日立の町と5つの駅|地図と歴史で見る、町の広がり

日立の町と5つの駅。2020年国勢調査の人口集中地区と2025年末の鉄道データの地図
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「日立の中心」と聞いて、思い浮かべる場所はどこでしょうか。日立駅前かもしれないし、普段の買い物や通勤なら多賀や大甕の方が身近、という人もいそうです。北へ行けば旧十王町があります。ひとつの市なのに、いつもの「日立」は人によって違います。

この町の広がりが気になって、常磐線の5駅と市街地の地図を重ねてみました。すると、市街地は駅前だけでなく、駅と駅の間にも続いています。さらに合併の歴史、日立電鉄線の跡地、市の都市計画マスタープランを読むと、5駅の地図だけでは見落とす町のつながりも見えてきました。この記事では、その順に日立を眺めていきます。

人口と市街地は2020年の国勢調査、駅の位置は2025年末のデータです。今の人口を示す記事ではありませんが、町の形を考える手がかりにはなります。

目次

十王も、多賀も、久慈も含む日立市

地図のいちばん北に十王駅があるのを見て、「そういえば十王も日立市だった」と思う方もいるかもしれません。旧十王町が日立市に加わったのは2004年11月1日。今回の地図にも人口の数字にも、十王を含めています。合併の日付は市の案内で確認できます。

もっと南へ目を移すと、多賀や久慈も、もとは別の町でした。1939年に日立町と助川町から日立市ができ、1955年には多賀町・久慈町・日高村など2町4村、1956年には豊浦町が加わっています。市の歴史をたどると、今の市域が一度にできたわけではないことが分かります。

だから今回の「日立市全体」という数字を、日立駅前の様子そのものだと思ってしまうと少し違います。十王から久慈までを含む、広い市の数字です。

広い市域の中で、人が集まって暮らす場所

市域は南北に長く、山も海もあります。では、人がまとまって暮らす場所はどのあたりでしょう。市の統計表では、2020年の市人口17万4,508人のうち14万5,634人が「人口集中地区」に暮らしています。割合にすると83.5%です。

人口集中地区は、人が集まって暮らす市街地をつかむための区分。資料ではDIDとも呼ばれます。工場や学校を含む場合もあるので、家だけが建っている場所という意味ではありません。

表1 日立市の人口と人口集中地区。出典:日立市「4-2 人口集中地区人口の推移」(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)

2020年の範囲人口面積市全体に占める割合
日立市全体(旧十王町を含む)174,508人225.86km²人口・面積とも100%
人口集中地区(DID)145,634人41.27km²人口83.5%/面積18.3%

市の面積の18.3%に、人口の83.5%。数字にすると、暮らしの場が市域の一部にぎゅっと集まっているのが分かります。その一部がどこにあるのか。次の地図がいちばん分かりやすいと思います。

南北に並ぶ5つの駅と、その周りの町

まず、駅を北から順に追ってみてください。十王、小木津、日立、常陸多賀、大甕。薄い緑が2020年の市街地、濃い緑がそのうち駅から直線1km以内の部分です。5駅の位置はいずれも緑の区域に入っています。

日立市の人口集中地区と常磐線5駅の位置。各駅の直線1km円と重なるDIDを濃い緑で表示
人口集中地区駅の直線1km以内のDID茶色の点線:直線1km線:常磐線/丸:駅
図1 人口集中地区は2020年、鉄道・駅は2025年末。出典:国土数値情報A16・N02・N03を加工し、UrbanPoleShiftが集計・作図。スマートフォンでは市東部を拡大表示。画像を押すと市全域の地図が開きます。市外の地形は省略。旧町村の境界や旧日立電鉄線・BRTは描いていません。地図最北の十王駅周辺は、旧十王町に当たります。

駅の周りだけでなく、駅と駅の間にも緑が続きます。ひとつの大きな「中心」があるというより、いくつかの町が南北につながっているように見えます。

常陸多賀の周りは、とくに緑が目立ちます。駅から直線1kmの円のほぼ全体がDIDに重なりました。工場なども含む区域ですが、「日立」と聞いて日立駅前だけを想像していたら、少し違う地図に見えるかもしれません。

駅のすぐ近くと、その少し先の町

地図の緑は駅からどのくらい近いのでしょう。5駅から500m、1km、1.5kmの円を描き、市街地と重なる広さを比べてみました。

駅からの距離と市街地の重なり

駅から直線500m8.0%
駅から直線1km27.5%
駅から直線1.5km53.7%

横幅全体=日立市の2020年DID図形面積。人口割合ではありません。出典:国土数値情報A16・N02を用いた独自集計。

駅から直線1kmの円に入るのは、市街地面積の27.5%。1.5kmまで広げると53.7%です。半径が500m広がるだけで、見える町の広さはかなり変わります。

ただし、これは道順を無視した直線距離です。坂道や踏切、駅の入口までの回り道もあるので、「徒歩何分」とは別の話。また、27.5%は土地の面積の割合で、駅の近くに住む人の割合ではありません。

