まいばすけっとは、なぜ駅前の少し先にあるのか

まいばすけっとはなぜ駅前の少し先にあるのかという題名と東京23区の4チェーン店舗分布を配置した16対9のアイキャッチ画像
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東京23区・小売立地のGIS分析

東京23区の846店を大手コンビニ3社と比べると、駅前そのものではなく、駅前商業地から住宅地へ切り替わる場所を丁寧に押さえている姿が見えてきました。

先日、23区内を歩いていて、ふと気になったことがありました。まいばすけっとは、コンビニよりも住宅地の人口を広く覆うように配置されているのではないか。昼間人口をコンビニが支え、夜間人口をまいばすけっとが支える。そんな役割分担が、地図に表れるのではないかと思ったのです。

そこで、まいばすけっとの公式店舗検索から東京23区の店舗を取得し、大手コンビニ3社、国勢調査人口、駅別乗降客数、東京都の建物用途を重ねました。最初の仮説は、そのままの形では成立しませんでした。ただし、調べていくうちに、店舗数や人口カバー率だけでは見えなかった、もう少し興味深い立地の特徴が浮かんできました。

この問いは、一つのチェーンの出店傾向を知るだけの話ではありません。徒歩圏で食品を買える場所がどのようにつくられ、駅と住宅地の間で日常の買い物がどう支えられているかを考える手掛かりになります。東京のように鉄道と徒歩で暮らしが組み立てられている都市では、小さな店舗の位置そのものが、生活動線の形を映しているからです。

コンビニ3社との比較から見えたこと

まいばすけっとは、コンビニ3社ほど駅前や業務・商業地に集中せず、同じ駅徒歩圏でも住宅地に近い場所へ多く出店していました。846店を地図で確かめると、帰宅途中の買い足しや少量購入に使いやすい場所を選んでいるように見えます。

目次

コンビニ3社との立地差

まず、今回の主な比較結果を一つの表にまとめます。まいばすけっとと大手コンビニ3社は、どちらも駅徒歩圏にあり、一般スーパーも近い地域へ多く立地しています。違いが現れたのは、駅前の中心と住宅地のどちらに近い場所を選んでいるかでした。

まいばすけっとと大手コンビニ3社の主要指標
比較指標まいばすけっと大手3社
最寄駅300m以内54.1%59.3%
最寄駅500m以内77.2%76.9%
店舗300m圏の住宅用途68.8%62.4%
店舗300m圏の業務・商業用途18.2%22.6%
駅前―住宅地境界スコア16.613.1
一般スーパー候補500m以内87.4%88.7%

500mまで広げれば駅への近さはほぼ同じで、一般スーパー候補への近さも大差ありません。それでも、まいばすけっとの周囲は住宅用途が濃く、業務・商業用途が薄い。つまり、コンビニとの違いは「駅やスーパーに近いか」ではなく、同じ需要の厚い地域の中で、住宅地側を選んでいるかにあります。

ここから読み取れるのは、食品スーパーがない場所だけを探す出店ではありません。駅を利用する人が多く、既存スーパーも成り立つ住宅地に入り、コンビニで済ませる買い物と大型店でのまとめ買いの間を埋める。日々の買い足しや少量購入に使われることを考えた出店ではないでしょうか。

最初の仮説と実際の結果

はじめに確認したのは、店舗から300m、500m、800mの範囲に何人が暮らし、何人が働いているかです。居住人口には2020年国勢調査、働く人の分布には2021年経済センサスの従業者数を使いました。従業者数は昼間人口そのものではありません。ここでは、昼間に働く人が多い場所を確かめるために使います。

東京23区のまいばすけっと、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンの店舗分布を並べた地図
図1 分析に用いた4チェーンの店舗分布。まいばすけっと846店は公式店舗検索、大手コンビニ3社はOpenStreetMapから取得し、近接する重複候補を除外しました。

比較対象は、セブン-イレブン1,996地点、ファミリーマート1,592地点、ローソン1,126地点です。まいばすけっとより店舗数が多く、とくに大手3社を合算すると4,714地点になります。まず、この母数の違いを無視して「どちらが東京を広く覆うか」と比べることはできません。

