TECHNICAL APPENDIX 01
駅前―住宅地境界と一般スーパーまでの距離
要旨
東京23区のまいばすけっと846店を対象に、最寄駅距離、駅別乗降客数、周辺建物用途、居住人口、一般スーパー候補との位置関係を分析した。比較対象には、OpenStreetMapから取得し空間重複を除いたセブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン計4,714地点を用いた。
まいばすけっとは大手コンビニ3社より駅直近への集中が弱い一方、500m以内の割合はほぼ同じだった。店舗周辺300mでは住宅用途比率が高く、業務・商業用途比率が低い。最寄駅150m圏との用途差から独自に作成した「駅前―住宅地境界スコア」も、まいばすけっと16.6、大手3社13.1となり、駅の乗降規模が大きい区分ほど差が開いた。
一方、まいばすけっとの87.4%は別の一般スーパー候補から500m以内にあり、居住人口加重の84.1%を下回らなかった。一般スーパー不在地域だけを埋める立地というより、食品需要が成立する住宅地で、帰宅時の少量購入や買い足しを分担する可能性が示された。
直線半径によるカバー率だけでなく、東京23区全域について歩行可能道路に沿った到達圏を再計算した。道路距離300m圏では、まいばすけっとの居住人口カバー率26.8%、従業者カバー率26.0%となり、絶対値は円商圏より低下したものの、居住人口側へ寄る方向は残った。ただし差は0.8ポイントにとどまる。「夜の住宅地に特化する」とまでは言えず、コンビニより住宅地に近い場所を選ぶ傾向として読むべき結果である。
台東区30店を詳しく見ると、浅草・蔵前では駅前から住宅地へ切り替わる場所、入谷・三ノ輪・根岸では住宅地の中、上野・御徒町では業務・商業・住宅が混在する場所に店舗があった。東京23区全体の傾向を読む際も、すべての店舗を一つの型で説明するより、地域によって異なる出店パターンを分けて考える必要がある。
大手3社は13.1
大手3社は62.4%
居住人口加重は84.1%
大手コンビニ3社との主要比較
| 比較指標 | まいばすけっと | 大手3社 |
|---|---|---|
| 最寄駅300m以内 | 54.1% | 59.3% |
| 最寄駅500m以内 | 77.2% | 76.9% |
| 店舗300m圏の住宅用途 | 68.8% | 62.4% |
| 店舗300m圏の業務・商業用途 | 18.2% | 22.6% |
| 駅前―住宅地境界スコア | 16.6 | 13.1 |
| 一般スーパー候補500m以内 | 87.4% | 88.7% |
両業態は、駅徒歩圏にあり、一般スーパーも近いという条件を共有する。差が現れるのは、その地域の中で選ぶ場所である。まいばすけっとの周囲は住宅用途が多く、業務・商業用途が少ない。駅前から住宅地側への用途変化も大きく、この組合せがコンビニ3社との最も明瞭な違いだった。
本資料でいう「立地戦略」は、企業内部の出店基準を確認したものではない。846店の位置から、駅と既存の食品需要に近く、住宅地側で短時間・少量の買い物に使いやすい場所を選んでいると推測したものである。
分析で確かめること
- まいばすけっとは、大手コンビニ3社より居住人口側へ寄った店舗網を持つか。
- 駅徒歩圏に入りながら、駅前商業地から住宅地へ切り替わる位置を選んでいるか。
- 一般スーパーの空白を埋めているのか、それとも既存スーパーと近接しながら異なる購買需要を受け持つのか。
本資料は、店舗立地と都市構造の空間的な関係を記述するものである。出店判断、売上、賃料、来店者行動を直接説明する因果分析ではない。
比較方法
分析単位は、チェーン全体の店舗網、個別店舗、人口・従業者メッシュの三層である。チェーン全体では、重複する商圏を一度だけ数えて店舗網の到達範囲を確認する。個別店舗では、最寄駅距離、周辺建物用途、駅前コアとの差、一般スーパー候補までの距離を比較する。人口・従業者メッシュは、店舗数の多寡だけでは読めない都市側の分布を基準化するために用いる。
比較対象を大手コンビニ3社としたのは、小面積の店舗を高密度に配置し、駅前・業務地・住宅地のいずれにも立地する点で、まいばすけっとと空間的な比較が可能だからである。ただし、商品構成、営業時間、物流、フランチャイズ方式が異なるため、両業態を同質な店舗として扱うものではない。比較によって確認するのは優劣ではなく、都市空間上の重心の違いである。
