スターバックス全国2,135店舗の立地特性|人口・交通・都市構造のGIS分析

深いグリーンのコーヒーハウスと都市型・郊外型店舗を、日本地図とGISの同心円でつないだスターバックス立地分析の16対9アイキャッチ
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「人口が何万人いれば、スターバックスは来るのか」。地方のまちで新しい店舗が話題になるたび、よく聞かれる質問です。県内初出店や郊外への新店がニュースになると、人口規模が近い自治体どうしを比べ、「次は自分たちのまちではないか」と期待する方も少なくありません。

地域に新しい店舗ができてほしいという気持ちは、まちの暮らしや将来への関心の表れでもあります。ただ、既存店の立地を調べる際には、市町村人口と店舗が実際に接続する需要圏を分けて考える必要があります。市町村境界は行政サービスの単位ですが、買物や通勤、通学、観光の移動は、その境界で止まるわけではないからです。

たとえば、同じ人口5万人の自治体であっても、隣接市の住宅地と市街地が連続している場所、複数の市町村を結ぶ国道沿い、年間を通して観光客が訪れる場所では、店舗周辺の需要条件が異なります。反対に人口50万人の都市でも、鉄道駅に近い路面店、オフィスビル内の店舗、郊外のドライブスルー店を、同じ人口条件で説明することはできません。

さらに、スターバックスの店舗には、企業が敷地や建物を単独で選ぶ店舗だけでなく、イオンモールや駅ビル、空港、サービスエリア、大学、病院などに入る店舗があります。本稿では、このように店舗が入る建物や、同じ敷地を共有する施設を「ホスト施設」と呼びます。こうした店舗は、周辺の居住人口に加え、施設が集める来館者や通過利用者の影響を受けます。店舗類型を区別しない全国平均では、個店の立地条件とホスト施設側の条件が同じ集計値に含まれてしまいます。

そこで本稿では、2026年8月30日未明にスターバックス公式店舗検索へ掲載されていた全国2,135店を対象に、店舗から500m、1km、3km、5km、10kmの居住人口と、500m・1km圏の従業者数を集計しました。そのうえで、三大都市圏とそれ以外の地域、ドライブスルーの有無、商業施設・交通施設などのホスト施設を分け、どの条件で数値が変わるのかを確認しています。

現存店の分布からは、全国に共通する一つの人口基準は確認できませんでした。

全2,135店の中央値は、1km圏約2.02万人、3km圏約16.4万人、10km圏約111.9万人です。しかし、三大都市圏の通常店では1km圏人口が約3.33万人であるのに対し、地方圏のドライブスルー店では約1.02万人まで下がります。店舗類型と圏域を分けると、同じブランドの中に異なる立地の組合せがあることが分かります。

地方圏の公式ドライブスルー395店では、1km圏人口中央値が約1.02万人、5km圏が約14.5万人、10km圏が約33.1万人でした。このうち道路交通量を高い確度で結合できた197店では、昼間12時間交通量中央値が約1万6,300台です。同じ197店で人口と交通量を比べても相関は弱く、人口不足を交通量だけで補う単純な関係ではありませんでした。

もっとも、ここでいう通常店には商業施設内や駅周辺の店舗も含まれます。したがって本稿では、まず全店の傾向を示し、次に店舗類型を分け、最後にホスト施設の影響を除いた施設外店舗を確かめます。人口の数値だけを取り出して「公式の出店条件」と読み替えないことが重要です。

以下は、現在営業している店舗から観察された傾向です。スターバックス コーヒー ジャパンが公表した出店条件ではありません。また、閉店した店舗を含まないため、出店時の判断そのものを再現する分析ではありません。

自分の地域では、どの距離を見ればよいのか

一つの半径だけで判断せず、まず想定する店舗の形を選びます。

  • 駅前・市街地の通常店:500m・1kmの居住人口に、周辺従業者と駅利用を加えます。
  • 地方の施設外店舗:1kmで直近の人口、3km・5kmで市街地の広がり、10kmで周辺自治体を含む人口の積み上がりを見ます。
  • ドライブスルー店:3km・5km・10kmに加え、前面道路の交通量、出入りのしやすさ、15分・30分の道路到達圏を確認する必要があります。本稿で算出済みなのは円形人口と道路交通量の一部です。
  • 商業施設内店舗:周辺人口だけでなく、施設の来館者、テナント構成、駐車場、施設全体の商圏を見ます。
  • 観光地・空港・サービスエリア:居住人口は補助指標とし、観光客、乗降客、通過交通を優先します。

これらはスターバックスの公式商圏ではなく、本稿が既存店を比較するために設けた分析圏です。似た人口があることだけでは、出店の可否を判断できません。

目次

自治体人口と実際の需要圏

市町村人口は、行政サービスや都市規模を見るには欠かせません。しかし、店舗の商圏を測る境界としては不自然です。道路を一本渡った先が隣の市でも、買物をする人にとっては同じ生活圏です。町村部では、住所上の自治体より近隣の中心都市のほうが近いこともあります。

今回、国土交通省「都市モニタリングシート」の分類へ全店舗を接続すると、三大都市圏が1,241店、地方圏が894店でした。地方圏のうち、人口10万人以下の自治体に218店、10万人超40万人以下の自治体に365店あります。少なくとも、「人口の大きな市にしか出ない」という店舗網ではありません。

2,135店公式店舗検索の掲載数
2026年8月30日取得
1,241店三大都市圏
全店の58.1%
894店地方圏
全店の41.9%

では、どの人口を見ればよいのでしょうか。この記事では、行政界をいったん外し、店舗を中心に同じ大きさの円を描きました。500mと1kmは徒歩・自転車を含む身近な市街地、3kmと5kmは都市内の広がり、10kmは複数地区をまたぐ人口圏を見るための尺度です。公式の商圏定義ではなく、店舗どうしを同じ物差しで比べるための分析圏です。

全国2,135店舗の分布

東京、大阪、名古屋の中心部では、近い距離に多くの店があります。地方圏では県庁所在地だけでなく、郊外の国道沿い、ショッピングセンター、観光地、大学、病院、サービスエリアにも点が伸びます。

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1店 2~3店 4~7店 8~14店 15店以上
図1 公式店舗検索2,135店を約10kmメッシュに集計した分布図。店舗名と正確な座標は公開データに含めていません。背景地図は国土地理院。

点を一つずつ並べる代わりに、地図では約10kmのメッシュごとの店舗数を示しました。合計は2,135店、店舗があるメッシュは528です。都道府県と圏域を切り替えると、都市中心部で店舗密度が上がり、地方では自動車でつながる都市軸に沿って分布する違いが見えます。

店舗周辺の人口と人口密度

2020年国勢調査の人口は、約1km四方の区画(1kmメッシュ)ごとに公表されています。本稿では、その区画の人口を、店舗からの円と重なる面積の割合に応じて分けました。全2,135店の中央値は、500m圏約4,900人、1km圏約2万200人、3km圏約16万4,200人、5km圏約38万4,800人、10km圏約111万9,000人です。

半径を複数設けたのは、店舗によって来店手段が異なるためです。500m圏は店舗直近の住宅・業務集積、1km圏は徒歩や自転車で接続しやすい周辺市街地、3km・5km圏は都市内の住宅地や商業地の広がり、10km圏は市町村境界を越える人口の積み上がりを比較するために用いました。これらはスターバックスが公表した商圏ではなく、全国の店舗を同じ距離で比較するために本稿が設定した分析圏です。

また、円形の人口圏は実際の移動時間を示しません。海、河川、山地、鉄道、道路網を越えて同じ距離として集計するため、半島部や山間部では、直線距離が近くても道路では遠い人口を含む場合があります。地方のドライブスルー店については、10km円だけでなく、前面道路と15分・30分の道路到達圏を重ねる必要があります。本稿では円形人口の結果を先に示し、道路条件を別の変数として扱います。

店舗からの距離別人口

全国2,135店の中央値・2020年国勢調査1kmメッシュ

500m約0.49万人
1km約2.02万人
3km約16.4万人
5km約38.5万人
10km約111.9万人

図2 棒の長さは面積差で小さい値が見えなくならないよう平方根尺度。500m・1kmは1kmメッシュ内で人口が均等に分布すると仮定した推計値です。

中央値とあわせて分布の幅を確認する必要があります。10km圏人口が約1万人の観光地・山間部店舗がある一方、500万人を超える大都市の店舗もあります。全国中央値だけを出店条件として扱うと、店舗形式、来店手段、ホスト施設が異なる立地の差が集計値の中に残ります。

500m圏と1km圏の値には、推計方法上の注意もあります。この方法は、メッシュ内に人口が均等に分布すると仮定する推計です。メッシュ内のどこに住宅が集まっているかまでは反映できず、駅前の高層住宅、河川敷、大規模工場、農地が同じメッシュにある場合には誤差が生じます。とくに500m圏は元メッシュより細かいため、実数ではなく、重なり面積による推計値として読む必要があります。

