけではありません。
※MoE型:巨大なAIモデル全体を毎回動かすのではなく、その中の必要な一部だけを動かす仕組みのこと。

また、最先端の学習基盤では、数千から数万、計画によってはそれを上回る規模のGPUや専用アクセラレータを並列稼働させる構成が想定されています。そのため、AIデータセンターは従来型データセンターと比較し、高い電力密度と冷却能力が求められる施設となっています。さらに、学習は多数のGPUを長時間同期稼働させる大規模負荷になりやすい一方、推論は個々の処理時間は短くても、利用者が増えれば継続的な基底負荷となり、時間帯や利用状況に応じて変動します。このような負荷特性は、従来型データセンターとは大きく異なります。


世界のデータセンター需要に伴い電力消費量も拡大

国際エネルギー機関(IEA)は、2024年に約415TWhであった世界のデータセンターの年間電力消費量が、2030年には約945TWhまで増加すると予測しています。これは、現在の日本全体の年間電力消費量に相当する規模となります。世界全体では、データセンターの電力消費は2017年以降、年平均約12%という高い伸び率で増加しており、その主な要因として生成AIの普及が挙げられています。

一方、この需要予測には不確実性も存在することにも留意が必要です。AIの普及速度、半導体性能の向上、モデルの効率化、電力インフラ整備などの条件によって、将来の需要は大きく変化するためです。

図1 世界のデータセンター電力消費量のシナリオ別予測(IEA, 2025)

上図に示すように、IEAは2035年までの需要を4つのシナリオで整理しています。

  • Lift-Off:AI利用が急速に拡大し、電力インフラ整備も順調に進むケース
  • Base:現時点で最も蓋然性が高い基準ケース
  • High Efficiency:半導体やAIモデルの効率化が想定以上に進展するケース
  • Headwinds:電力供給制約や経済情勢等によりAI導入が鈍化するケース

2035年の世界のデータセンター電力消費量は、およそ700~1,700TWhと大きな幅があります。しかし、いずれのシナリオでも需要は現在より増加しており、AI時代においてデータセンター需要が拡大する方向性自体は共通しています。よって、今後、データセンターの新規立地に伴い日本においても電力消費量は増加、なおかつその需要は偏在化していくことが想定されています。


需要増加は「建物数」ではなく「施設性能」の変化

次世代AIデータセンターの需要拡大は、複数棟を一体運用するキャンパス型施設が整備される一方、既存施設に高性能GPUや高密度ラックを導入し、建物規模を大きく変えずにIT設備容量、受電容量、冷却能力を引き上げる更新も進んでいます。

この点で、従来の建築統計だけでは、AIデータセンターの需要を十分に捉えられません。例えば、同じ延べ面積1万平方メートルの施設であっても、従来型サーバーを収容する施設と、高密度GPUを収容する施設では、必要となる受電容量、冷却設備、非常用電源、排熱処理能力が大きく異なります。つまり、建物の大きさが同じでも、地域の電力網や水資源、周辺環境に与える影響は同じではないのです。

また、次世代AIデータセンターの大型化と高密度化は、異なる現象として整理する必要があります。大型化とは、敷地や建物を拡張し、複数棟を一体的に運用することです。一方、高密度化とは、単位床面積当たりのIT設備容量や電力消費量を高めることです。前者は土地利用や都市基盤への面的な影響を拡大し、後者は電力供給、冷却、騒音、排熱などの負荷を局所的に高める可能性が高いです。

したがって、AI時代のデータセンター需要は、次の複数の軸で評価する必要があります。

  • 延べ面積
  • IT設備容量
  • 受電容量
  • 単位床面積当たりの電力密度
  • 冷却方式と冷却能力
  • 稼働率
  • 複数棟を含むキャンパス全体の規模

これらを区別して把握しなければ、建築需要とインフラ需要を混同することになります。延べ面積がそれほど増えていなくても、受電容量や冷却能力が大きく増える場合があり、逆に大規模な敷地を持つ施設でも、初期段階では稼働率が低く、実際の電力需要が計画容量を下回ることがあります。

そのため、将来需要を評価する際には、建物の規模だけでなく、「どれだけの計算能力を、どれだけの電力と冷却で支えるのか」という運用面まで含めて捉える必要があります。この点において、国内のデータセンターにおける設備等の情報公開により実態を正確に把握する必要があるといえます。