「昼はコンビニ、夜はまいばすけっと」という仮説

まいばすけっとの500m圏は、23区の居住人口の69.2%、従業者の67.5%を覆っていました。住宅地への寄り方はコンビニより強く見えるものの、居住人口カバー率そのものが大手3社を上回るわけではありません。コンビニは店舗数が圧倒的に多く、当初の「人口カバー率でも上回るのでは」という仮説は外れました。

ここで区別したいのは、店舗網が覆う人口の総量と、どのような都市環境へ相対的に寄っているかです。前者は店舗数の影響を強く受けます。後者は、居住人口と従業者の差や、店舗周囲の建物用途を比べることで見えてきます。まいばすけっとの特徴は、コンビニより広く東京を覆うことではなく、同じ駅勢圏の中でも住宅地側へ重心を置くことにありました。

4チェーンと大手コンビニ3社合算について500m圏の居住人口と従業者カバー率を比較した棒グラフ
図2 店舗500m圏の居住人口・従業者カバー率。従業者数は昼間人口そのものではなく、昼間に働く人が多い場所を確かめるために用いています。店舗圏の重複は一度だけ数えています。

ただし、当初の着想がすべて外れたわけでもありません。500m圏で居住人口の割合が従業者の割合を上回ったのは、個別4チェーンではまいばすけっとだけでした。差は1.7ポイントと大きくありませんが、ファミリーマートは従業者側が10.1ポイント、ローソンは15.4ポイント高くなりました。「コンビニより住宅地側へ寄る」という方向は、カバー率の大小ではなく、居住人口と従業者のバランスに表れていました。

300m、500m、800m圏における居住人口と従業者カバー率の変化をチェーン別に示した折れ線グラフ
図3 距離別のカバー率。300mでは業態による差が明瞭ですが、800mまで広げると多くのチェーンで差が縮まります。商圏の想定距離により結論が変わることにも注意が必要です。

さらに、直線半径ではなく道路に沿って歩ける距離で23区すべてを計算すると、300m圏の居住人口カバー率は26.8%、従業者は26.0%でした。住宅地側へ寄る方向は残りましたが、差は0.8ポイントです。「夜間人口を明確に選んでいる」とまでは言えず、コンビニより相対的に住宅地へ寄る傾向として読むのが適切です。

円で描く商圏は、線路、河川、幹線道路などをそのまま越えてしまいます。道路距離へ置き換えると数値が下がったのは、実際に歩ける経路へ条件を厳しくしたためです。それでも居住人口側へ寄る方向が残ったことから、結果は円の描き方だけで生じたものではないと確認できました。一方で差が小さいことも重要で、分析結果を分かりやすい物語へ寄せすぎない慎重さが必要です。

23区内における店舗網の地域差

まいばすけっと500m圏の居住人口カバー率を区別に見ると、文京区94.0%、墨田区91.6%、豊島区90.7%でした。一方、足立区34.9%、練馬区42.9%、杉並区51.7%にとどまります。同じ23区でも、生活インフラとしての厚みは一様ではありません。

まいばすけっと500m圏の居住人口カバー率を東京23区別に並べた横棒グラフ
図4 まいばすけっと500m圏の区別居住人口カバー率。区境をまたぐ店舗圏も含め、各区の居住人口のうち店舗500m圏に入る割合を算出しました。
846店東京23区のまいばすけっと
公式店舗検索・2026年8月27日
275m最寄駅までの直線距離中央値
大手コンビニ3社は234m
77.2%最寄駅500m以内の店舗割合
大手コンビニ3社は76.9%

ところが、駅との距離を詳しく見ると、別の特徴が現れます。駅から300m以内では、まいばすけっと54.1%に対して、大手コンビニ3社は59.3%。一方、500m以内まで広げると、まいばすけっと77.2%、大手3社76.9%でほぼ同じです。