使用データ
| 対象 | 資料 | 年次・取得日 | 用途 |
|---|---|---|---|
| まいばすけっと | 公式店舗検索 | 2026年8月27日 | 店舗名、住所、緯度経度 |
| 大手コンビニ3社 | OpenStreetMap | 2026年8月27日 | 比較用店舗地点。22m以内の同一チェーン重複候補を除外 |
| 鉄道網 | 国土数値情報「鉄道」 | 2024年度版 | 鉄道路線の形状、路線名、運営会社 |
| 鉄道駅 | 国土数値情報「駅別乗降客数」 | 2024年度版 | 駅形状、駅グループ、乗降客数 |
| 建物 | 東京都「令和3年度建物現況」 | 2021年度 | 用途、建築面積、地上階数、構造 |
| 居住人口 | 2020年国勢調査250mメッシュ | 2020年 | 人口カバー率、人口加重基準 |
| 従業者 | 2021年経済センサス500mメッシュ | 2021年 | 昼間需要の代理指標 |
| 一般スーパー候補 | OpenStreetMap shop=supermarket | 2026年8月28日 | まいばすけっとと既知の小型業態を除く1,326地点 |
OpenStreetMapの収録地点は公式店舗数と一致しない可能性がある。一般スーパーは売場面積を統一的に取得できないため、本資料では「大型スーパー」と断定せず、一般スーパー候補と表記する。
異なる年次の資料を重ねるため、数値は2026年8月時点の都市状態を厳密に再現するものではない。店舗は取得日のスナップショット、人口と建物用途は直近で一貫して利用できる公的統計として扱った。データ年次の差が結論へ与える影響を抑えるため、絶対値よりもチェーン間・距離帯間の比較を中心に解釈する。
居住人口・従業者カバー率
各チェーンの店舗から300m、500m、800mの円を結合し、円内に入る国勢調査250mメッシュの居住人口と、経済センサス500mメッシュの従業者数を集計した。同一チェーンの店舗圏が重なる部分は一度だけ数えた。従業者数は昼間人口ではなく、昼間の業務需要を見るための代理指標である。
このカバー率は、一人の利用者が実際に店舗を選んだ割合でも、個店の商圏人口でもない。メッシュ中心点が結合商圏へ入るかを判定した、店舗網全体の空間的到達度である。店舗数が多く、店舗間隔が短いチェーンほどカバー率は高くなりやすいため、総カバー率の大小だけで業態の効率や需要適合性を評価しない。
300m、500m、800mは、結果が一つの距離設定へ依存していないかを確認するための感度幅として置いた。300mでは店舗直近の差、500mでは日常的な徒歩圏の広がり、800mでは店舗網の面的な接続を見る。距離が広がるほど店舗圏の重複が増え、チェーン間の差が縮むため、各距離は別々の意味を持つ。
| 比較対象 | 店舗数 | 300m 居住 | 300m 従業者 | 500m 居住 | 500m 従業者 | 800m 居住 | 800m 従業者 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| まいばすけっと | 846 | 39.6% | 39.1% | 69.2% | 67.5% | 89.7% | 87.3% |
| セブン-イレブン | 1,996 | 66.0% | 80.0% | 93.4% | 95.5% | 99.5% | 98.9% |
| ファミリーマート | 1,592 | 49.3% | 72.4% | 81.2% | 91.3% | 97.4% | 98.3% |
| ローソン | 1,126 | 40.4% | 63.3% | 71.7% | 87.1% | 93.5% | 97.0% |
| 大手3社合算 | 4,714 | 84.6% | 91.5% | 98.5% | 98.7% | 99.9% | 99.8% |
個別4チェーンのうち、500m圏で居住人口カバー率が従業者カバー率を上回ったのはまいばすけっとだけだった。ただし差は1.7ポイントであり、「夜間人口に特化する」と断定できるほど大きくない。比較的住宅地側へ寄るという記述的な傾向として扱う。
図A-5は、個々の店舗が実際に獲得する人口や商圏規模を表さない。店舗圏の重複度が高いチェーンほど値が小さくなるため、店舗生産性や売上の比較には使えない。
道路に沿って300m歩ける範囲(23区)