人口密度は、推計人口を各半径の円全体の面積で割りました。海岸部では円の一部が海にかかるため、陸地だけを分母とする密度より低く出ます。人口のないメッシュとデータが欠けているメッシュも区別し、円と人口メッシュの重なり率を保持しています。全国値を示すときは、重なり率が不足する店舗を欠損として扱い、0人には置き換えていません。

人口密度も同じです。500m圏で高密度でも、周辺がオフィスや駅施設なら居住人口だけで需要を説明できません。そこで2021年経済センサスの従業者数も重ねました。全店の中央値は500m圏約3,700人、1km圏約1万2,800人です。これは昼間人口や歩行者通行量ではなく、周辺に職場がどれだけ集まるかを見る代理指標です。

従業者数についても、店舗を利用した人数を数えたわけではありません。事業所所在地に集計された従業者を、人口と同様にメッシュの重なり面積で配分した値です。オフィスの就業者が近くに多いことは平日昼間の需要条件と関係し得ますが、在宅勤務、勤務時間、来店頻度、歩行者通行量は分かりません。居住人口と従業者数は、互いを置き換える指標ではなく、店舗周辺の異なる側面を示します。

本稿における三大都市圏と地方圏

ここで、この記事で用いる「三大都市圏」の範囲を確認しておきます。一般に東京圏を1都3県、中京圏を愛知・岐阜・三重、近畿圏を2府4県のように都府県単位で表すことがありますが、本稿はその区分を使っていません。都府県を丸ごとまとめると、東京や大阪の通勤圏から離れた地域まで同じ都市圏に含まれ、スターバックスの立地を比較するには範囲が粗くなるためです。

本稿では、国土交通省「都市モニタリングシート」令和6年(2024年)全体表の都市類型を採用しました。同資料の三大都市圏は、首都圏整備法の既成市街地・近郊整備地帯、中部圏開発整備法の都市整備区域、近畿圏整備法の既成都市区域・近郊整備区域を含む市町村です。該当するのは全国1,719市町村のうち288市町村で、本稿では残る1,431市町村を比較上「地方圏」と呼びます。

本稿が採用する三大都市圏の構成
圏域市町村数含まれる都府県と市町村数境界を理解する例
東京圏141茨城10、埼玉49、千葉25、東京29、神奈川28茨城南西部は含む一方、水戸市・つくば市は地方圏
名古屋圏53愛知46、三重7愛知県内でも豊橋市・豊川市は地方圏。岐阜県は全域が地方圏
大阪圏94京都14、大阪43、兵庫9、奈良28神戸市は三大都市圏、姫路市・明石市は地方圏

政令指定都市の行政区は、それぞれ親市へまとめました。東京都23区も、国交省原表に合わせて「特別区部」として一つに扱っています。また、国交省原表の「地方圏」という単独類型が1,431市町村あるわけではありません。三大都市圏以外の政令指定都市10市、人口40万超70万以下の11市、10万超40万以下の120市町村、10万以下の1,290市町村を、本稿の分析上まとめた名称です。

したがって、同じ県内でも圏域が分かれる場合があります。本稿の「三大都市圏」と「地方圏」は都市の優劣を示す区分ではなく、人口密度、交通手段、店舗形式の構成が異なる地域を比較するための分析区分です。

三大都市圏の店舗

店舗数1,241店
1km圏人口中央値約3.12万人
3km圏人口中央値約27.9万人
10km圏人口中央値約233.8万人
500m圏従業者中央値約7,200人

地方圏の店舗

店舗数894店
1km圏人口中央値約1.08万人
3km圏人口中央値約7.73万人
10km圏人口中央値約38.6万人
500m圏従業者中央値約1,900人

地方圏は、人口が少ないだけではありません。ドライブスルーの比率が44.2%で、三大都市圏の13.9%を大きく上回ります。都市中心部で歩行者と働く人を受け止める店と、幹線道路から車で入る店が、同じブランドの中に共存しています。

圏域別の公式ドライブスルー比率

公式店舗検索の店舗形式フラグ

三大都市圏13.9%
地方圏44.2%

図3 全国の公式ドライブスルー店舗は568店、全店の26.6%。

店舗類型別の周辺人口

三大都市圏と地方圏の全店中央値を比べるだけでは、店舗類型の構成差が残ります。三大都市圏には非ドライブスルー店が多く、地方圏ではドライブスルー店が多いためです。そこで、店舗のアクセス形式とホスト施設を分け、さらに同じ店舗類型の中で三大都市圏と地方圏を比較しました。

ここで注意したいのは、ドライブスルーと商業施設内店舗は、同じ分類軸ではないことです。ドライブスルーは車で商品を受け取れるアクセス形式であり、商業施設内・駅構内・空港内などは店舗が入る場所の性格です。実際には、商業施設の敷地内に独立棟のドライブスルー店がある場合もあります。以下の一般向け集計では重複を避けるため、駅・空港・サービスエリア等、公式ドライブスルー、大規模商業施設内候補、施設外非ドライブスルー候補、その他施設内候補の順で、一店を一つの候補類型へ整理しました。

分類上の注意:ドライブスルー568店は公式店舗検索で確認できるアクセス形式です。それ以外は、店舗名・住所の規則から作成した仮分類であり、建物内、同一敷地の別棟、隣接、施設外を一店ずつ手作業で確定した件数ではありません。以下では、未確定であることが分かるよう「候補」と表記します。

店舗類型・圏域別の周辺人口中央値
店舗類型圏域店舗数1km圏3km圏5km圏10km圏
ドライブスルー
公式確認
三大都市圏173約1.58万人約12.9万人約31.7万人約108.1万人
地方圏395約1.02万人約6.75万人約14.5万人約33.1万人
施設外・非ドライブスルー
候補
三大都市圏367約3.61万人約32.0万人約80.0万人約276.6万人
地方圏146約1.65万人約11.3万人約22.2万人約50.6万人
大規模商業施設内・非ドライブスルー
候補
三大都市圏266約2.94万人約25.1万人約64.4万人約205.6万人
地方圏166約0.87万人約6.79万人約16.2万人約41.8万人
駅・空港・SA等・非ドライブスルー
候補
三大都市圏73約1.67万人約16.5万人約45.6万人約160.1万人
地方圏40約0.15万人約2.34万人約6.24万人約20.2万人
その他施設内・非ドライブスルー
候補
三大都市圏362約3.36万人約32.6万人約102.2万人約375.4万人
地方圏147約1.54万人約11.4万人約22.2万人約42.6万人

表の人口は、2020年国勢調査1kmメッシュから重なり面積に応じて配分した推計値です。

ドライブスルー店の人口分布

公式ドライブスルー店を同じ類型どうしで比べると、三大都市圏173店の1km圏人口中央値は約1.58万人、地方圏395店は約1.02万人でした。三大都市圏の第1四分位数から第3四分位数は約0.98万~2.64万人、地方圏は約0.75万~1.46万人です。地方圏の半数は、おおむねこの範囲に入ります。

ただし、この数値は「1km圏に1万人いれば出店できる」という意味ではありません。地方圏のドライブスルー店でも、10km圏人口の四分位範囲は約17.6万~51.5万人と幅があります。さらに、同じ人口であっても、前面道路の交通量、車線数、右左折のしやすさ、中央分離帯、交差点との位置関係、敷地の間口によって車での入りやすさは変わります。人口圏は需要側の指標であり、道路交通は店舗へ到達できるかを示す別の条件です。

施設外非ドライブスルー候補の人口分布

施設名の規則に該当しなかった非ドライブスルー候補では、1km圏人口中央値が三大都市圏約3.61万人、地方圏約1.65万人でした。四分位範囲は三大都市圏で約2.61万~4.86万人、地方圏で約1.06万~2.31万人です。地方圏でも、ドライブスルー店の中央値より近距離人口が多い側にあります。

この差は、来店手段の違いと整合しますが、現時点では「施設外」の確定分類ではありません。名称に建物名を含まないビル内店舗や、小規模商業施設のテナントが混ざる可能性があります。手動確認後に同じ傾向が残るかを確かめる必要があり、候補段階の数値を公式出店条件として扱うことはできません。

ホスト施設内候補の人口分布

ホスト施設内候補では、周辺居住人口の意味がさらに変わります。地方圏の大規模商業施設内候補166店は1km圏人口中央値が約8,700人ですが、施設自体が駐車場、専門店、食品売場、映画館などを組み合わせ、複数の市町村から来館者を集めます。駅・空港・サービスエリア等候補40店では約1,500人まで下がりますが、空港利用者や高速道路利用者は周辺に居住している必要がありません。