つまり、まいばすけっとも十分に駅徒歩圏へ入っています。ただし、改札前や駅前広場に集中するというより、そこから数分歩いた場所まで含めて店舗網をつくっているのです。

300m以内ではコンビニの割合が高く、500m以内ではほぼ並びます。まいばすけっとも駅から遠いわけではありませんが、地価や賃料が高く、業務・商業施設が集まる駅前の中心からは少し外れています。そこは、駅を降りた人が自宅へ向かう道と、集合住宅や戸建住宅が増え始める市街地が重なる場所でもあります。

まいばすけっと、大手コンビニ3社、居住人口の最寄駅距離を比較した累積分布図
図5 最寄駅までの直線距離。まいばすけっとは、居住人口全体より明確に駅へ近い一方、コンビニほど駅直近へ集中していません。駅の位置は国土数値情報「駅別乗降客数」2024年度版を使用。

駅徒歩圏でも住宅地に近い場所

駅から少し遠いだけであれば、周囲の建物用途が住宅中心になるのは当然です。そこで、店舗の周囲300mにある約180万棟の建物を用途別に集計し、さらに駅距離や駅の乗降規模をそろえて比較しました。

まいばすけっと周辺では、集合住宅と独立住宅を合わせた住宅用途の延べ面積比率が、店舗中央値で68.8%でした。大手コンビニ3社は62.4%です。反対に、業務・商業用途は、まいばすけっと18.2%に対して大手3社22.6%でした。

店舗周辺300mの住宅、業務商業、建物密度をチェーン別に比較したグラフ
図6 店舗周辺300mの建物用途構成(店舗ごとの中央値)。東京都「令和3年度建物現況」を基に、建築面積、地上階数、延べ面積換算係数から簡易延べ面積を推計。

さらに、駅からの距離帯を0~200m、201~300m、301~500mなどに分けても、おおむね同じ傾向が残りました。まいばすけっとの駅距離と集合住宅比率との相関も、ほぼゼロです。「駅から遠いから、たまたま住宅地になった」という説明だけでは足りません。

駅前―住宅地境界の数値化

ここからが今回の核心です。最寄駅の代表点から150mを「駅前コア」、各店舗から300mを「店舗周辺」として、住宅用途と業務・商業用途の変化を比べました。

駅前コアより店舗周辺の住宅比率が高く、同時に業務・商業比率が低いほど、「駅前から住宅地へ移った」と考えられます。今回は、この二つの変化を平均した値を、便宜的に駅前―住宅地境界スコアと呼びます。法律や商圏分析で一般化された指標ではなく、立地の違いを見通しよく比較するための独自指標です。

境界スコアの読み方

店舗周辺の住宅比率が駅前より上がり、業務・商業比率が下がるほど数値が高くなります。数値が高いから優れた店舗という意味ではありません。

境界スコアの中央値は、まいばすけっと16.6、大手コンビニ3社13.1でした。差が特に大きかったのは、乗降規模の大きい駅です。1日10万~30万人規模の駅では、まいばすけっと34.9に対して大手3社20.7。30万人を超える駅では33.3対15.4でした。

駅乗降規模別にまいばすけっとと大手コンビニ3社の境界スコアを比較した棒グラフ
図7 最寄駅の1日乗降規模別に見た駅前―住宅地境界スコアの中央値。大規模駅ほど、まいばすけっとと大手コンビニ3社の差が開きました。

大きな駅ほど、駅前には商業施設、オフィス、飲食店が集まります。コンビニはその中心部にも多くあります。一方、まいばすけっとは駅前から離れるのではなく、駅を使う居住者が住宅地へ戻る側へ少し位置をずらしていました。今回の数字は、そのように読むことができます。

言い換えると、まいばすけっとは「駅に近いこと」と「住宅地に近いこと」の両方を満たす場所を選んでいるように見えます。駅前だけを見ても、住宅密度だけを見ても説明しきれません。駅前に商業施設やオフィスが多い大規模駅ほど、その外側で住宅地へ切り替わる場所がはっきりします。大規模駅で境界スコアの差が広がった結果ともよく合います。