では、円の外側にある町はどうでしょう。今の常磐線5駅だけで考える前に、南部を走っていた別の鉄道の話もしたくなります。

日立電鉄の走っていた町と、ひたちBRT

南部には、2005年まで日立電鉄線が走っていました。常陸太田市の常北太田駅から大甕を通って鮎川駅まで、18.1kmに14駅。4月1日に廃止されました。

久慈浜、水木、河原子。今もなじみのある地名が、かつては駅名でした。大甕で常磐線へ乗り換える通勤・通学客もいたそうです。大甕から鮎川まで線路が延びたのは1947年。日立市視聴覚センターの資料(PDF)を読むと、今の5駅だけを見ていては分からない移動の歴史が見えてきます。

この路線の跡地の一部は、バス専用道路として使われています。ひたちBRTの運行が始まったのは2013年3月。BRTは専用道路などを使うバスの仕組みです。2019年4月には大甕駅西口を経由する本格運行が始まり、日立おさかなセンターから常陸多賀駅までの大部分が専用道路でつながりました。経緯は市の紹介ページで確認できます。

さっきの「駅から1km以内は市街地の27.5%」は、常磐線の5駅だけで数えた数字です。円の外側には、BRTや路線バスの通る町もあります。鉄道があった場所と今のバスの道を合わせて考えると、地図の見え方が変わります。

6つの地区から見る、日立の暮らし

5つの駅を追ってきましたが、市は町をどう分けて考えているのでしょう。日立市都市計画マスタープランを開くと、十王・豊浦・日高・本庁・多賀・南部の6地区が出てきます。駅の数よりひとつ多いですね。

これは2020年3月の計画です。道路、住まい、買い物など、これからの町をどう整えていくかを地区ごとに書いています。暮らしに近い項目だけ、短く並べました。

表2 市の地域別構想から、暮らしに関わる方針を抜粋・要約。事業の完成状況を示すものではありません。出典:日立市都市計画マスタープラン(2020年3月)第4章(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)

計画の地区暮らしに関わる主な方針
十王十王駅周辺の生活機能の充実と、住宅団地・集落の住環境の維持。
豊浦県道十王停車場川尻線沿いと十王駅周辺の連携。十王・小木津両駅への移動手段の確保。
日高小木津駅周辺と鉄道の東西の生活機能の充実。小木津山自然公園をいかす暮らし。
本庁日立駅周辺の使われていない土地などの活用と、公園・緑地をいかす生活環境づくり。
多賀常陸多賀駅周辺やBRT沿線の生活機能の充実。諏訪・油縄子などの生活拠点づくり。
南部大甕駅・BRTへの行き来の改善と、おさかなセンター周辺の魅力向上。

表を見て、私は豊浦で少し立ち止まりました。豊浦地区の方針には、十王駅の周りとの連携に加え、十王駅と小木津駅へ行く手段を確保する話が出てきます。駅の名前から「十王駅は十王地区の駅」と決めてしまうと、豊浦からの行き来が抜け落ちます。駅は、隣の地区に暮らす人にとっても生活の入口です。

もうひとつ気になるのは多賀です。常陸多賀駅の周りは地図で濃い緑が広がっていました。それでも、諏訪や油縄子から普段の買い物や通院にどう行くかは、駅の円だけでは分かりません。計画にも、駅前に加えて身近な生活拠点をつくる方針があります。日立の町は、駅だけを点で見るより、その間の道まで思い浮かべると面白いです。

計画に書かれた方針が、すべて実現したという意味ではありません。6地区は主に都市計画区域を支所の境界で分けたもので、旧町村の範囲とも、今回の緑のDIDとも異なります。区域図(PDFの2ページ目)を見ると、区切り方が分かります。

町ごとに異なる便利さと、これからの日立

ここまで地図、合併、昔の鉄道、市の計画を行ったり来たりしました。日立駅前、多賀、十王、久慈。どれも日立市ですが、成り立ちも交通の使い方も同じではありません。

数字には気になる面もあります。人口集中地区の人口は、2015年から2020年に8,956人、約5.8%減りました。一方で面積は40.71km²から41.27km²へ。区域は調査のたびに引き直されるので、同じ場所だけを追った比較ではありません。それでも、広がってきた町をどう使い続けるかは、日立を考えるうえで外せません。

次に日立の町を眺めるなら、駅からの距離に加えて、家から買い物や通院へ行く道、近くのバス停、雨の日の移動にも目を向けたいです。十王から小木津へ向かう道、多賀の駅前と諏訪・油縄子、久慈と大甕を結ぶBRT。それぞれの町で確かめたい場所が、今回の地図から増えました。