したがって、店舗類型別の人口表は、出店に必要な人数を順位づけする表ではありません。どの距離の人口を重く見るべきか、居住人口以外に何を加えるべきかを確認する表です。地方圏のドライブスルーでは道路交通、大規模商業施設内では施設来館者、駅や空港では乗降・通過利用、施設外の通常店では近距離人口と周辺従業者が、それぞれ重要な追加指標になります。

地方店舗を支える広域商圏

地方圏の10km圏人口中央値は約38.6万人です。これだけを見ると、「40万人前後が条件」と言いたくなります。しかし、人口10万人以下の自治体にある218店だけを見ると、10km圏人口中央値は約17.6万人まで下がります。

白馬村、軽井沢町、本部町のように、自治体の居住人口だけでは説明しにくい店があります。観光客、別荘利用、広域道路、商業施設、図書館など、日常の居住人口とは別の来店理由を持つ店です。サービスエリアや空港の店舗は、そもそも「周囲に何人住むか」より、そこを通過する人が重要です。

自治体規模別に見た店舗周辺人口の中央値
国交省の自治体類型店舗数1km圏3km圏10km圏
三大都市圏1,241約3.12万人約27.9万人約233.8万人
地方圏・政令指定都市211約2.50万人約18.1万人約95.2万人
地方圏・40万超~70万以下100約1.50万人約10.7万人約47.6万人
地方圏・10万超~40万以下365約1.03万人約7.02万人約31.2万人
地方圏・10万以下218約0.58万人約3.86万人約17.6万人

地方で「スタバに来てほしい」と考えるとき、自治体の人口順位だけを見ても答えは出ません。候補地の周囲3km・5km・10kmに人口がどのように積み上がるか、どの道路を通って周辺自治体から来られるか、通勤・通学・観光の流れがあるかを見る必要があります。

人口10万人以下の自治体にある218店は、この点を考えるうえで参考になります。1km圏人口中央値は約5,800人、3km圏は約3.86万人、10km圏は約17.6万人です。市町村全体の人口が小さくても、中心集落の近くに住宅地と商業地がまとまり、10km程度の範囲に周辺自治体の人口が加わる場合があります。一方、観光地や交通施設の店舗では、同じ10km人口でも来訪者や通過利用者の比重が大きくなります。

このため、地方都市を評価するときには、「自治体人口が何万人に達したか」よりも、候補地を中心に人口がどの距離で積み上がるかを確認するほうが実態に近づきます。1km圏人口が少なくても、3kmから10kmにかけて複数の住宅地や周辺市町村が連続し、主要道路で接続していれば、狭い徒歩圏だけでは説明できない需要条件があります。反対に自治体人口が多くても、市域が広く人口が分散し、候補地までの道路条件が弱ければ、行政人口をそのまま店舗商圏とはみなせません。

もちろん、既存店と似た人口圏を持つことは、出店を約束するものではありません。企業の賃貸契約、土地所有、建築条件、売上見込み、人員配置、既存店との役割分担は公開データから分かりません。それでも、自治体人口の大小だけで可能性を語るより、人口圏、道路、ホスト施設、職場集積を分けて示すことで、地域の現状を具体的に説明できます。

ドライブスルー店の道路交通条件

公式店舗検索でドライブスルーに分類された店舗は568店で、全国2,135店の26.6%です。ただし、圏域別の構成は同じではありません。三大都市圏は173店で圏内店舗の13.9%、地方圏は395店で44.2%です。全国のドライブスルー店と非ドライブスルー店をそのまま比べると、店舗形式の差だけでなく、三大都市圏と地方圏の構成差も同時に含まれます。

全国値では、ドライブスルー店の周辺人口中央値は1km圏約1.12万人、3km圏約8.09万人、10km圏約43.8万人です。非ドライブスルー店は、それぞれ約2.70万人、約24.1万人、約171.4万人でした。500m圏従業者も、ドライブスルー店の約1,500人に対し、非ドライブスルー店は約6,700人です。既存ドライブスルー店は、周辺人口・従業者が比較的少ない場所に多いという記述上の差があります。

地方圏395店の周辺人口

地方圏の公式ドライブスルー395店に絞ると、1km圏人口中央値は10,197人、3km圏は67,503人、5km圏は144,949人、10km圏は331,342人でした。店舗の中央50%が入る範囲は、1km圏で7,468~14,615人、10km圏で176,137~514,902人です。店舗直近の人口だけでなく、3kmから10kmにかけて住宅地や周辺自治体の人口がどのように加わるかを見る必要があります。

この分布は、地方圏の既存ドライブスルー店が一つの人口規模へ集中していないことも示します。10km圏中央値約33.1万人を「必要人口」と読むことはできません。人口が同程度でも、道路網、商業施設、観光・通勤の流れ、既存店との位置関係は異なります。

ドライブスルーの有無による周辺人口

各群の中央値

ドライブスルー・1km1.12万人
非ドライブスルー・1km2.70万人
ドライブスルー・10km43.8万人
非ドライブスルー・10km171.4万人

図4 全国の調整前中央値。三大都市圏・地方圏の構成差、商業施設の有無、道路交通条件は調整していません。

この結果から「人口が少ない場所ほどドライブスルーになる」と結論づけることはできません。ドライブスルー店に必要なのは、周辺に居住する人数だけではなく、前面道路を通る車が店舗へ安全に入り、注文後に敷地内を回り、再び道路へ戻れる条件だからです。同じ昼間12時間交通量でも、片側一車線の道路、中央分離帯のある四車線道路、交差点角地では入庫のしやすさが異なります。道路の反対側から右折入庫できない場合、地図上で近い人口がそのまま来店可能人口になるわけでもありません。

ドライブスルー店で確認する道路・敷地条件
項目確認する内容数値だけでは分からない点
自動車交通量昼間12時間・24時間交通量、小型車・大型車の構成店舗前を通過する車のうち、実際に入庫できる方向と時間帯
道路構造道路種別、車線数、中央分離帯、右左折規制道路区間データだけでは敷地出入口の位置を確定できない場合
交差点条件信号交差点からの距離、角地、右折レーン、渋滞長交通量が多くても出入口付近が滞留すれば利用しにくいこと
敷地条件間口、奥行、待機車列、駐車場、店内動線公的な全国データだけではドライブスルー動線を直接測れないこと
沿道土地利用商業系用途、ロードサイド店舗、住宅地、工業地用途地域が同じでも実際の沿道景観や土地利用が異なること

道路交通量には、国土交通省「令和3年度全国道路・街路交通情勢調査」の一般交通量調査を用いました。公式ドライブスルー568店から250m以内にある道路区間を抽出すると、1,043候補が得られました。そこから店舗までの距離、店舗住所と路線名の一致、道路階層、近接候補の競合を確認し、285店を分析上の自動採択としました。

残る283店のうち、200店は複数区間が近い、高速道路が近接する、路線名との対応が曖昧などの理由で手動確認が必要です。83店は250m以内に公式調査区間がありませんでした。これは店舗前に道路がないという意味ではなく、道路交通センサスの対象区間が250m以内にないという意味です。自動採択できた285店も、店舗出入口や筆界を現地確認した確定接道ではありません。

公式ドライブスルー店の道路交通量スクリーニング
圏域公式ドライブスルー店自動採択交通量有効昼間12時間交通量中央値四分位範囲観測区間のみの中央値車線数中央値
三大都市圏173878615,613台11,753~23,329台14,863台4車線
地方圏39519819716,347台12,876~23,027台16,100台4車線

道路交通量を結合できた197店

地方圏395店のすべてに道路交通量を結合できたわけではありません。店舗から250m以内の国交省調査区間を探し、距離、路線名、道路階層、近接候補の競合から一つの区間を自動採択できたのは198店です。そのうち昼間12時間交通量が有効だった197店では、中央値が16,347台、中央50%が12,876~23,027台でした。残る198店を0台とは扱いません。交通量が少ないのではなく、複数道路の近接や調査対象区間の不在などにより、同じ確度で値を確定できていない店舗です。

人口と交通量を同じ店舗で比べるため、交通量が有効な197店だけについて人口を再集計しました。1km圏人口中央値は10,152人、5km圏は153,461人、10km圏は361,232人です。395店全体と比べると、1km圏人口はほぼ同じですが、10km圏人口は約3万人、9.0%高くなります。道路を自動結合できた店舗は無作為に選ばれたわけではないため、197店の結果を地方圏395店全体の交通量分布とはみなしません。

地方圏ドライブスルー店の人口・交通量と対象店数
指標対象範囲店舗数中央50%中央値読み方
1km圏人口地方圏の公式店全体3957,468~14,615人10,197人店舗直近の人口
5km圏人口地方圏の公式店全体39584,006~221,174人144,949人都市内人口の積み上がり
10km圏人口地方圏の公式店全体395176,137~514,902人331,342人周辺自治体を含む広域人口
10km圏人口交通量有効店のみ197207,888~517,798人361,232人人口・交通量の同時分析と同じ母集団
昼間12時間交通量自動結合・交通量有効19712,876~23,027台16,347台店舗への入庫台数ではない
昼間12時間交通量観測区間のみ14012,741~23,091台16,100台国交省の非観測区間推定値を除く確認値