地図で見える三つの出店パターン

下の地図では、東京23区のまいばすけっと846店を表示しています。「境界スコア」と「一般スーパーまでの距離」を切り替え、店舗をクリックすると、その場所の駅距離や建物用途を確認できます。駅や一般スーパー候補も、地図右上から重ねられます。

店舗の色分け

まいばすけっと 一般スーパー候補 最寄駅 背景地図 © OpenStreetMap contributors

地図の一般スーパー候補は、OpenStreetMapで「supermarket」とされた地点から、まいばすけっとと既知の小型業態を除いたものです。売場面積が一律に公開されていないため、「大型スーパー」とは断定していません。

台東区における観光地背後の都市構造

東京全体の数字だけでは、店が置かれた場所の表情までは見えません。そこで、上野や浅草のように業務・観光の集積があり、そのすぐ裏側に昔からの住宅地が続く台東区を、ケーススタディとして詳しく見ました。区内にあるまいばすけっとは30店です。道路距離の計算では、区境近くの住民が隣区の店舗を使えることを考慮し、台東区から800m以内にある店舗も到達圏の起点に含めています。

台東区の地図・図表は、タップまたはクリックすると原寸で開きます。スマートフォンでは、開いた画像を拡大して細部を確認できます。

台東区の鉄道網と駅を背景に、まいばすけっとと大手コンビニ3社の道路距離300m到達状況を比較した地図
図8 台東区の道路距離300m圏。250m人口メッシュの中心点が、まいばすけっと、大手コンビニ3社、または両方の到達圏に入るかを示しました。地上鉄道等は実線、地下鉄は破線、駅は白い四角で表示。鉄道網は国土数値情報「鉄道」2024年度版、駅は同「駅別乗降客数」2024年度版を使用しています。

鉄道網を重ねると、三つの地域は住所による便宜的な区分だけではないことも分かります。上野・御徒町と浅草・蔵前は複数の駅が短い間隔で並びます。一方、入谷・三ノ輪・根岸では、駅前の一点よりも、鉄道の間に広がる住宅地へ店舗が入り込む様子が見えます。

台東区は、観光地、商業地、業務地、住宅地が短い距離で接するため、東京全体で見えた特徴を地図上で確かめやすい地域です。同じ区内でも、上野のような大規模駅周辺、浅草・蔵前のような観光・業務と住宅が接する地域、入谷・三ノ輪・根岸のように住宅地が面的に続く地域では、店舗が担う役割が同じではありません。区平均だけを見ず、都市の内部を分けて読む必要があります。

道路距離300m圏に入る居住人口は48.9%、従業者は52.2%でした。台東区では、まいばすけっとも従業者側が3.4ポイント高く、単純に「夜間人口を覆う店」とはいえません。ただし、大手コンビニ3社合計は居住人口86.6%に対して従業者92.7%です。個別に見ても、セブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソンはいずれも従業者側への差が18~24ポイントありました。まいばすけっとは従業者需要も受け止めながら、コンビニより相対的に住宅地側へ寄った網をつくっている、と表現するのが適切でしょう。

台東区でチェーン別に道路距離300m、500m、800m圏の居住人口と従業者カバー率を比較した折れ線グラフ
図9 台東区の道路ネットワーク到達圏。距離を広げると各チェーンの差は縮まりますが、300mではコンビニの従業者側への偏りが明瞭です。

台東区で見えた三つの出店パターン

さらに30店を最寄駅から三つの地域に分けると、二つの立地原理が見えてきました。上野・御徒町の5店は駅距離中央値181mで、周囲の住宅用途は52.8%。業務・商業用途も53.4%あり、都心の混合市街地に入る店舗です。浅草・蔵前の10店は駅距離150mと近い一方、住宅用途が62.3%へ上がり、駅前―住宅地境界スコアは20.3と三地域で最も高くなりました。駅前のにぎわいから住宅地へ切り替わる場所を選ぶ、今回の仮説に最も近い地域です。

一方、入谷・三ノ輪・根岸の15店は駅距離中央値480m、住宅用途77.3%です。境界スコアは0.4にとどまり、駅前から一歩ずらしたというより、初めから住宅地の内部に置かれていると読むほうが自然です。つまり、まいばすけっとには駅前と住宅地の境目を選ぶ店と、住宅地の中へ直接入る店の二つがありそうです。