円商圏は河川、鉄道、幹線道路などの横断条件を無視するため、OpenStreetMapの歩行可能道路を用いた到達圏でも試算した。板橋区・足立区・葛飾区を含む東京23区すべてを、同じ店舗・人口メッシュ・従業者メッシュと同一の計算条件で集計した。
店舗点と各メッシュ中心点を最寄りの歩行可能道路ノードへ接続し、道路グラフ上の最短距離が閾値以内となるかを判定した。円商圏より厳しい条件となるため、カバー率そのものは低下する。ここで確認したいのは絶対値の一致ではなく、商圏の描き方を変えても居住人口側・従業者側という相対的な方向が維持されるかである。
| 距離 | 道路距離 居住 | 道路距離 従業者 | 円商圏 居住 | 円商圏 従業者 |
|---|---|---|---|---|
| 300m | 26.8% | 26.0% | 40.3% | 40.9% |
| 500m | 54.4% | 53.4% | 70.1% | 67.1% |
| 800m | 80.9% | 76.4% | 89.9% | 89.0% |
23区合計では、道路距離300m圏の居住人口カバー率が従業者を0.77ポイント上回った。円商圏よりカバー率は大きく下がるが、まいばすけっとが相対的に居住人口側へ寄るという方向は残った。ただし差は小さく、夜間人口への強い特化を示す結果ではない。
追加した足立区・板橋区・葛飾区
| 区 | 店舗数 | 300m 居住 | 300m 従業者 | 500m 居住 | 800m 居住 |
|---|---|---|---|---|---|
| 板橋区 | 77 | 26.0% | 27.0% | 56.1% | 87.6% |
| 足立区 | 49 | 10.5% | 11.8% | 23.1% | 49.7% |
| 葛飾区 | 57 | 24.3% | 20.6% | 55.5% | 84.6% |
足立区は道路距離800mまで広げても居住人口カバー率49.7%で、板橋区87.6%、葛飾区84.6%との差が大きい。区別の店舗網の厚みを考えるうえでも、3区を加えたことには意味がある。
この差は、人口密度だけで決まるとは限らない。店舗の絶対数、既存スーパーとの競合、鉄道駅の密度、街区の大きさ、道路接続、出店可能な小規模物件の供給などが複合している可能性がある。道路到達圏は「歩ける人口」へ一歩近づくが、店舗網が薄い理由を直接特定するものではない。
台東区30店の比較
業務・観光集積と住宅地が短い距離で切り替わる台東区について、道路ネットワーク到達圏、チェーン比較、人口属性、建物用途を重ねた。対象人口・従業者は台東区内に限定し、区境による過小評価を避けるため、到達圏の起点には台東区境から800m以内の店舗を含めた。まいばすけっとの区内店舗は30店、道路計算の起点は66店である。
台東区を選んだ理由は、上野・御徒町の大規模駅と業務商業集積、浅草・蔵前の観光・業務・住宅の近接、入谷・三ノ輪・根岸の面的な住宅地が一つの区内に含まれるためである。区平均だけでは相殺される都市構造の違いを、鉄道網と駅、道路到達圏、店舗周辺用途を同時に重ねて確認できる。
チェーン別の道路ネットワーク到達圏
| チェーン | 起点店舗 | 300m 居住 | 300m 従業者 | 500m 居住 | 500m 従業者 | 800m 居住 | 800m 従業者 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| まいばすけっと | 66 | 48.87% | 52.23% | 83.06% | 86.04% | 95.37% | 95.73% |
| セブン‐イレブン | 163 | 67.84% | 89.58% | 96.66% | 95.71% | 99.35% | 98.00% |
| ファミリーマート | 127 | 47.51% | 71.10% | 75.73% | 88.94% | 93.20% | 93.53% |
| ローソン | 100 | 51.22% | 69.49% | 82.38% | 86.30% | 97.03% | 96.94% |
| 大手3社合計 | 390 | 86.57% | 92.66% | 99.16% | 96.99% | 99.37% | 98.00% |
まいばすけっとの300m圏は居住人口48.87%、従業者52.23%で、従業者が3.36ポイント高い。一方、大手3社合計は6.09ポイント、個別チェーンでは18.27~23.59ポイント従業者側が高い。台東区はまいばすけっとの居住人口優位を示す事例ではないが、コンビニより相対的に住宅地側へ寄ることを示す。