197店のうち140店は観測区間、57店は国土交通省が推定値を付した非観測区間です。観測区間だけの中央値は16,100台で、197店全体の16,347台と大きくは変わりませんでした。車線数中央値は4車線で、中央50%は2~4車線です。

周辺人口と交通量の組合せ

同じ197店で人口と交通量を比べると、両者は一対一には対応しません。人口との順位相関は、500m圏0.10、1km圏0.09、3km圏0.19、5km圏0.23、10km圏0.19でした。最も高い5km圏でも弱い正の関連にとどまり、交通量が多いほど周辺人口も必ず多い、あるいは人口が少ないほど交通量が多くなければならない、という関係ではありません。

10km圏人口と昼間12時間交通量の四つの組合せ

地方圏・公式ドライブスルー・交通量有効197店。人口36.1万人、交通量16,347台という各中央値で区分

上段:交通量中央値以上 / 下段:交通量中央値未満
人口は中央値未満
交通量は中央値以上
40店20.3%
人口・交通量とも
中央値以上
59店29.9%
人口・交通量とも
中央値未満
58店29.4%
人口は中央値以上
交通量は中央値未満
40店20.3%
10km圏人口中央値未満10km圏人口中央値以上

図5 中央線は出店基準ではなく、197店を二分する中央値です。件数の大小ではなく、人口が比較的少なく交通量が多い店と、その逆の店がいずれも存在することを確認する図です。

10km圏人口が中央値未満で、交通量が中央値以上だった店舗は40店、全体の20.3%ありました。この群の中央値は、10km圏人口約23.5万人、昼間12時間交通量約23,400台です。一方、10km圏人口が中央値以上で、交通量が中央値未満の店舗も40店あり、人口と交通量のどちらか一方が常に他方を補う構造ではありません。

道路交通量の四分位別に見た周辺人口中央値
交通量の区分店舗数昼間12時間交通量1km圏人口5km圏人口10km圏人口
低位25%5010,410台9,368人124,631人320,110人
第2四分位4914,807台10,822人120,853人294,545人
第3四分位4919,569台12,105人188,581人422,642人
高位25%4926,962台10,024人182,410人393,433人

交通量が最も多い25%でも、1km圏人口中央値は10,024人で、交通量が最も少ない25%の9,368人と近い値です。5km・10kmでは交通量の多い二群の人口がやや多いものの、交通量の順に人口が単調に増えてはいません。地方のドライブスルー店は、「人口が少ない代わりに交通量が多い」という一種類ではなく、人口と道路の異なる組合せに分布しています。

地方都市の数値をどう読むか

地方圏の既存ドライブスルー店を表す中心的な人口像は、1km圏約1万人、5km圏約14.5万人、10km圏約33.1万人です。交通量を同時に確認できた197店では、昼間12時間約1万6,300台でした。

ただし、これは「10km圏33万人と交通量1.6万台があれば成立する」という条件ではありません。人口は395店、交通量は197店という母集団の違いがあり、同じ197店で比べても相関は弱い結果でした。候補地では人口と交通量を別々に確認し、さらに右左折、中央分離帯、出入口、敷地内動線、既存店との間隔を重ねる必要があります。

本稿で「既存店として成立している」と呼べる範囲は、2026年8月30日の公式店舗検索に営業店として掲載されていたことまでです。店舗別売上、損益、閉店履歴は公開されていないため、採算上の成立や成功確率を示すものではありません。

自動採択道路の内訳は、三大都市圏87店で国道33店、主要地方道38店、一般県道12店、指定市道4店、地方圏198店で国道87店、主要地方道66店、一般県道34店、指定市道11店でした。地方圏では国道の構成が高い一方、交通量の中央値だけは三大都市圏と大差がありません。道路の名前よりも、その区間がどの程度の車を受け持ち、敷地へどの方向から入れるかを確認する必要があります。

交通量有効283店のうち、観測区間は195店、非観測区間の推定値は88店で、2店は欠測または観測区分が混在しました。表では全有効区間の中央値に加え、観測区間だけの中央値も併記しています。24時間交通量は昼夜率等による推定を含む場合があるため、主指標には昼間12時間交通量を用いました。

掲載値の範囲:道路交通量は、接道スクリーニングで自動採択できた285店、公式ドライブスルー568店の50.2%に限る記述値です。全店の確定接道結果、公式出店条件、交通量の下限値ではありません。手動確認200店を加えたときに分布が変わる可能性があります。

大規模商業施設内店舗の立地条件

イオンモール、ららぽーと、百貨店、駅ビルなどに入る店舗は、ホスト施設の来館者を需要の一部として共有しています。施設側が駐車場、公共交通への接続、食品売場や専門店、映画館などを組み合わせているため、店舗周辺の居住人口だけでは立地条件を説明できません。地方圏の大規模商業施設内候補では、1km圏人口中央値が約8,700人である一方、10km圏では約41.8万人です。近隣徒歩圏よりも、施設全体が集める広域の自動車利用者が関係している可能性があります。

また、「商業施設にある店舗」という表現にも複数の立地があります。建物内のテナント、食品売場に近い区画、駅と接続したモール内、同一敷地の駐車場に建つ独立棟、敷地に隣接する路面店では、営業時間、視認性、賃貸条件、車の動線が異なります。特に同一敷地の独立棟にドライブスルーがある場合、商業施設の集客と前面道路の通過交通の両方を受けるため、建物内店舗と同じ類型にはできません。

これらを施設外店舗と混ぜると、個店が置かれた場所の条件と、ホスト施設側が持つ条件が集計値に重なります。名称ルールによる一次抽出では、大規模商業施設の候補457店、オフィス・複合ビル候補313店、書店・図書館候補96店、大学・病院候補62店、空港・サービスエリア・駅構内候補113店が見つかりました。複数の候補に該当する店舗があるため、これらを単純に合計することはできません。また、候補名は最終分類ではありません。

同じ「イオンモール○○店」でも、建物の中、同一敷地の独立棟、駐車場内のドライブスルーでは立地の意味が違います。名称だけで一括除外せず、ホスト施設公式ページと大規模小売店舗立地法の届出を照合し、「建物内」「同一敷地の別棟」「隣接」を分けています。

大規模商業施設の基準 大規模小売店舗立地法では、一つの建物内の小売店舗面積の合計が政令基準の1,000m²を超える店舗が対象です。スターバックス単店の面積ではなく、ホスト施設の該当性を確認します。

ホスト施設除外後の施設外店舗

次に、ホスト施設の影響をできるだけ分けて、施設外店舗の立地を確かめます。対象から外すのは、商業施設内、駅構内、空港、サービスエリア、大学・病院、書店・図書館などです。そのうえで、公式ドライブスルー店と非ドライブスルー店を別に扱います。

一次判定では、施設名が見当たらない公式ドライブスルー店514店を、単独店の確度が比較的高い候補として抽出しました。一方、非ドライブスルーで施設名が明瞭でない513店には、街路沿いの路面店、オフィスビル1階、名称に施設名を含まないテナントが混在します。ここを機械的に「単独店」と呼ばず、200店の層化確認で判定ルールを検査しています。

候補段階では、施設外非ドライブスルー候補の1km圏人口中央値は、三大都市圏で約3.61万人、地方圏で約1.65万人です。地方圏の公式ドライブスルー店約1.02万人より高く、同じ地方圏でも店舗形式によって近距離人口の置かれ方が違います。ただし、非ドライブスルー候補には名称へ施設名が出ないテナントが含まれる可能性があるため、手動確認前の数値として扱います。

施設外店舗の最終比較では、同じ圏域、用途地域、店舗形式の中で、周辺人口、従業者、最寄駅、道路交通量、地価を比較します。ここまで条件をそろえることで、都市圏の違いやホスト施設の構成差を、ブランド自身の立地傾向と取り違える危険を小さくできます。

本稿では、未検証の施設候補から「スタバは○万人で出店する」と断定する数値を置いていません。ホスト施設判定は手動確認を終えていないため、施設外店舗の中央値や四分位範囲を確定値として掲載せず、候補件数と除外前後の比較にとどめています。

地方都市における立地指標

地方都市で候補地を考えるなら、自治体人口の一項目より、次の組合せを見るほうが実務的です。

既存店から検証する地方都市の指標
指標確認内容読み違えやすい点
近距離人口500m・1kmの人口と人口密度1kmメッシュ按分の推計値であり、店舗前の歩行量ではない
都市内人口3km・5kmの人口の積み上がり市町村境界を越える人口を含める
広域人口10km人口と、今後算出する30分道路到達圏円は山・川・海・道路条件を越えるため時間圏も必要
職場集積500m・1kmの従業者、業種構成昼間人口や来街者数とは別の指標
道路条件前面道路、12時間交通量、車線数、右左折最寄り幹線道路ではなく実際の出入口道路の確認
ホスト施設商業施設内、同一敷地別棟、独立立地施設名だけで「モール内」と断定しない
競合と既存店既存スタバ、カフェ、商業核との間隔近い店があること自体を不利と決めない