また、次世代AIデータセンターの需要増加は、建築物の増加というより、土地・電力・冷却・通信を一体化した新たなインフラ需要の拡大として理解する方が適切ともいえます。IT設備容量、受電容量、電力密度、稼働率及びキャンパス全体の規模など、多面的な指標による評価が求められます。


将来予測には複数シナリオで対応する必要

もっとも、AIの普及がそのまま電力需要の比例的な増加につながるとも限りません。

近年では、GPUやAI専用半導体の性能向上に加え、量子化、モデル圧縮、Mixture of Experts(MoE)などの効率化技術によって、同じ処理をより少ない計算量で実行できるようになっていますし、その研究は今後も進むでしょう。また、一部の推論処理は端末やエッジ設備へ分散する可能性もあり、すべての需要が大規模データセンターへ集中するとは限りません。

一方で、計算コストの低下は、AI利用そのものを急速に拡大させる可能性があります。検索、オフィスソフト、設計、医療、製造、物流、自動運転など、生成AIが様々なサービスへ組み込まれるほど、推論処理は継続的に発生します。効率改善によって1回当たりの電力消費が減少しても、利用回数の増加がそれを上回れば、総需要はむしろ拡大する可能性も考えられます。

さらに重要なのは、都市計画上の意思決定は、将来の平均需要ではなく、最大需要を想定して電力・土地・インフラを整備しなければならないという点です。仮に将来的に計算効率が改善したとしても、受電設備や送電網は需要が顕在化してから短期間で整備できるものではありません。発電所や変電所、送電線の整備には数年から十年以上を要する場合もあり、米国や欧州の一部地域では、データセンターの急速な開発に対し、送電網の増強や系統接続手続きが追いつかず、接続遅延や新規立地の制限が生じた事例が報告されています。したがって、今後、日本においても同様に接続遅延が発生する恐れ(すでに起きている可能性)があります。

したがって、AI時代のデータセンター需要は、計算効率だけで評価できるものではありません。計算需要、設備稼働率、電力供給能力、土地利用、送電網整備などを含めた複数のシナリオを前提として検討することが、土地利用計画においても重要になります。例えば、都市計画マスタープランや立地適正化計画などの土地利用計画において、次世代AIデータセンターを地域のインフラを支える施設として捉えるなどです。

日本国内でも進むデータセンター整備

日本国内のデータセンターは、全国に均等に立地しているわけではなく、東京圏及び大阪圏に著しく集中しています。

総務省・経済産業省の資料によれば、2023年時点で確認された国内データセンターは510棟、サーバールーム面積の合計は約168万㎡です。このうち、関東地方が約107万㎡で全体の64%、関西地方が約41万㎡で24%を占めており、両地域を合わせると約88%に達します。

一方、棟数ベースでは、関東が38%、関西が16%であり、両地域の合計は54%です。面積割合が棟数割合を大きく上回ることから、単に施設数が多いだけでなく、比較的大規模なデータセンターが東京圏及び大阪圏に集中していることが分かります。

この集中の背景には、大規模な通信需要、国際・国内通信網への接続性、電力供給、顧客企業との近接性などがあります。特に千葉県印西市をはじめとする東京圏では、大規模なデータセンター集積が形成されており、2024年以降の新設計画についても首都圏及び大阪圏への集中が確認できます。

建築基準法上の用途はどう考えるべきか

データセンターは、建築基準法上の独立した用途として位置付けられておらず、公開された建築確認資料、自治体見解及び係争資料から、事務所、倉庫、工場または「その他」として判断される事例が確認できます。

ここでよく勘違いされる可能性があるのが、建築物単体に課せられる制限(単体規定。例えば耐火建築物への要求)と立地可能かどうかを判断するための制限(集団規定)は別物であるという点です。

昨今、問題とされるのは立地可能かどうかの判断(建築基準法第48条規制)です。

しかしながら、建築基準法ではデータセンターを定義付けしていません。加えて、データセンターが問題として顕在化される以前から、各自治体(建築主事:建築基準適合判定資格者を置く自治体)が独自に判断を行っているため、国内で運用差が生じており、行政庁の集まりである日本建築行政会議でも用途判断をどのように行うのかについては明確な方針が示されておらず、国内の建築行政のあり方を考える上でも重要な論点といえます。