台東区の三地域について駅距離、住宅・業務商業用途、境界スコアを比較したグラフ
図10 台東区内30店の地域別比較。各指標を地域別の中央値で示しており、住宅用途と業務・商業用途は同一店舗の構成比ではないため、合計100%にはなりません。

単身世帯、高齢者、外国人の構成も確かめましたが、300m到達圏と区全体との差は小さく、特定の世帯属性だけを狙っているとはいえません。また、今回の従業者統計には観光客や買物客の流動人口が含まれていません。浅草や上野の店舗を観光需要だけで説明せず、住宅と業務が短い距離で切り替わる都市構造の中に置いて考える必要があります。

一般スーパーの近くにも出店

もう一つ確かめたかったのが、まいばすけっとは大型スーパーのない場所を埋めるように出店しているのか、という点です。これは半分当たり、半分違うようです。

一般スーパー候補までの直線距離中央値は、まいばすけっと260m、大手コンビニ3社237mでした。まいばすけっとのほうがわずかに遠いものの、87.4%の店舗は500m以内に別の一般スーパー候補があります。800m以内に一つもない店舗は0.7%にすぎません。

東京23区の居住人口を250mメッシュで重み付けすると、一般スーパー候補500m以内に住む人口は84.1%です。まいばすけっとの87.4%は、居住地全体よりむしろ少し高くなりました。

まいばすけっと、大手コンビニ3社、居住人口について一般スーパー候補との近さを比較した棒グラフ
図11 一般スーパー候補との位置関係。まいばすけっとと大手コンビニ3社はいずれも、東京の居住人口全体より一般スーパー候補の近くにあります。居住人口加重の基準は、国勢調査250mメッシュの中心点から最寄り候補までの直線距離で算定。

したがって、「スーパーがない地域だけを探している」とは言いにくい結果です。むしろ、既存スーパーが成立するだけの食品需要がある住宅地で、別の買い方を受け持っている可能性があります。

近くにスーパーがあることは、必ずしも競合だけを意味しません。食品を買う人が十分にいることの証拠にもなります。週末のまとめ買いは一般スーパー、帰宅途中の買い足しは小型店というように、同じ世帯でも時間や購入量によって店を使い分けます。立地を考えるときは、「近くに競合があるか」だけでなく、「同じ需要をどの場面で分け合えるか」を見る必要があります。

大型店とは違う使われ方

大型スーパーでは、品ぞろえを比較しながら数日分をまとめて買えます。一方、駅からの帰宅途中に必要なのは、牛乳、卵、野菜、弁当など、その日に足りないものを短時間で買う機能かもしれません。コンビニより食品スーパーに近く、大型店より短時間で済む。まいばすけっとは、二つの業態の間にある需要を受け止めているように見えます。

もちろん、今回使った地図から実際の買い物行動や売上までは分かりません。ただ、駅徒歩圏、住宅用途、大型店との近接が同時に成り立つことは、単純な「買い物空白地への出店」とは異なる姿を示しています。

東京の住宅地を支える小型食品インフラ

まいばすけっとの公式な企業情報には、小さな店舗だからこそ、生活者の身近な場所へ出店できるという趣旨が書かれています。GISで見えた分布も、その説明とよく重なります。

ただし、都市計画の視点から見ると、もう一つ考えておきたいことがあります。日常の食品アクセスが便利になるかどうかは、行政が線を引いて決めるのではなく、民間企業が成立すると判断した場所の積み重ねに左右されます。店舗が密に入る地域もあれば、同じ23区内でも薄い地域があります。

まいばすけっとは、駅前の華やかな場所に大きな旗を立てるというより、駅前と住宅地の境目へ小さな点を重ねていく業態です。地図上では控えめな点ですが、その点がつながると、東京で暮らす人の帰宅経路と、日々の食品購入を支える一つの都市インフラに見えてきます。