この指標は、候補地の出店可否を採点する公式表ではありません。既存店の分布と似ているかを確かめ、どこが違うのかを説明するための道具です。地域にスターバックスを望む声があっても、企業側の契約、採算、出店時期まで外部から予測できるわけではありません。

米国資料から見える人口指標の限界

米国の店舗網を見れば、「スターバックスは人口何万人で出店するのか」という問いに、もう少し明確な答えが出るのではないか。そう考えるのは自然です。米国は店舗数が多く、会社の決算資料も日本より詳しいためです。ところが、最新の公表資料を確認すると、決算資料から分かる数字と、地図上の分析をしなければ分からない数字の間には、はっきりした境界があります。

決算資料で確認できる店舗網

2026年6月28日時点の米国店舗は16,933店です。直営店とライセンス店舗の米国内訳が確認できる直近の年次報告書では、2025年9月28日時点で直営10,047店、ライセンス6,813店、合計16,860店でした。ライセンス店舗は全体の40.4%を占めます。病院、ホテル、オフィス、空港、小売施設など、別の施設が持つ利用者を受け止める店舗が相当数含まれるため、日本の店舗網と総数だけを比べることはできません。

米国勢調査局の2025年7月1日人口推計341,784,857人を、2026年6月末の16,933店で単純に割ると、1店当たり約20,200人です。しかし、この値は「各店舗の半径内に約2万人が住む」という意味ではありません。アラスカからニューヨークまでの全国人口を全店で割った店舗密度の比率にすぎず、店舗がない地域の人口も含みます。都市部では複数店の商圏が重なり、空港や大学の店舗は周辺居住人口以外の需要を受けます。したがって、50万人はもちろん、約2万人も米国の出店条件とは呼べません。

米国資料から計算できる値と、その解釈
確認事項公表値・参考計算言えること言えないこと
米国店舗数16,933店
2026年6月28日
米国全体の店舗網の規模店舗形式別・地域別の必要人口
運営形態直営10,047店、ライセンス6,813店
2025年9月28日
異なる運営・立地形態が併存することライセンス店がすべて施設内店舗であること
人口÷店舗数約20,200人/店
2025年人口÷2026年6月末店舗数
国全体の粗い店舗密度店舗周辺人口、商圏人口、出店基準
成長余地最大5,000か所の追加機会
2026年Investor Dayの会社見通し
会社が米国に成長余地を見ていること人口だけで選ばれた確定候補地

年次報告書が示しているのは、直営店を交通量と視認性の高い場所に置き、都心、郊外型商業地、オフィス、大学、地方部、幹線道路周辺などに応じて店舗の大きさと形式を変える考え方です。市場ごとの出店量も、期待収益、市場の成熟度、経済環境、消費者行動、地域の事業環境によって変わると説明しています。2026年Investor Dayで示された最大5,000か所の追加出店機会も、平均店舗売上の成長や新しい店舗形式を前提にした会社見通しであり、人口閾値の公表ではありません。

周辺人口の推計に必要な分析設計

米国の「1店舗当たり周辺人口」を求めること自体は可能です。ただし、半径を先に一つへ決めるのではなく、店舗形式ごとに人口がどの距離で積み上がるかを確かめる必要があります。日本との比較表は1km・3km・5km・10kmにそろえ、米国内の補助表では1・3・5・10 milesも併記します。そのうえで、都市部の通常店は徒歩5分・10分・15分、ドライブスルー店は自動車5分・10分・15分、地方部では15分・30分の道路到達圏を比較します。半径は公式商圏と呼ばず、既存店間隔と人口分布を検証するための分析距離として扱います。

米国店舗の形式別に優先する分析指標
店舗形式最初に比較する範囲人口と併せて見る指標
都心・オフィス・大学1km・1 mile、徒歩時間圏昼間従業者、歩行者、駅・大学・オフィス利用
郊外の通常店1・3・5km、1・3 miles住宅密度、商業集積、既存店間隔
ドライブスルー3・5・10km、5・10・15分自動車圏道路交通量、進行方向、出入口、競合店舗
地方・幹線道路周辺5・10km、15・30分自動車圏通過交通、広域中心性、観光・通勤流動
空港・病院・小売施設内周辺人口は補助指標施設利用者、乗降客、来館者、施設の営業時間

もう一つの問題は、商圏の重なりです。米国の都市部では、一人が複数店舗の1 mile圏や3 miles圏に入ります。各店の円内人口を足すだけでは、同じ人を何度も数えます。そこで、①各店の円内人口、②全店舗の円を結合した重複なし人口、③一つの人口区画を圏内店舗数で割り振る人口、④最寄り店舗へ割り当てる人口を併記する必要があります。「店舗周辺に何人いるか」と「店舗網全体で一店が何人を受け持つか」は、別の指標です。

米国実数の掲載判断:現時点では、米国全店の周辺人口実数は掲載していません。公式Store Locatorは店舗座標と運営形態、ドライブスルー情報を個店検索では返しますが、全国一括データを公開しておらず、利用規約は自動取得を制限しています。書面による利用許可、または利用許諾済みの店舗位置データを確保し、公式店舗数と標本照合できた段階で算出します。ライセンス店舗と施設内店舗も同義とはみなしません。

米国との比較から得られる重要な示唆は、人口基準の数字ではなく、店舗形式を分けなければ人口の意味が定まらないことです。これは日本の分析結果と同じです。決算資料は店舗網の規模、運営形態、経営上の重点を示しますが、店舗別の半径人口や出店可否を示す資料ではありません。周辺人口は、許諾された位置データとCensus人口、道路、昼間従業者を重ねて初めて検証できます。

米国資料:Starbucks FY2026 Q3 resultsFY2025 Form 10-K2026 Investor DayU.S. Census Bureau QuickFactsStarbucks Terms of Use。人口÷店舗数はUrbanPoleShiftによる参考計算。

未出店自治体にある既存店類似地点

2026年8月30日の公式店舗検索を市町村単位で集計すると、全国1,719市町村のうち、スターバックスの掲載店がない自治体は1,239、ドトールがない自治体は1,455、どちらの掲載店もない自治体は1,193でした。この1,193という数は、候補地の数ではありません。人口の小さな離島や山村、近隣自治体の店舗まで数kmしか離れていない町も同じ「自治体内0店」に含まれます。

そこで、詳細な行政界データをそろえられた東北6県を対象に、自治体そのものではなく、自治体内の比較地点を作りました。対象227市町村のうち、スターバックス未出店は196、ドトール未出店は193、両ブランドとも未出店は187です。各自治体について、人口が最も集まる1kmメッシュ、従業者が最も集まる1kmメッシュ、乗降客数が最も多い駅を候補にし、250m以内の点をまとめた結果、541地点になりました。

各地点には、1km・3km・5km・10km圏の人口と従業者、最寄駅と乗降客数、最寄りの既存店までの直線距離を付けました。そのうえで、東北にある各ブランドの既存店で観察された需要、駅アクセス、店舗網の間隔へどの程度近いかを比べています。以下は、両ブランドとも未出店の187自治体から、基準設定で前方に位置した地点群です。順位が高いことは、出店計画、出店確率、採算を意味しません。

東北6県・両ブランド未出店自治体の既存店類似地点(予備選別)
比較ブランド自治体・比較地点1km圏人口3km圏人口1km圏従業者最寄駅・乗降客数最寄既存店
スターバックス宮城県塩竈市・本塩釜駅周辺11,042人88,185人7,048人本塩釜・5,242人/日3.2km
岩手県宮古市・宮古駅周辺6,856人27,938人5,809人宮古・825人/日67.8km
山形県新庄市・新庄駅周辺6,917人24,782人6,056人新庄・1,884人/日41.4km
福島県西郷村・新白河駅周辺6,816人35,542人6,119人新白河・5,592人/日24.8km
秋田県由利本荘市・羽後本荘駅周辺8,628人32,153人4,453人羽後本荘・2,152人/日32.0km
岩手県久慈市・久慈駅周辺5,575人18,520人4,787人久慈・512人/日40.3km
ドトール宮城県塩竈市・本塩釜駅周辺11,042人88,185人7,048人本塩釜・5,242人/日4.5km
宮城県岩沼市・岩沼駅周辺15,309人39,968人4,363人岩沼・13,398人/日6.4km
宮城県大河原町・大河原駅周辺9,031人32,629人4,071人大河原・6,196人/日18.8km
山形県新庄市・新庄駅周辺6,917人24,782人6,056人新庄・1,884人/日41.2km
秋田県由利本荘市・羽後本荘駅周辺8,628人32,153人4,453人羽後本荘・2,152人/日37.2km
宮城県白石市・白石駅周辺7,723人24,099人3,505人白石・5,256人/日29.6km

