水戸城三階櫓を3D復元:AI(GPT6-Astra)とBlenderにより古写真から3Dになるまで

AIとBlenderで制作した水戸城御三階櫓のカラー復元イメージ
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白黒の古写真に写る水戸城の三階櫓を、カラーで見てみたい。さらに、足元から見上げたり、横に回って眺めたりできたら面白そうです。そんなところから、AIと3D制作ソフト「Blender(ブレンダー)」で、建物を立体にする作業を始めました。

冒頭の画像は、その3DモデルにAIで空や草木、表面の質感を整える「写真仕上げ」を加えたものです。古写真や公開図を参考にしていますが、色や植栽、一部の細部には推定を含みます。

制作記録をたどると、完成画像まで約40時間。この記事に載せた拡大・上空カットの追加まで含めると、約50時間。

今回使ったのはCodexのGPT6-Astraです。それでも「水戸城を作って」と一度頼んで終わり、とはいきません。屋根の勾配、瓦の前後関係、鯱の向き、軒の出。画像を拡大し、古写真と見比べては、直す場所を具体的に伝えていきます。同じAIとBlenderがあっても、同じ仕上がりがすぐに出せるわけではない。どこが違うかを見つける目と、修正を重ねる時間が必要でした。

目次

古写真と図面から、まずは建物の形

手がかりにしたのは、昭和4年ごろの古写真と、水戸市が公開する三階櫓の立面図です。市の資料では総高19.7m、3層5階。「三階櫓」という名前ですが、外から見える三つの層と、内部の床の数は異なるという特徴があります。

最初は壁を箱のように組み、その上に屋根を載せました。窓と瓦を並べると、それらしい姿になります。ただ、下の画像を見ると、屋根の端や軒裏はまだ単純です。ここから古写真に戻り、形を見直していきました。

壁と屋根を組み立てた初期モデル
初期モデル。壁と屋根の大きな形ができた段階で、軒や屋根の端はまだ簡単なつくりです。

AIへの指示が、Blenderの立体になる仕組み

今回の役割分担は、こちらが資料を見て形を判断し、AIがBlenderを動かすプログラムを書き、Blenderが立体を作る、というものです。プログラムにはPythonという言語を使い、「壁をこの位置に置く」「瓦をこの間隔で並べる」といった操作をまとめてもらいました。

例えば、瓦を一枚ずつ手で置くのは大変です。そこで一つの形を作り、間隔を決めて繰り返し並べます。壁・屋根・窓も別々の部材として残るため、後から屋根だけ直したり、窓の大きさを変えたりできます。

流れは「形を作る→材料の色や反射を決める→光とカメラを置く→画像にする」。出てきた画像を見て、また形や材料を直します。「屋根の端をあと10〜20cm外へ」のように、場所と量を伝えた場面もありました。「もっとリアルに」だけでは、直したい箇所がなかなか伝わりません。

大きさはメートル単位で設定しました。斜めから見ると遠近で幅が違って見えるので、真正面からの図に高さの目盛りを添え、各階の幅や軒の出も確認しています。

0メートルから20メートルまでの目盛りを添えた立面
高さ19.7mを採用したモデルの立面。公開図との比較には、まだ調整の余地があります。

建築士として改めて驚くのは、この高さです。現代の建物で1階分の高さを3.3〜4mと仮定すると、約20mはおよそ5〜6階建てに相当します。床面積や構造を同じとみなす比較ではありませんが、「三階」という名前から想像する以上の規模です。下から見上げると、張り出した軒が重なり、建物の高さに加えて屋根の大きさも感じられます。

屋根には中心線も引き、左右の端までの距離と瓦の並びを確認しました。古写真に近い構図と正面図を行き来しての調整です。

中心線を使って三階屋根の左右を確認した画像
制作途中の確認画像。中心線の左右で、屋根の端と瓦の並びを見比べています。

何度もやり直した三階の屋根

いちばん手がかかったのは、三階の屋根でした。下の比較画像では、屋根を縦に走る細長い部材に注目してみてください。上の案は途中で折れたように見えます。古写真と見比べ、下の案では軒先まで連続して見えるように直しました。

屋根を縦に走る部材の修正前後
上は途中で折れて見える案。下は軒先まで連続するように直した案です。

鯱(しゃちほこ)の向きや屋根端の瓦も直しました。三角形の壁が見える「妻側」の飾りや軒は、白石城の写真も参考にしています。別の城の形をそのまま正解にはできず、水戸城の古写真に戻って輪郭を確かめました。

屋根と壁の接するところには、横一列の丸瓦も加えました。全景では気づきにくい部分ですが、拡大すると接続の不自然さが見えてきます。近くで直し、全景に戻ってバランスを見る。その繰り返しでした。

壁際の丸瓦と屋根の接続部分
制作途中の拡大画像。壁際に横一列の丸瓦を加え、屋根との接し方を調整しています。

模型らしさが残った、銅瓦・漆喰・松

屋根材も、見た目だけで決めたものではありません。水戸観光コンベンション協会の公式解説では、焼失後に再建された三階櫓は銅瓦葺だったとされています。今回もこの記述に合わせ、屋根を銅瓦として再現しました。ただし、古写真から当時の色までは確定できないため、くすんだ褐色や緑灰色、経年した銅の光り方は推定を含む表現です。