駅の利用状況は、以前の常磐線・水戸〜磯原間の駅利用者数の記事でも紹介しています。町の広がりと見比べると、また別の疑問が出てきそうです。

数字と地域区分のメモ

数字の出どころや区域の違いが気になる方へ。駅からの距離ごとの面積と、計算方法を下に置いておきます。

表3 5駅の円とDIDの重なり。分母はDIDの図形面積約41.15km²(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)

駅からの直線距離重なるDID面積DID全体に占める割合
500m3.28km²8.0%
1km11.30km²27.5%
1.5km22.11km²53.7%

地域別構想の紹介には2020年3月の計画を用いています。計画内の地区人口は2015年国勢調査に基づくため、今回の2020年DIDの数値とは合算・比較していません。6地区の範囲は都市計画区域を基本とし、多賀では区域外の一部の山側住宅団地も土地利用構想で一体的に扱っています。旧町村界との一致も前提としていません。

データの年・区域・計算方法
  • 人口集中地区(DID):原則として人口密度4,000人/km²以上の区域が隣接し、その人口の合計が5,000人以上になるまとまり。一定の条件で工場や学校、公園なども含みます。
  • 対象範囲:旧十王町を含む日立市全体。都市マスの地域区分や統計小地域への組み替えは行っていません。2015年と2020年はどちらも十王町編入後ですが、DID境界は各調査時点のものです。
  • 人口・統計上の面積:日立市の統計表を使用。2015年と2020年の値を比較し、採用したセルに秘匿記号や欠測はありません。
  • 駅の位置:2025年12月31日時点の駅データは線形です。その重心を代表点にしました。改札口や駅出入口の座標ではありません。
  • 距離と面積:JGD2011・平面直角座標系第IX系(EPSG:6677)で500m・1km・1.5kmの円を作成。各距離の円を合成し、2020年DIDとの交差面積を算出しました。
  • 面積の数値差:市の統計表は41.27km²、国土数値情報の地区別面積属性の合計は41.26km²、今回の図形計測は約41.15km²です。資料・計測方法による差を混ぜず、人口・市域との比較には市の表、駅の円との重なりには図形計測同士の比率を使いました。属性値の差の原因は特定していません。
  • 含めていない情報:道路に沿った距離、標高差、バスの路線や便数、列車のダイヤ、施設の配置、土地利用の細分、駅勢圏人口は評価していません。市街地の形から交通の利用や人口変化の原因を断定する分析でもありません。日立電鉄・BRTは歴史の紹介で、今回の駅周辺面積には加えていません。

参考にした資料

日立市都市計画マスタープラン 第4章「地域別構想」(PDF)。2020年3月の計画。冊子96ページの区域設定、101・107・113・119・125〜126・131ページの各地区の方針を参照。発行年月は概要版の奥付で確認。公式掲載ページ更新:2024年1月24日。事業の現在の進捗や、地区別人口の再集計は今回の対象外です。

  1. 日立市「2025日立市の統計:4 国勢調査」/4-2 人口集中地区人口の推移(Excel)。掲載ページ更新:2025年11月7日。本文で使用した統計の調査年は2015年・2020年。CC BY 4.0。
  2. 国土交通省「国土数値情報 人口集中地区データ(2020年)」。2020年国勢調査に基づく区域。データ更新:2024年6月。
  3. 国土交通省「国土数値情報 鉄道データ(2025年)」。基準日:2025年12月31日。データ更新:2026年4月。
  4. 国土交通省「国土数値情報 行政区域データ(2020年)」。基準日:2020年1月1日。日立市域の表示と駅の抽出に使用。
  5. 総務省統計局「人口集中地区に関するQ&A」。設定基準・境界の変化・都市的施設の扱いを参照。
  6. 日立市「日立市の歴史」(更新:2024年2月28日)、十王町との合併に関する市のFAQ(更新:2024年1月24日)。
  7. 日立市視聴覚センター通信 No.19(PDF)。2024年2月号、紙面の発行日表記は2024年1月20日。日立電鉄の路線・利用・廃止日を参照。
  8. 日立市「ひたちBRTが本格運行!(平成31年4月から)」(更新:2024年5月24日)。2013年・2019年の運行開始の経緯を参照。掲載ダイヤを現在の時刻表として転記していません。

資料確認・集計日:2026年9月24日。地図・集計:UrbanPoleShift。

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この記事を書いた人

▷一級建築士,建築基準適合判定資格者(建築主事試験),宅地建物取引士,建築物省エネ適合性判定員など
▷建築関連法規や都市計画法規などに関することや、都市計画・公共交通・住宅政策などが得意分野です。
▷コンサルタント依頼はこちらから(https://visasq.co.jp)

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