塩竈市は人口、従業者、駅アクセスが既存店の分布に近い一方、最寄既存店まで3~5kmしかなく、市境を越えた店舗網の内側にあります。宮古市、新庄市、由利本荘市などは既存店まで30~70kmほど離れていますが、遠いほど出店しやすいわけではありません。店舗網から離れていることは空白市場の可能性と同時に、物流、人員確保、商圏規模が既存店と異なる可能性も示します。

需要、駅アクセス、既存店間隔の重みを変えた三つの設計では、上位20自治体に共通して残ったものがスターバックス12自治体、ドトール15自治体でした。一方、道路交通量は既存スターバックスのドライブスルー店周辺に限られ、全国の候補地点へ同じ方法で付けられません。大規模商業施設の入居可能区画、駐車場、用途地域、賃料も未確認です。このため、今回の表は駅・中心部型の予備選別であり、郊外道路型や商業施設型の候補表ではありません。

出店時期について:公開データから「いつ来るか」は推定できません。ここで確認できるのは、既存店の周辺で観察された人口、従業者、駅アクセス、店舗間隔へ似た地点があるかどうかです。物件交渉、賃貸条件、建築、採用、社内計画は両社とも公開していません。

未出店地点分析の資料:両社公式店舗検索、国土交通省「行政区域データ」「駅別乗降客数」、2020年国勢調査1kmメッシュ、2021年経済センサス1kmメッシュ。候補点生成、周辺集計、経験指標はUrbanPoleShiftによる。

観察結果の範囲と限界

分析対象は、取得時点の公式店舗検索に掲載された現存店です。閉店店を含まないため、うまくいかなかった立地を同じようには観察できません。開店当時の人口、道路、地価ではなく、現在入手できる複数年の公的データを重ねた断面分析でもあります。

また、店舗数2,135は公式店舗検索の取得時点の掲載数です。会社概要や決算資料に掲載された別時点の店舗数とは一致しない場合があります。数値の優劣ではなく、日付と収録範囲の違いです。

「スタバは人口何万人で出店するのか」という問いに対し、本稿の現存店分析から確認できたのは、店舗類型と圏域によって参照すべき人口の距離が異なることです。都市中心部の通常店、地方の国道沿いにあるドライブスルー、商業施設、観光地、空港・サービスエリアでは、来店手段と居住人口の意味が同じではありません。店舗類型を区別してから周辺人口を比較すると、全国中央値を公式出店条件と読み替える誤りを避けられます。

Technical section

専門分析の方法と検証

ここからは、前半で示した店舗類型別の差が、どのようなデータと分類から得られたのかを説明します。とくに、全店の中央値、圏域を分けた中央値、ホスト施設を除く比較では、母集団が異なります。数値の確度と比較条件を記録し、どこまでが観察結果で、どこからが今後の推定課題なのかを区別します。

分析課題と比較の順序

本稿が確かめたいのは、単純な店舗数の多寡ではありません。第一に、現在営業しているスターバックスの周囲に、どの程度の居住人口と従業者がいるのか。第二に、その分布が三大都市圏と地方圏、ドライブスルーと非ドライブスルー、ホスト施設内と施設外でどのように変わるのか。第三に、道路、駅、人口集中地区、地価などをそろえたときにも差が残るのか、という順序です。

この順序を採る理由は、全国集計から直ちに「スターバックスの選好」を取り出せないためです。たとえば地方圏にはドライブスルーが多く、ドライブスルーは一般に低密度な場所にあります。全国のドライブスルーと非ドライブスルーの人口差には、店舗形式の差と圏域構成の差が含まれます。また、駅ビル内店舗の駅距離が短いことは当然であり、それを施設外店舗の立地選好と同列に扱うこともできません。

一般部の問いと専門部の検証方法
一般部の問い最初に示す値追加して確認する条件解釈の範囲
周辺にどの程度の人口がいるか500m~10km人口の中央値と、店舗の中央50%が入る範囲(四分位範囲)圏域、店舗類型、ホスト施設現存店周辺の記述分布
地方店舗は広域人口を見ているか3km・5km・10km人口道路到達圏、観光・通過交通円形圏人口だけでは来店元を示さない
ドライブスルーは何を選ぶか公式DT別の人口・従業者前面道路交通量、車線、用途地域、敷地道路結合完了前は人口差まで
施設外店舗の特徴は何かホスト施設除外候補の記述値手動確認、駅、道路、地価候補分類と確定分類を区別
ドトールと何が違うか人口、従業者、駅距離、人口集中地区(DID)同一圏域・自治体・店舗形式での比較条件をそろえる前の差とブランド固有の差を区別

記述統計は、店舗を一店ずつ同じ重みで扱い、中央値、第1四分位数、第3四分位数を示します。平均値は東京都心のような極端に大きい値の影響を受けやすいため、本文の中心には用いません。必要に応じて中央値のブートストラップ95%信頼区間も算出しますが、店舗が空間的に独立ではないことを踏まえ、モデル推定では自治体クラスターや空間ブロックを別途検討します。

分析対象と店舗分類

分析対象と取得時点

スターバックスは、2026年8月30日0時14分42秒(JST)に公式店舗検索を低頻度で取得しました。100件ずつ22回、計2,135件です。公式サイトマップの店舗詳細URLも2,135件で一致しました。店舗ID重複、必須項目欠損、座標異常はありません。公式ドライブスルーフラグは568件でした。

ドトールは比較対象を「ドトールコーヒーショップ」category=01に限定し、エクセルシオール カフェなどの別ブランドを除外しました。2026年8月30日0時16分24秒(JST)の公式店舗検索は1,036件で、画面上の地域合計とAPI件数が一致しました。現在の店舗検索断面であり、両ブランドとも開閉店の履歴ではありません。

公式店舗検索の行単位データと生レスポンスは内部研究領域に保存し、公開しません。公開するのは集計値、検定結果、独自に算出したメッシュ集計などに限定します。

圏域・アクセス形式・ホスト施設の分類

圏域は国土交通省「都市モニタリングシート」2024年全体表を正本としました。三大都市圏288市町村と地方圏1,431市町村を分け、地方圏は政令指定都市、40万超70万以下、10万超40万以下、10万以下の4区分へ分けました。東京都23区は原典に合わせて「特別区部」へ統合しています。

アクセス形式とホスト施設は別の変数です。ドライブスルー店が商業施設の敷地内にある場合があるため、`drive_through` と `host_type` を一つの店舗形式へまとめません。一般向け表示では簡略化しても、分析表では二軸を保持します。

商業施設内・駅構内・空港・SAの識別

店舗名・住所から候補を抽出し、ホスト施設の公式テナント一覧、大規模小売店舗立地法の届出、鉄道・空港・高速道路施設の公式ページで確認します。最終区分は、施設内、同一敷地の別棟、隣接、施設外、判定不能です。「イオン」「モール」「駅」などの語が店名にあるだけでは、建物内か敷地内の独立棟かを確定できません。

一般部の相互排他的な候補分類では、公式ドライブスルー568店、大規模商業施設内候補の非ドライブスルー432店、駅・空港・SA等候補の非ドライブスルー113店、施設外非ドライブスルー候補513店、その他施設内候補の非ドライブスルー509店に整理しました。ここで公式に確認できているのはドライブスルーのアクセス形式だけです。残る1,567店のホスト施設区分は、名称・住所ルールによる候補です。

候補ルールの精度確認用として、候補区分、圏域、ドライブスルーの有無から200店の層化レビュー票を作成しました。ただし、2026年8月30日時点で手動確認済み件数は0店です。したがって、本文では候補件数と明記し、見逃し率・適合率や全数の確定件数は掲載していません。レビュー完了後にルールを修正し、全2,135店へ再適用します。

単独店舗を対象とした再分析

最終的な主分析は、商業施設、駅、空港、SA・PA、大学・病院、書店・図書館などを除いた施設外店舗です。通常店とドライブスルー店を分け、三大都市圏と地方圏でも層別します。現段階の「施設外・非ドライブスルー候補」は、施設名キーワードに該当しなかった店舗であり、独立店舗の確定分類ではありません。

分類条件を厳しくした場合にも同じ傾向が残るかを確かめるため、施設名に一度も該当せず、「駅前」や階数表記なども持たない店舗を「厳格条件の施設外候補」として別に集計します。このように条件を変えて結果の安定性を見る検証を、感度分析と呼びます。厳しい除外条件は誤って施設内店舗を残す危険を減らす一方、実際には施設外である店舗まで除く可能性があります。