観光都市である台東区でも従業者側への偏りがコンビニより小さいことは、まいばすけっとが業務・観光需要を排除して住宅需要だけを選ぶのではなく、両方が重なる場所で住宅側へやや重心を置く可能性を示す。なお、従業者統計に観光客は含まれないため、浅草・上野の実際の昼間需要は本分析値より大きい可能性がある。
上野・浅草・入谷で異なる周辺環境
| 地域 | 店舗数 | 駅距離中央値 | 住宅用途 | 業務・商業 | 境界スコア | スーパー距離 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 上野・御徒町 | 5 | 181m | 52.78% | 53.39% | 7.44 | 138m |
| 浅草・蔵前 | 10 | 150m | 62.28% | 42.25% | 20.34 | 253m |
| 入谷・三ノ輪・根岸 | 15 | 480m | 77.32% | 26.72% | 0.42 | 198m |
浅草・蔵前は駅距離が短く、境界スコアが最も高い。駅前から住宅地へ切り替わる位置を選ぶ「境界型」と解釈できる。入谷・三ノ輪・根岸は住宅用途比が高い一方、境界スコアはほぼゼロで、駅前からの用途変化ではなく住宅地内部へ直接立地する「住宅地内部型」と解釈できる。上野・御徒町は住宅と業務・商業が併存する都心混合型である。
境界スコアが低いことは、住宅地性が弱いことを意味しない。入谷・三ノ輪・根岸では店舗周辺の住宅用途比率が77.32%と三地域で最も高いが、最寄駅周辺も比較的住宅地的であるため、駅前からの用途差としては小さくなる。境界スコアと住宅用途比率は、前者が駅前からの変化、後者が店舗周辺の絶対的な土地利用構成を表す別の指標である。
単身世帯・高齢者・外国人の割合
| 範囲 | 単身世帯 | 65歳以上 | 外国人 |
|---|---|---|---|
| 台東区全体 | 59.30% | 22.21% | 6.77% |
| まいばすけっと道路300m圏 | 59.83% | 22.14% | 7.21% |
| 同圏外 | 58.80% | 22.27% | 6.35% |
圏内外の人口属性差は小さく、特定属性への出店を示す結果ではない。また経済センサスの従業者数は観光客・買物客などの流動人口を含まない。上野・浅草の需要を論じるには、別途、人流統計や来訪者データが必要である。店舗データのうちコンビニはOpenStreetMapに依存し、網羅性・更新時点の差も残る。
駅までの距離と周辺建物の用途
駅距離
店舗点から国土数値情報の駅形状までの直線距離を算出した。同名駅が300m以内に複数ある場合は、国土数値情報の駅グループコードにより統合した。乗降客数はグループ内の有効値を合算しており、事業者間乗換を含む場合は実人数より大きくなる。
| 比較対象 | 距離中央値 | 300m以内 | 500m以内 | 800m以内 |
|---|---|---|---|---|
| まいばすけっと | 275m | 54.1% | 77.2% | 91.6% |
| 大手コンビニ3社 | 234m | 59.3% | 76.9% | 89.9% |
| 居住人口加重 | 437m | 30.1% | 57.7% | 83.0% |
300m以内では大手コンビニ3社が5.2ポイント高い一方、500m以内では両者がほぼ同率となる。この差は、まいばすけっとが非駅型であることを示すのではなく、駅直近への集中が弱く、駅徒歩圏の外縁まで含めて分布することを示す。居住人口加重の最寄駅距離中央値437mより店舗中央値275mが短いことから、住宅地内部型を含めても、店舗網全体は居住地一般より駅へ近い。
建物用途
東京都「令和3年度建物現況」1,808,305棟について、建物代表点が店舗から半径300mまたは500m以内に入るかで集計した。簡易延べ面積は、建築面積×地上階数×東京都データの延べ面積換算係数とした。地下階を含まず、実測延べ面積ではない。
| 店舗300m圏・店舗中央値 | まいばすけっと | 大手3社 | 差 |
|---|---|---|---|
| 集合住宅の延べ面積比 | 46.3% | 40.7% | +5.7pt |
| 独立住宅の延べ面積比 | 18.8% | 12.5% | +6.3pt |
| 住宅用途合計 | 68.8% | 62.4% | +6.5pt |
