複数の定義が存在する床面積と延べ面積

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はじめに、意外と知られていないのですが、床面積を取り扱うことを主とする建築基準法や不動産登記法、宅建業法では”延べ床面積”という用語は存在していません。一部、固定資産税評価基準で延べ床面積という用語が使われているのみです(ただし、評価基準上では延べ床面積を明確に定義していない)。

建築基準法上の正式な定義は、”延べ面積”となります。この延べ面積の定義は、建築基準法施行令第2条第1項第四号に規定されており、延べ面積は「建築物の各階の床面積の合計」となります。このルールは、昭和25年の新法成立時から使われています。

延べ面積=建築物の各階の床面積の合計

つまり、延べ””面積という文字は使われていないんです。

しかしながら、不動産メディア情報誌では”延べ床面積”を使用するのが一般的です。

その理由は、延べ面積よりも延べ床面積の方が、その意味(建物の床面積の合計)を理解しやすいからです。従来から慣習的に使用されてきました。加えて、法律上の延べ面積という意味は、一般的には面積の合計という意味になるため、何の面積の合計なのか、床面積以外を指している可能性も考えられます。このため、非専門家以外にも分かりやすく伝えるために使用していると考えられます。

延べ床面積の方が分かりやすいと思います。

ただし、延べ床面積には注意が必要です。各法等に基づいて次のように考え方が異なります。特に、延べ面積については、建物全体の総床面積を指す延べ面積と、容積率(延べ面積(容積率算定から除く床面積)/敷地面積)を算定するための延べ面積は異なりますので注意が必要です。この他にも不動産登記法や固定資産税に基づく床面積が存在し、それぞれ考え方が異なります。

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種類法律等概要備考
①延べ面積(建築物全体)建築基準法施行令第2条第1項第四号建築物の各階の床面積の合計*床面積:建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積
②延べ面積容積率算定からEV昇降路や住宅の共用廊下・階段等を除建築基準法第52条第3・6項
同法施行令第2条第1項第四号
①の延べ面積からEV昇降路や住宅の共用廊下・階段等を除く*都市計画やまちづくりに関係する容積率算定用の床面積。特に、共同住宅では容積率算定から除くことができる床面積の割合が大きい。
③建物登記(登記簿)不動産登記規則第115条
不動産登記事務取扱手続準則第82条
各階ごとに壁その他の区画の中心線(区分建物(マンション)にあっては、壁その他の区画の内側線)で囲まれた部分の水平投影面積*天井高1.5m未満の地階や屋外階段は床面積に算入しない。
*階段室・EV室は床面積に算入する。
④固定資産税(木造家屋)固定資産評価基準
(昭和38年自治省告示第
158号)
各階ごとに壁その他区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積
*階段室又はこれに準ずるものは、各階の床面積に算入するものとし、吹抜の部分は、上階の床部分に算入しない
*ほぼ建物登記簿に同じ。ただし、マンションは、専有部分の床面積と、共用部分を各戸の専有床面積の割合であん分した床面積とを合計した面積となるため、登記事項の面積よりも大きくなる。
⑤不動産広告不動産の表示に関する公正競争規約施行規則 第5章 表示基準 第1節”延べ面積(マンションは専用面積)”を表示し、これに車庫、地下室等の面積を含むときは、その旨及びその面積を表示

以上から延べ面積と言っても、法律や基準によって考え方が異なります。

ここで最もお伝えしたい点としては、建築基準法第3面に記載される延べ面積(建築物全体)と延べ面積(容積率算定用)、これ以外の基準や法令に基づく床面積が異なるということです。例えば、戸建て住宅を建てる際、確認申請書に記載されている延べ面積(建築物全体)では、床面積に算定する部分(ひさしやバルコニーなど)があった場合には、その一部や全部を床面積に算入することとなりますが、建物登記には算入されないために、床面積が一致しません。

また、担当官の判断や自治体の取り扱いによっても床面積が異なることがあります。

この記事が業務の参考になれば幸いです。

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この記事を書いた人

▷一級建築士,建築基準適合判定資格者(建築主事試験),宅地建物取引士,建築物省エネ適合性判定員など
▷建築関連法規や都市計画法規などに関することや、都市計画・公共交通・住宅政策などが得意分野です。
▷コンサルタント依頼はこちらから(https://visasq.co.jp)

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