説明変数と層別設計

人口・人口密度・周辺従業者数の集計

居住人口は2020年国勢調査1kmメッシュ、周辺従業者は2021年経済センサス活動調査1kmメッシュです。各店舗を中心とする局所正距方位図法へメッシュを投影し、円とメッシュの交差面積比で人口・世帯・従業者を按分しました。

500mと1kmは元データの1kmメッシュより細かい圏域です。メッシュ内で人口が均等に分布する仮定の影響が大きいため、推計値として扱います。海岸部は円の面積に海を含み、人口密度が低く出ます。データがあるメッシュとの重なり率を併記し、重なりが0の値を観測ゼロとして扱いません。

最寄駅と人口集中地区

鉄道アクセスには、国土数値情報「駅別乗降客数」2024年度版を用いました。複数事業者が同じ駅を使用する場合は駅グループ単位で整理し、全店舗から最寄駅までの直線距離を計算しています。スターバックス2,135店の最寄駅距離中央値は約300m、ドトール1,036店は約126mでした。三大都市圏では約144mと約93m、地方圏では約848mと約661mです。

乗降客数は、事業者や駅によって公表状況と集計方法が異なります。スターバックス102店、ドトール36店で最寄駅の乗降客数が欠損しており、欠損を0人には置き換えていません。また、駅構内店舗を含む全店の距離中央値は、施設外店舗の駅近傾向をそのまま示すものではありません。ホスト施設除外候補と、厳格条件の施設外候補でも同じ指標を再集計します。

市街地の連続性には、2020年国勢調査に基づく国土数値情報「人口集中地区(DID)」を重ねました。DIDは、国勢調査上、人口がまとまって連続する市街地を示す統計区分であり、市街化区域や用途地域と同じものではありません。スターバックスは2,135店中1,774店、83.1%がDID内で、ドトールは1,036店中951店、91.8%でした。スターバックスの公式ドライブスルー店はDID内68.5%、非ドライブスルー店は88.4%です。

DID境界から50m以内にはスターバックス115店、ドトール18店がありました。座標誤差や境界線上の判定に左右されやすいため、境界付近は10m、25m、50m、100mのバッファで感度を確認します。DID内率の差だけで、郊外志向や中心市街地志向を確定しないための処理です。

道路交通量・地価・用途地域の調整

道路には令和3年度全国道路・街路交通情勢調査の昼間12時間交通量、車線数、道路種別、観測・推定区分を用いました。箇所別基本表は47都道府県の公表CSVを取得し、区間形状は一般交通量調査結果WEBマップが公開するGeoJSONのうち、公式ドライブスルー568店の250m圏を覆う必要タイルだけを取得しました。全国の全道路区間を巡回取得する方法は採っていません。

CSVとGeoJSONは、先頭ゼロを保持した11桁の交通調査基本区間番号で結合しました。250m以内の候補は1,043区間で、距離、路線名一致、道路階層、候補競合に基づき285店を自動採択、200店を手動要確認、83店を250m以内の対象区間なしと判定しました。高速自動車国道や都市高速道路が最近傍でも、直接接道を仮定せず手動確認に回しています。

自動採択285店のうち、交通量観測区間は195店、非観測区間の推定値は88店、欠測・区分混在は2店でした。昼間12時間交通量中央値は、三大都市圏の有効86店で15,613台、地方圏の有効197店で16,347台です。観測区間だけでは14,863台と16,100台でした。WEBマップ表示値と箇所別基本表CSVには、比較可能1,024候補のうち19件で1~7台、最大0.161%の差があったため、公表CSVを数値の正本としました。

この結合は道路中心線との空間スクリーニングであり、店舗出入口、筆界、中央分離帯開口部を確定した接道調査ではありません。主モデルへ入れる前に手動要確認200店を確認し、自動採択だけを用いた場合との感度差を示します。出典は国土交通省「令和3年度全国道路・街路交通情勢調査 一般交通量調査」、店舗との空間結合と集計はUrbanPoleShiftによる加工です。

人口・交通量の同時分析と選択偏り

地方圏の公式ドライブスルー395店では人口指標を全店で得られましたが、人口と道路交通量の同時分析は、自動結合198店のうち昼間12時間交通量が有効な197店に限りました。未結合198店は無作為な欠測ではありません。複数区間の近接、複雑な交差点・側道構造、高速道路の近接、路線名不一致、道路交通センサス対象区間の不在が理由に含まれるため、自動結合群は公的な道路区間へ対応させやすい店舗へ偏る可能性があります。

実際、10km圏人口中央値は地方圏395店全体の331,342人に対し、交通量有効197店では361,232人でした。1km圏人口中央値は10,197人と10,152人でほぼ同じですが、広域人口は197店のほうが9.0%高くなっています。このため、人口は395店全体の分布と197店部分集合の分布を分けて掲載し、交通量中央値を395店全体へ外挿しません。

同時分析では、人口と交通量を順位へ置き換えたSpearmanの順位相関を用いました。相関係数は500m圏0.10、1km圏0.09、3km圏0.19、5km圏0.23、10km圏0.19です。観測区間140店だけでも、1km圏0.07、5km圏0.22、10km圏0.17で、交通量推定区間57店を含めるかどうかで結論の方向は変わりません。これらは記述的な関連であり、人口または交通量の因果効果、代替関係、最低条件を推定した値ではありません。

道路区間の昼間12時間交通量は、上下方向を合計した区間交通量であり、店舗への入庫台数、進行方向別の利用可能交通量、時間帯別の来店可能交通量ではありません。人口は2020年国勢調査、交通量は2021年度道路交通センサス、店舗は2026年8月の現存店断面で、時点も一致しません。次の感度分析では、手動確認店を追加した再集計、自動結合群と未結合群の人口分布比較、観測区間限定、店舗から道路までの距離条件変更を行います。

地価は2026年地価公示の同用途最近傍点、用途地域は国土数値情報または自治体の都市計画GISを用いる予定です。地価公示は標準地の価格であり、店舗賃料や実際の土地取得費ではありません。最近傍点の距離が大きい場合や用途が一致しない場合には欠損扱いとし、無理に補間しない条件を設けます。

三大都市圏と地方圏の層別

全国を一つのモデルへ入れると、都市圏の店舗密度と地方圏のドライブスルー比率の違いが係数へ混入します。主分析では圏域別モデルを作り、必要に応じて自治体規模との交互作用を入れます。標準誤差は自治体でクラスター化し、空間ブロックによる交差検証も行います。

ドトールとの立地特性比較

比較対象としてのドトール

ドトールを比較対象に置く目的は、二つのブランドの優劣を決めることではありません。どちらも全国に店舗網を持つコーヒーチェーンですが、駅前、オフィス街、商業施設、郊外道路沿いなどの構成が同じではありません。同じ人口・従業者・駅データを重ねることで、スターバックスだけを見ていたときには「カフェ一般の傾向」なのか「スターバックスに比較的多い傾向」なのか判断しにくかった部分を確認できます。

比較対象は、2026年8月30日0時16分24秒(JST)にドトール公式店舗検索へ掲載されていた「ドトールコーヒーショップ」category=01の1,036店です。エクセルシオール カフェなどの別ブランドは含めません。スターバックス2,135店とは店舗数、取得時刻、運営形態が異なり、ドトールの店舗別FC・直営区分も公開検索からは分かりません。このため、店舗網全体の構成差と、個別立地の差を分けて読む必要があります。

店舗面積と席数の比較限界

人口や駅距離を比べる前に、店舗の大きさを確認する必要があります。同じカフェでも、持ち帰り専用の数坪店、駅前ビルの一階、50坪前後のロードサイド店、テラスを持つ公園店では、必要な敷地、賃料、滞在客数が違います。店舗面積をそろえないままブランドを比べると、立地選好の差に見えたものが、店を置くために必要な床の差だったという可能性が残ります。

ドトールの現行FC募集では、一層店舗は概ね35坪以上、複層階は一つの階につき20坪以上を必要面積として示しています。ただし、これは新規FC物件の目安であって、営業中1,036店の平均面積ではありません。1980年の一号店は9坪で、現在も駅、空港、病院、図書館、ガソリンスタンドなど多様な形式があります。

公式発表で確認できる店舗面積・席数の事例
ブランド・形式店舗面積席数読み方
スターバックス・新横浜新幹線改札内4.2坪座席なし持ち帰り専用の特殊立地
スターバックス・河内長野高向店49.31坪62席
テラス14席を含む
地方ロードサイド型の一例
スターバックス・越谷イオンレイクタウン店64.85坪73席大型商業施設内の一例
ドトール・エッソ市原五所店48坪73席ガソリンスタンド併設ドライブスルーの一例
ドトール・柏の葉公園店40坪54席公園内店舗の一例
ドトール・代々木公園店32坪78席
テラス44席を含む
屋内席とテラス席を分けて読む必要

これらは広報対象となった特徴的な店舗で、無作為に選んだ標本ではありません。この表から「スターバックスのほうが常に広い」「ドトールのほうが席を多く取る」と結論づけることはできません。専有面積と建物面積、屋内席とテラス席、施設の共用部を同じ定義で比較できないためです。