| 業務・商業用途 | 18.2% | 22.6% | -4.4pt |
| 簡易延べ面積密度 | 1.34 | 1.48 | -0.14 |
駅前―住宅地境界スコア
最寄駅の代表点から150m圏を駅前コア、店舗から300m圏を店舗周辺として、次式を用いた。
境界スコア ={(店舗周辺の住宅比率-駅前コアの住宅比率)+(駅前コアの業務・商業比率-店舗周辺の業務・商業比率)}÷2
住宅比率には独立住宅と集合住宅の簡易延べ面積比を用いた。正の値が大きいほど、最寄駅周辺と比べて店舗周辺が住宅用途へ切り替わっている。一般化された指標ではなく、本研究で比較の透明性を確保するために置いた記述指標である。
二つの用途差を平均するのは、住宅比率の上昇だけでなく、業務・商業比率の低下も同時に生じる場所を抽出するためである。どちらか一方だけでは、公共施設や工業用途など第三の用途変化を「住宅地への移行」と誤読する可能性がある。店舗ごとの外れ値の影響を抑えるため、チェーン比較には平均値ではなく中央値を用いた。
| 比較対象 | 店舗数 | 住宅比の上昇 | 業務商業比の低下 | 境界スコア |
|---|---|---|---|---|
| まいばすけっと | 846 | 17.2pt | 15.9pt | 16.6 |
| 大手コンビニ3社 | 4,714 | 12.7pt | 13.8pt | 13.1 |
乗降客数が近い駅どうしの比較
| 最寄駅の1日乗降規模 | まいばすけっと | 大手3社 | 差 |
|---|---|---|---|
| 2.5万人以下 | 9.3 | 7.7 | +1.5 |
| 2.5万~10万人 | 16.5 | 13.9 | +2.6 |
| 10万~30万人 | 34.9 | 20.7 | +14.3 |
| 30万人超 | 33.3 | 15.4 | +17.9 |
大規模駅では、駅前コアの業務・商業集積が強い。まいばすけっとと大手コンビニ3社の差が拡大したことは、同じ駅勢圏でも両業態が異なる側面を選ぶ可能性を示す。ただし、駅代表点は改札・出入口ではなく、駅の東西や線路横断を区別していない。
この集計は乗降規模を完全に統制した回帰分析ではなく、カテゴリ別中央値を比較した層別集計である。同じ乗降規模帯の中にも、ターミナル駅、地下鉄単独駅、乗換駅などの差が残る。それでも大規模駅帯で差が拡大したことは、駅規模という交絡要因だけでは説明しきれない立地差を検討する根拠になる。
一般スーパー候補までの距離
OpenStreetMapのshop=supermarketを取得し、23区内へ空間抽出した。まいばすけっと、マルエツプチ、miniピアゴ、リコス、アコレなど既知の小型業態を除き、18m以内の重複候補を統合した結果、1,326地点となった。
| 指標 | まいばすけっと | 大手3社 | 居住人口加重 |
|---|---|---|---|
| 最寄り候補までの距離中央値 | 260m | 237m | 299m |
| 300m以内 | 58.9% | 62.9% | 50.2% |
| 500m以内 | 87.4% | 88.7% | 84.1% |
| 800m圏外 | 0.7% | 1.7% | 1.5% |
大手コンビニ3社も、一般スーパー候補500m以内が88.7%に達し、まいばすけっと87.4%との差は1.3ポイントにすぎない。したがって、一般スーパーへの近接はまいばすけっと固有の特徴ではなく、両業態が需要の厚い地域を選ぶという共通条件である。固有性は、同じ条件の中でまいばすけっとが住宅用途の濃い側へ寄る点にある。
まいばすけっとが一般スーパー候補のない場所だけに出店するなら、500m以内の割合は居住人口基準より低くなるはずである。しかし実際には3.3ポイント高かった。食品を買う人が多い住宅地に出店し、まとめ買いとは異なる買い物頻度、時間、購入量に対応している可能性がある。
居住人口加重基準を置いたのは、東京の住宅地そのものが一般スーパーに近いという基礎条件を差し引いて考えるためである。店舗の87.4%が500m以内にあるという数字だけでは、東京に店が多いことを示しているにすぎない可能性がある。それでも居住人口基準の84.1%を上回ったため、「一般スーパーのない場所を選ぶ」という見方より、「食品需要が確かめられている地域へ出店する」という見方のほうが、今回の結果を説明しやすい。
分析結果の読み方