地図と数字から見えたこと

昼と夜だけでは分けられない

最初の仮説は、人口カバー率の大小としては成立しませんでした。まいばすけっとも働く人が多い地域にあり、コンビニも住宅地を広く覆っています。ただし、居住人口と従業者のバランス、駅までの距離、周辺建物の用途を順に確かめると、まいばすけっとはコンビニより住宅地に近い場所へ出店する傾向が残りました。違いは昼と夜を完全に分ける線ではなく、同じ駅徒歩圏のどちら側を選ぶかに表れていました。

大切なのは駅からの距離だけではない

駅徒歩圏にあるという事実だけでは、立地の特徴を説明できませんでした。同じ駅から同程度の距離でも、まいばすけっとの周囲は住宅用途が濃く、業務・商業用途が薄い傾向にあります。駅前広場から何メートルかではなく、商業地から住宅地へ街の性格が切り替わる場所かどうかを見ることで、出店位置の違いが鮮明になりました。

駅前の少し先、住宅地の中、都心の混合市街地

台東区の分析では、浅草・蔵前のように駅前と住宅地の境目を押さえる「境界型」と、入谷・三ノ輪・根岸のように住宅地の内部へ直接入る「住宅地内部型」が確認できました。上野・御徒町には住宅と業務・商業が混在する型もあります。「駅前の少し先」という表現は全体像をよく表しますが、すべての店舗を一つの型へ押し込めないことも大切です。

便利な地域と店舗が少ない地域

まいばすけっとは、既存スーパーがある住宅地にも入り、帰宅途中の少量購入や日々の買い足しに使われている可能性があります。一方、区別の人口カバー率には大きな差があり、同じ23区でも店舗の多さは一様ではありません。徒歩で食品を買いやすい環境が、民間企業の出店によってどこまで支えられるのか。買い物環境を考えるうえでも、見過ごせない差です。

この分析で分かること、分からないこと

本稿は、店舗立地と周辺都市構造の関係を記述した分析です。まいばすけっとが出店時に同じ指標を使っていること、境界スコアが売上や採算を説明することを示したものではありません。

確認できたことこの分析だけでは確認できないこと
駅徒歩圏に入りながら、コンビニより住宅用途の濃い場所にある実際の来店者が駅から帰宅する途中に利用したか
駅前コアから住宅地側への用途変化が、大規模駅ほど明瞭物件賃料や出店費用を抑えられたか
多くの店舗が、別の一般スーパー候補の500m以内にある競合店との買い分け、売上、商圏の実態

また、コンビニと一般スーパーの地点はOpenStreetMapに依存します。駅距離とスーパー距離は直線距離で、改札位置、道路、踏切、河川などの横断条件を反映していません。東京都の建物用途は2021年度、人口は2020年であり、店舗時点とは一致しません。数字は精密に見えますが、一定の誤差を含む比較値として読む必要があります。

専門版のご案内

ここまでが、一般向けに読み解いた結論です。専門者向け資料では、境界スコアの計算式、道路に沿って300m歩ける範囲の計算、台東区の全数値、駅距離帯・乗降規模帯をそろえた比較、データ処理手順、解釈上の限界まで掲載しています。分析を検証したい方、商業立地・都市計画・不動産の実務で方法を確認したい方は、続けて専門版をご覧ください。

主な資料

  1. まいばすけっと公式サイト・店舗検索(2026年8月27日取得)
  2. 国土交通省「国土数値情報 鉄道」2024年度版
  3. 国土交通省「国土数値情報 駅別乗降客数」2024年度版
  4. 東京都都市整備局「東京の土地利用 令和3年東京都区部」
  5. 総務省統計局「令和2年国勢調査250mメッシュ」、総務省・経済産業省「令和3年経済センサス500mメッシュ」
  6. OpenStreetMap contributors(コンビニ・一般スーパー候補の比較用地点)
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この記事を書いた人

▷一級建築士,建築基準適合判定資格者(建築主事試験),宅地建物取引士,建築物省エネ適合性判定員など
▷建築関連法規や都市計画法規などに関することや、都市計画・公共交通・住宅政策などが得意分野です。
▷コンサルタント依頼はこちらから(https://visasq.co.jp)

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