用途判断で確認される論点を図解すると、次のようになります。これは一つの用途へ結論付ける図ではなく、複合する機能と、用途判断とは別に確認すべき規制を整理したものです。

図解|データセンターの用途判断を考える順序
施設名ではなく、建物の実際の使われ方・運営方法から確認
主たる機能と各部分の構成を整理
監視・管理人が行う監視、保守、事務、情報処理
機器の収容サーバー、ラック、通信機器を建物内に設置
連続的な計算GPU・機械設備を24時間稼働し情報を処理
インフラ設備受変電、蓄電池、非常用発電、冷却、通信
実態に近い用途候補を整理
事務所監視・管理機能
倉庫機器の収容機能
工場機械による連続処理
その他複合用途・既存分類外
用途名とは別に確認する規制
用途地域法第48条・別表第2、建物規模による立地可否
危険物・燃料令第130条の9、蓄電池の電解液、非常用燃料の量
地区計画・条例市町村独自の用途制限、特別用途地区など
単体規定・消防防火、避難、排煙、消火設備、構造など
全国統一の判断基準がないため、行政庁・確認申請先との個別協議が必要

用途は、施設名称や一つの設備だけで自動的に決まるものではありません。この個別判断の積み重ねが、行政庁ごとの運用差や立地の予見可能性をめぐる問題につながっています。

建築基準法上の用途候補データセンターとの類似点主な用途地域への立地可能性リチウムイオン蓄電池内部に含まれる電解液の貯蔵上限による影響
事務所監視、保守、管理、情報処理業務第二種中高層、第一種住居、第二種住居、準住居、近隣商業、商業、準工業、工業、工業専用に立地可能。ただし、大規模は第二種住居以上で立地可能。蓄電池量が5千ℓ(住居系)、1万ℓ(商業系)、5万ℓ(準工業)を超えれば、立地制限を受ける。
倉庫(倉庫業を営む倉庫を除く)サーバー、ラック、機器を建物内に収容第二種中高層、第一種住居、第二種住居、準住居、近隣商業、商業、準工業、工業、工業専用に立地可能。ただし、大規模は第二種住居以上で立地可能。上に同じ
工場機械設備による連続的な情報処理、電力・冷却設備の比重が大きい規模によるが、準工業・工業・工業専用地域に立地可能5万ℓ(準工業のみ)を超えれば、用途地域による立地制限を受ける
その他(いずれにも分類されない)既存用途のいずれにも該当しない特定行政庁が実態を踏まえて判断「その他」としても危険物量規制は回避できず、蓄電池量によって立地可能地域が絞られる。(事務所・倉庫に同じ)
表2 用途分類とリチウムイオン蓄電池の立地制限(現状) ※上記のほか、非常用発電設備稼働用の重油・軽油等の数量制限(地下貯蔵施設を除く)がある。

生成AIの普及に伴う大規模データセンターは、従来の用途分類だけでは捉えきれない特性を有しています。建物内にはサーバー室のほか、受変電設備、非常用発電設備、冷却設備及び通信設備が一体的に配置され、施設全体として継続的な情報処理サービスを提供しています。在館者は少ない一方で、大量の電力を消費し、冷却や排熱、非常用発電設備などが周辺環境へ与える影響は一般的な事務所や倉庫とは大きく異なります。

さらに近年では、複数棟を一体運用するキャンパス型施設も増加しており、建物単位ではなく施設全体として機能する事例が一般化しつつあります。このような施設を既存用途へ機械的に当てはめることは、建築物としての利用形態は説明できても、地域インフラへの負荷や都市への影響を十分に評価することは困難です。

国が進める制度見直し

データセンターをめぐる制度上の課題について、国も見直しに着手しています。2026年6月29日に規制改革推進会議が取りまとめた「規制改革推進に関する答申」では、「次世代AIデータセンターの国内立地の加速」が独立した改革項目として位置付けられています。

したがって、現段階では単に「検討されている」というより、具体的な措置内容と実施時期が答申に示された段階にあります。 国は、低遅延性やプライバシー、データセキュリティが重視されるAI処理について、国内に計算基盤を確保する必要があるとしています。