駅徒歩圏の中でも住宅地に近い場所
駅距離、建物用途、境界スコアの三つは、同じ出店傾向を別の角度から確かめたものである。まいばすけっとは居住人口一般より駅に近いが、コンビニほど300m以内へ集中しない。同じ駅距離帯でも、周囲には住宅用途が多い。さらに大規模駅ほど、駅前から住宅地側への用途変化が大きかった。駅から離れた店ではなく、駅徒歩圏の中で住宅地に近い場所を選ぶ店と読むのが妥当である。
駅前の少し先にある店と住宅地の中にある店
台東区で確認した二つの型は、相互に排他的な戦略ではない。境界型は駅利用者の帰宅動線と住宅需要が交差する場所を押さえ、住宅地内部型は駅から離れた日常生活圏へ食品アクセスを提供する。両者が組み合わさることで、駅から住宅地へ連続する店舗網が形成される可能性がある。今後は23区全体で店舗類型を機械的に分類し、区別構成比や開閉店履歴と照合する必要がある。
スーパーの近くでも成り立つ理由
一般スーパー候補への近接は、競争の強さだけでなく食品需要の厚さを示す。売場面積の大きい店舗が担うまとめ買いと、小型店が担う短時間・少量購買は、同じ居住者の中でも利用場面が異なる。空間的に近いことから直ちに代替関係を結論づけず、商品構成、営業時間、購買頻度、客単価を含む需要分担として検証すべきである。
23区内でも大きい店舗数の差
徒歩圏の食品アクセスは、駅、道路、住宅密度という都市構造の上に、民間企業の出店判断が重なって形成される。文京区・墨田区・豊島区と、足立区・練馬区・杉並区のカバー率差は、同じ23区でも小型食品店を利用できる環境が均等でないことを示す。ただし、この差を買い物困難へ直結させるには、他チェーン、商店街、生協、宅配、自動車利用、高齢者の歩行条件まで含めた地域別評価が必要である。
今後確かめたいこと
出店理由をさらに確かめるには、店舗の開閉店履歴、賃料・地価、建物1階用途、駅出入口、歩行者通行量、時間帯別人流、POSまたは購買行動調査が必要である。とくに、開店前後の周辺店舗の変化と、境界スコアが異なる店舗群の営業期間を比べられれば、どの立地が長く続くのかを検証できる。今回は、そのための比較方法と基準値を示すところまでとした。
この分析では分からないこと
- 店舗商圏は互いに重複し、空間的に独立した標本ではない。通常の独立標本を前提とする有意差検定は行っていない。
- コンビニ、一般スーパー候補はOpenStreetMapの収録率と分類精度に依存する。
- スーパーの売場面積が不明なため、大型店と中小店を完全には区分できない。
- 主分析の距離は直線距離であり、駅出入口、踏切、河川、坂道を反映しない。道路ネットワーク分析も、店舗・メッシュ中心から最寄り道路ノードまでの接続距離、横断待ち、建物入口を含まない。
- 東京都の建物用途は2021年度、人口は2020年、店舗は2026年で、基準時点が異なる。
- 簡易延べ面積は推計値であり、実測延べ面積や売場面積ではない。
- 店舗の開閉店履歴、賃料、売上、来店者、競合店売上を扱っていないため、立地の採算性や因果関係は判断できない。
以上の限界は、分析を無効にするものではなく、結果が示す範囲を定める条件である。本資料では、複数の距離設定、道路ネットワーク、居住人口加重基準、駅規模別集計、台東区ケーススタディを組み合わせ、一つの指標だけに依存しない形で解釈した。
データの利用条件
国土数値情報はCC BY 4.0、OpenStreetMapはODbLに従う。東京都「令和3年度建物現況」の同梱注意事項には、資料作成等で引用する場合の問い合わせに関する記載があるため、建物形状や派生図の公開方法は東京都都市整備局へ確認したうえで決定する。本資料の建物用途図表は、個別建物を表示せず店舗単位の集計値に加工している。
分析用スクリプト、取得元データ、派生CSV、検定記録はUrbanPoleShiftの制作フォルダに保存した。個別店舗の数値は取得時点のスナップショットであり、再分析時には店舗開閉や基礎資料の更新を確認する。
参考資料
- まいばすけっと株式会社「企業情報」
- 国土交通省「国土数値情報 鉄道」2024年度版
- 国土交通省「国土数値情報 駅別乗降客数」2024年度版
- 東京都都市整備局「東京の土地利用 令和3年東京都区部」
- 総務省統計局「令和2年国勢調査 地域メッシュ統計」
- 総務省・経済産業省「令和3年経済センサス-活動調査 地域メッシュ統計」
- OpenStreetMap copyright and license