形が近づいても、まだ模型のように見えました。そこで調整したのが「マテリアル」、つまり表面の色や光の反射の設定です。銅瓦を一色で塗るだけでは、古びた金属らしくなりません。色のむらに加え、光を強く返す場所と、鈍く返す場所の違いも付けました。

漆喰には汚れを付けたものの、一度は汚し過ぎて控えめに戻しています。古さを足すほど本物らしくなる、というわけでもありませんでした。白い壁が日を受ける明るさも残しながら調整しています。

松や地面には、樹木モデルや表面の質感を配布するPoly HavenのCC0素材も利用しました。ただ、素材を置くだけでは十分ではありません。大木に見えるよう幹の太さや枝の張り方を見直し、梅や草地も配置。試作で置いた土手は、資料を再確認して外しました。

敷地と松・梅の配置を検討した途中画像
背景を見直していた段階の画像。この後、古写真を参考に松の配置を増やしました。

日差しと影を描く、レンダリングと写真仕上げ

次は、どこから眺めるかです。Blenderの中にカメラを置き、古写真に近い斜めの構図や、足元から見上げる構図を試しました。同じ建物でも、下から見ると屋根の重なりや軒の深さがよく分かります。

櫓の足元から見上げる画角の検討画像
地上にカメラを置いた見上げの構図。途中モデルを使った写真仕上げ画像です。

形・材料・光・カメラの設定から、一枚の画像を計算する工程が「レンダリング」です。今回はBlenderのCyclesを使い、表面で反射する光を計算しました。軒下の影だけでなく、瓦に光が当たる明るい部分、いわゆるハイライトも、質感を伝える手がかりになります。

試作は小さく描き、仕上げ用は16:9の2560×1440ピクセルで出力しました。計算を増やせばざらつきは減らせますが、屋根の形や光の当て方は別に直す必要があります。

仕上げの一枚は、計算回数の目安となる128サンプルで、保存まで約8分42秒。Blender 4.5.13 LTSのCPU処理で、別のレンダーも同時に動かしていた記録です。この一枚の計算時間より、描いては見直す繰り返しに時間を使いました。

最後にAIの画像編集で空や草木、銅瓦と漆喰の見え方を整えました。この仕上げは画像への加工なので、細部の形が変わる場合もあります。寸法や部材の確認にはBlenderのモデルを使い、見せるための仕上げ画像とは分けて残しています。

完成モデルを、近くと上空から

細部を確かめる寄りの構図と、屋根全体を見渡す上空の構図も描きました。ここまでの修正が、完成モデルでどう見えるかを比べてみてください。

完成モデルの三階屋根を近くから見た水戸城三階櫓
最新の3Dモデルから描いた三階屋根の寄り。銅瓦、妻側の飾り、軒の重なりが見えます。AIによる写真仕上げを加えています。
上空から三層の屋根と周囲の松を見渡した水戸城三階櫓
最新モデルを上空から眺めたイメージ。三層の屋根の大きさと重なりを確認できます。背景・植栽は推定で、AIによる写真仕上げを含みます。

正面と横に回って見る、3Dならではの楽しみ

最後は地面と草木を外し、正面と側面を同じ縮尺で並べました。左が屋根の広い面を見せる「平側」、右が三角形の壁が見える「妻側」です。三階の屋根に注目すると、見る方向によって輪郭が大きく変わるのが分かります。

背景を外し、正面の平側と側面の妻側を同じ縮尺で並べた三階櫓
最新モデルの正面と側面。背景を外し、同じ高さ・縮尺で並べています。

建築設計のパースにも広がる可能性

手間はかかりましたが、建築設計の3Dパースは、AIによってかなり取り組みやすくなったと感じます。部材を作って並べる操作をプログラムに任せ、設計者は窓の大きさや軒の深さ、全体のバランスを考えられる。外壁の材料を変えた案や、見る位置を変えた案も試しやすくなります。今回は従来の方法との作業時間比較まではしていませんが、案を形にして検討する入口が広がった実感があります。

建築士の目で見ると、古い建物の魅力も細部だけではありません。各層の幅、屋根の大きさ、深い軒がつくる影が重なって、この櫓の姿になっています。それを立体で確かめられたのは大きな収穫でした。見栄えのよい画像ができても、寸法や納まりの確認は必要です。AIに制作を助けてもらいながら、建築としてどうかを考える時間は、これからも大切にしたいと思います。

参考にした資料とツール

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この記事を書いた人

▷一級建築士,建築基準適合判定資格者(建築主事試験),宅地建物取引士,建築物省エネ適合性判定員など
▷建築関連法規や都市計画法規などに関することや、都市計画・公共交通・住宅政策などが得意分野です。
▷コンサルタント依頼はこちらから(https://visasq.co.jp)

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