一方、AIサーバーは計算時の消費電力が大きく変動するため、ラック付近にリチウムイオン蓄電池を設けて電力変動を吸収・平準化する必要があり、次世代AIデータセンターでは大量の蓄電池が設置されることが想定されています。このため、既存の消防法令や建築基準法令は、このような施設構成を十分に想定していないことから、国内立地を妨げる制度上の課題が生じています。

国が認識している三つの課題

第一は、リチウムイオン蓄電池の危険物量の合算です。

リチウムイオン蓄電池の電解液は、消防法上の危険物に該当します。施設内にある蓄電池の電解液を合算して指定数量を超える場合、危険物の貯蔵所または取扱所としての規制が適用されます。現行の消防庁通知では、一定の燃焼試験により安全性を確認した蓄電池について、危険物量の合算から除外できる仕組みがあります。しかし、その試験は原則として蓄電池を密閉した状態で行うことを前提としており、冷却のために開口部を必要とするAIサーバー用設備では適合できない場合があります。また、開口部を設けた状態で試験する国際規格UL 9540Aを利用しようとしても、国内には必要な試験環境が十分に整備されていないことが課題とされています。

第二は、消防法と建築基準法の規制が連動していないことです。

消防法上、安全性が確認されて危険物量の合算除外が認められた場合でも、建築基準法施行令第130条の9による危険物の貯蔵量制限は別途適用されます。このため、大量のリチウムイオン蓄電池を備えるデータセンターは、第二種中高層から準住居地域、近隣商業地域・商業地域及び準工業地域への立地が制限され、工業地域または工業専用地域への立地を余儀なくされる可能性があります。つまり、安全性能が確認されても、消防法上の判断が建築基準法上の立地制限には反映されないという、法令間の不整合が生じています。

第三は、消火設備と排煙設備の選択肢が現行規定と適合していないことです。

一定規模以上の通信機器室では、不活性ガス、ハロゲン化物または粉末を用いる消火設備が原則として求められます。しかし、リチウムイオン蓄電池の火災では、冷却効果を持つ水系消火設備が有効となる可能性がある一方、現行規定では通信機器室に水系消火設備を選択するための仕組みが十分に整備されていません。さらに、水系消火設備を採用できるようになった場合でも、現行の建築基準法令上は、不活性ガス消火設備等を設けた場合と同様の排煙設備の免除規定がありません。その結果、防火安全上必要性が低い場合であっても、別途排煙設備を設置しなければならない可能性があります。

また、答申では、”電力・通信インフラへのアクセスが確保された準住居地域、商業地域及び準工業地域への立地が制限されることを課題”としています。しかし、電力・通信インフラへのアクセス性と、都市計画上(地域単位のまちづくり)の土地利用適合性は別の問題です。

特に、大量の蓄電池、非常用発電設備及び冷却設備を備える次世代AIデータセンターについては、既存インフラを利用できることのみを理由に住居系・商業系用途地域への立地を可能とするのではなく、都市計画で立地を調整する仕組みがあってもよいと考えられます。

予定されている制度見直し

答申では、これらの課題に対して、消防法と建築基準法を個別に改正するだけでなく、関係府省が一体的に制度を見直す方針が示されています。

項目所管見直しの内容実施時期関係法令
蓄電池の合算除外消防庁UL 9540Aとの整合を図り、安全性が確認された蓄電池を危険物量の合算から除外できるよう消防庁通知を改正。開口部を有する状態での国内試験方法も検討2026年度措置消防法・消防庁通知
建築基準法上の貯蔵量制限国土交通省消防法上の合算除外が認められたリチウムイオン蓄電池について、建築基準法施行令130条の9の適用除外を検討2026年度上期検討開始→結論後速やかに措置建築基準法施行令130条の9
水系消火設備の選択消防庁火災時の有効性、水損、感電、避難者・消防隊員の安全性を検証し、水系消火設備を選択できるよう総務省令の制定・改正を検討2026年度上期検討開始→結論後速やかに措置消防法施行令13条・29条の4
排煙設備の免除国土交通省水系消火設備を設置した通信機械室について、排煙設備が不要と判断される場合は、平成12年建設省告示第1436号の改正等により免除2026年度上期検討開始→結論後速やかに措置建築基準法施行令126条の2・H12建設省告示1436号
府省横断の検討体制経済産業省・総務省消防庁、国土交通省などが参加し、規制・制度の更新を一体的に議論する枠組みを構築2026年度措置制度運用
地域社会との共生経済産業省・総務省「データセンター地域共生ガイドライン」の実効的な遵守を促進するとともに、業界団体による自主的な情報発信を支援2026年度措置ガイドライン

このうち、建築基準法との関係で特に重要なのは、消防法上の安全確認と、建築基準法施行令第130条の9に基づく用途地域別の貯蔵量制限を連動させようとしている点です。見直しが実現すれば、安全性が技術的に確認されたリチウムイオン蓄電池について、現在よりも幅広い用途地域にデータセンターを立地できる可能性があります。

要するに、大容量の蓄電池を要するデータセンターを住居系・商業系にも誘導可能になるということです。

用途分類の問題は残されている

今回の答申で中心となっているのは、リチウムイオン蓄電池、消火設備、排煙設備及び用途地域における危険物量制限の見直しです。データセンターそのものを建築基準法上「事務所」「工場」「倉庫」、「その他(電算室・データセンター)」のどれとして扱うのかという用途分類について、統一的な判断基準を示すものではありません。

例えば、印西市では、工場および倉庫業を営む倉庫の立地を制限する地区計画区域(用途規制は商業地域で、地区計画により工場等を規制)において、データセンターへの確認済証が交付され、その適法性をめぐって現在係争中の事例があります。建築確認上の用途は、民間の指定確認検査機関により「その他(データセンター)」とされています。

一方、争点となっている制限は、印西市は小規模建築物のみ審査できる限定特定行政庁ですが、建築基準法第68条の2に基づいて定めた地区計画条例は市区町村が定めることができます。このため、データセンターが条例上の制限用途に該当するかについて、指定確認検査機関が印西市の見解を確認した可能性はあります(ただし、具体的な照会や協議の有無は公開資料から確認できないため、この点は推測にとどまります。)

また、当該地区計画条例が規制しているのは倉庫一般ではなく、「倉庫業を営む倉庫」です。データセンターは、通常、他人の物品を寄託に基づいて保管する倉庫業とは性格が異なるため、倉庫業を営む倉庫への該当性は限定的と考えられます。したがって、本件の中心的な論点は、データセンターが機械設備によって継続的な情報処理を行う施設として、「工場」に該当するか、それとも既存用途には該当しない「その他の用途」として扱うことができるかにあると考えられます。

したがって、今回の制度見直しによって、大量の蓄電池を備えたAIデータセンターの立地制約の一部は緩和される可能性がありますが、行政庁ごとに用途判断が分かれるという根本的な問題が直ちに解消されるわけではありません。

また、立地規制の緩和に当たっては、答申も「交通その他の市街地環境への悪影響が生じないこと」を検証するよう求めています。さらに、地域住民の安全・安心への懸念に向き合い、社会的受容性を確保することも明記されています。つまり、国の方針は単純な規制緩和ではなく、安全性能を確認した上で立地の選択肢を広げると同時に、周辺環境と地域社会への配慮を求める性能規定化と捉えるべきです。 特に、データセンターの立地による便益は立地自治体のみならず、超広域に及び、立地判断を一自治体に委ねるにはガバナンス上の課題ともいえます。

この動きは、データセンターを従来の建築用途へ形式的に当てはめるだけではなく、蓄電池の安全性能、消火方法、排煙、周辺市街地への影響を横断的に評価しようとするものです。一方で、用途分類や都市計画上の立地誘導については、なお検討すべき課題が残されています。

整理すると次のようになります。

 データセンターは、多数のサーバーやラックを建物内に収容し、人の常時滞在が比較的少ない点では、倉庫に近い外形を有します。特に、顧客の機器を預かり、電源、通信及び空調環境を提供するコロケーション型施設については、設備を収容・保全する建築物という理解に一定の合理性があります。
 もっとも、従来型データセンターも、単にサーバーを保管してきたわけではありません。Webサービス、データベース、業務システム、クラウドサービス等に必要な演算処理を、サーバーによって継続的に実行してきました。このため、データセンターを倉庫と同一視することにも限界があります。
 生成AI対応データセンターでは、この演算機能がさらに高密度化・大規模化しています。高性能GPUや専用アクセラレータを多数配置し、受変電設備、冷却設備、蓄電設備及び非常用発電設備を一体的に運用することで、大規模な並列計算を継続しています。電力を投入し、機械設備を連続稼働させて計算結果を生成する点では、工場に近い機能的特徴を有します。
 しかし、建築基準法上の工場概念は、一般に有体物の製造又は加工を行う施設を念頭に置いて形成されてきました。データセンターが提供するのは情報処理、通信又は計算サービスであり、これを当然に工場と解することには慎重であるべきです。また、通常のデータセンター事業は製造業ではないため、工場立地法上の工場に該当すると解することも困難です。
 したがって、データセンターは倉庫的な収容機能、事務所的な監視・管理機能、工場的な連続処理機能を併せ持つ複合的な施設と捉えるのが適切です。とりわけ次世代AIデータセンターでは、電気通信設備、計算設備、電力設備及び冷却設備の一体性が強まっており、既存の用途区分のいずれかに機械的に当てはめるよりも、「データセンター」として独立した用途に位置付けIT設備容量、受電容量、電力密度、蓄電池・非常用燃料量、冷却方式及び施設群全体の規模に応じて、段階的な用途規制を設けることが考えられるとともに、都市計画法の都市施設として位置付け、広域的な判断で立地調整できる仕組みを設けることが考えられます。

おわりに

現状、データセンターは建築基準法上の独立した用途として定義されておらず、「事務所」「倉庫」「工場」又は「その他」として個別に判断されています。しかし、次世代AIデータセンターは、従来型データセンターとは異なり、高密度なGPU群、大規模な受変電設備、大量のリチウムイオン蓄電池、非常用発電設備及び冷却設備を一体的に備え、24時間継続して情報処理を行う施設です。この実態を踏まえれば、現行の建築行政による個別判断だけでは、全国的に整合した取扱いを確保することが難しくなりつつあります。

今後は、次世代AIデータセンターを法律上明確に定義した上で、IT設備容量、受電容量、単位床面積当たりの電力密度、蓄電池及び非常用燃料の貯蔵量、冷却方式並びに複数棟を含むキャンパス全体の規模を基準として、用途規制を段階化する必要があります。

小規模なエッジ型又は企業内データセンターについては、事務所その他の一般的用途に準じて取り扱う余地があります。一方、数十MW級以上の大規模なAIデータセンターについては、その電力需要、設備規模、周辺環境への影響を踏まえ、住居系・商業系用途地域への立地の妥当性を慎重に検討する必要があります。

また、電力・通信インフラへの接続性を理由として例外的に住居系・商業系地域へ立地させる場合には、個別の建築確認だけで判断するのではなく、地区計画又は都市計画決定を通じて、住民意見、周辺自治体を含む土地利用、騒音、排熱、景観、交通、防災及びインフラ負担を総合的に審査する必要があります。

さらに、消防法に緩和条項を設けるにしても、消防上の安全性が確認されたことと、地域の都市計画・まちづくりにおいて、その土地利用が適切であることは別問題として捉える視点も必要といえます。加えて、今後、社会生活において不可欠な施設として性格が強まることが想定されます。その公益性と立地上の課題を国民・住民に周知・理解を得るとともに、恩恵を受ける圏域単位で立地可能な場所を確保していくなどの政策が求められているともいえます。

今後は、国による制度見直しの動向を踏まえながら、用途地域制度との整合や立地誘導のあり方について、さらなる検討が期待される。

引用・参考文献

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  2. 大庭哲治・鎌田佑太郎(2025)「データセンター立地をめぐる英国・ロンドン都市圏の都市計画課題と日本への政策的示唆」『都市計画報告集』No.24、pp.494–498
  3. International Energy Agency(IEA)(2025)Energy and AI, World Energy Outlook Special Report, Paris: IEA.
  4. 総務省・経済産業省(2024)「デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合(第7回)事務局説明資料」資料4
  5. 規制改革推進会議(2026)「『規制改革推進に関する答申』実施事項」2026年6月29日
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この記事を書いた人

▷一級建築士,建築基準適合判定資格者(建築主事試験),宅地建物取引士,建築物省エネ適合性判定員など
▷建築関連法規や都市計画法規などに関することや、都市計画・公共交通・住宅政策などが得意分野です。
▷コンサルタント依頼はこちらから(https://visasq.co.jp)

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