ドトールは公式店舗検索に店別の総席数を載せています。1,036店のうち正の席数が確認できた989店では、UrbanPoleShift集計の中央値が55席、中央50%が40~71席でした。0席と表示された47店は、座席なしと確定せず、未確認値として除外しています。一方、スターバックスの公式店舗検索には全店共通の席数・面積欄がなく、全国同条件の比較はできません。

このため、主分析のブランド比較モデルへ面積・席数は投入していません。スターバックス側で値が得られるのが広報店舗に偏るため、欠損店を除けば特殊店舗だけの比較になります。また、面積は立地選定の前提であると同時に、モール内、ドライブスルー、ライセンス店といった形式を選んだ結果でもあります。今後は圏域と店舗形式をそろえた手動標本で、専有面積、屋内席、テラス席、運営形態を別列にして検証します。データがないことを「両社の店舗規模が同じ」とは解釈しません。

全国・圏域別の記述差

まずは、圏域、店舗形式、ホスト施設などの条件をまだそろえず、両ブランドの全店をそのまま比べます。以下では、この段階を「調整前」と呼びます。ここで見える差には、ブランドの違いだけでなく、店舗網の地域構成や店舗形式の違いも含まれます。

全国の全店比較では、1km圏人口中央値がスターバックス20,236人、ドトール31,348人でした。500m圏従業者は3,666人と5,962人、最寄駅距離は約300mと約126m、DID内率は83.1%と91.8%です。現存店舗網の記述値では、ドトールが人口・職場集積の多い場所と駅に近い側へ寄り、スターバックスは低密度で駅から離れた場所を含む、より広い立地分布を持っています。

全国・全店の単純比較(調整前)
指標スターバックスドトール
店舗数2,1351,036
三大都市圏比率58.1%73.6%
1km圏人口20,236人
中央50%:9,884~35,595人
31,348人
中央50%:15,928~46,462人
500m圏従業者3,666人
中央50%:1,652~16,682人
5,962人
中央50%:2,432~23,447人
最寄駅距離300m
中央50%:73~1,096m
126m
中央50%:41~448m
人口集中地区(DID)内率83.1%91.8%

もっとも、ドトールは全店の73.6%が三大都市圏にあり、スターバックスの58.1%を15.5ポイント上回ります。全国差の一部は、ドトールの店舗網が三大都市圏へ多く配分されていることから生じます。そこで、同じ圏域の中でも差が残るかを確認しました。

三大都市圏・地方圏別の調整前比較
圏域ブランド店舗数1km圏人口500m圏従業者最寄駅距離人口集中地区内率
三大都市圏スターバックス1,24131,193人7,203人144m90.5%
ドトール76237,642人7,665人93m96.5%
地方圏スターバックス89410,848人1,907人848m72.8%
ドトール27411,485人2,450人661m78.8%

圏域を分けると、全国の人口差はかなり縮まります。地方圏の1km圏人口はスターバックス10,848人、ドトール11,485人で、差は637人です。一方、地方圏でもドトールの500m圏従業者は543人多く、最寄駅距離は187m短く、DID内率は6.0ポイント高いという方向が残ります。三大都市圏でも、ドトールは1km圏人口が6,449人多く、最寄駅距離が51m短い側にあります。

この結果は、全国差の相当部分が圏域構成から生じていることを示す一方、同じ圏域内でも駅距離やDIDに記述上の差があることを示します。ただし、駅ビルや商業施設内店舗を含むため、まだブランド固有の選好とは言えません。

ホスト施設除外候補後の記述差

次に、商業施設、駅・空港、SA・PA、大学・病院、書店、ホテル、観光施設、ガソリンスタンドなどの主要ホスト施設候補を除きました。さらに、名称ルールへ一度も該当せず、「駅前」を示す語や階数表記も持たない「厳格条件の施設外候補」でも比較しました。どちらも手作業で施設内外を確定した分類ではありません。除外条件を変えたときにも、差の方向が保たれるかを見る検証です。

除外条件別の感度比較(全国・調整前)
対象範囲ブランド店舗数1km圏人口500m圏従業者最寄駅距離人口集中地区内率
全店スターバックス2,13520,236人3,666人300m83.1%
ドトール1,03631,348人5,962人126m91.8%
主要ホスト施設除外候補後スターバックス1,34021,175人4,072人258m86.0%
ドトール69836,728人9,874人91m96.7%
厳格条件の施設外候補スターバックス83915,019人2,078人689m79.1%
ドトール43137,297人7,741人98m95.4%

主要ホスト施設候補を除いた後も、ドトールは人口・従業者が多く、駅に近く、人口集中地区内率が高い側にあります。厳格条件の施設外候補ではその差がさらに広がりました。しかし、除外後に差が広がったことを「施設を除けば本当のブランド差が分かった」とは解釈できません。名称ルールが両ブランドで同じ精度とは限らず、除外操作によって残る店舗の構成自体が変わるからです。

現段階で丁寧に言えるのは、ドトールの現存店舗網が、圏域を分けた後も駅と就業集積に近い側へ寄る傾向を持ち、スターバックスはそれに加えて、駅から離れた場所やDID外を含む幅広い立地環境を持つということです。スターバックスのドライブスルー568店が、この店舗網の幅を広げる一因になっています。

類似条件内のブランド比較(条件付きロジット)

条件付きロジットは、市町村や用途地域、店舗形式が似た店舗どうしを一組にし、その中で人口や駅距離などの違いが、スターバックスとドトールのどちらに結び付くかを推定する方法です。説明変数には1km・3km人口、500m・1km従業者、最寄駅距離、駅乗降客数、人口集中地区の内外、道路交通量、地価を用います。商業施設、駅・空港、SA・PAなどは主分析から除き、条件を変えた検証で戻します。

連続変数は分布を確認したうえで対数化または標準化し、多重共線性を検査します。結果は係数だけでなく、人口密度や駅距離を現実的な範囲で動かしたとき、スターバックスである調整後確率が何ポイント変わるかを平均限界効果で示します。95%信頼区間はHTMLのフォレストプロットで掲載し、自治体クラスター標準誤差と空間ブロック交差検証を併用します。

実行状況:2026年8月30日時点で条件付きロジットは未実行です。したがって、条件をそろえた後の確率差や95%信頼区間は掲載していません。この節の表はすべて、条件をそろえる前の現存店舗比較であり、ブランド固有の出店条件や因果効果を示すものではありません。

除外条件別の感度分析

主分析のほかに、①商業施設だけを除外、②駅・空港・SAを追加除外、③ドライブスルーだけ、④通常単独店だけ、⑤ホスト施設判定不能を除外、⑥同一座標・近接重複の扱い変更、⑦500m・1km推計のメッシュ按分方法変更を行います。結論の符号と大きさがどこまで残るかを表で示します。

未出店地点の予備選別と感度分析

自治体内の比較地点生成

未出店自治体の分析では、市役所や自治体重心を一つだけ置く方法を採りませんでした。自治体の中心業務地区と人口中心が異なることがあり、郊外の商業核を捨てることにもなるためです。東北6県の2020年行政界へ1km人口メッシュ、1km従業者メッシュ、駅別乗降客数を重ね、自治体ごとに最大人口メッシュ、最大従業者メッシュ、最大乗降客駅を選びました。候補点どうしが250m以内なら同じ商業核とみなし、541地点へ整理しています。

仙台市の行政区は国交省の都市分類と合わせて親市コード04100へ統合しました。全国の未出店数は1,719市町村を母集団として計算し、コードの重複がないことを確認しています。東北の行政界227市町村も全国台帳へすべて接続できました。候補点の周辺人口と従業者は、既存店と同じくメッシュと円の重複面積に応じて配分しています。

既存店分布による経験的比較

各候補点を、東北にある同ブランド既存店の分布へ照合しました。需要環境には1km・3km・5km・10km人口と従業者、交通環境には最寄駅距離と乗降客数、店舗網には最寄既存店までの直線距離を用いています。各指標を既存店分布の経験分位へ置き換え、需要、駅アクセス、店舗網間隔を同じ重みでまとめた基準設計のほか、需要を重くする設計、駅アクセスを重くする設計を作りました。

未出店地点の予備選別における感度確認
確認項目スターバックスドトール解釈
東北の未出店自治体1961932026年8月30日の公式店舗検索断面
両ブランドとも未出店187自治体自治体内0店であり、生活圏内0店とは限らない
三つの重み設計で上位20に共通12自治体15自治体重みを変えても前方に残る地点群
基準設計の経験指標50以上0自治体12自治体確率や合格点ではなく既存店分布との相対位置
同60以上0自治体2自治体ブランド間で得点水準を直接比較しない

スターバックスで基準設計50以上がなかったことは、「東北には出店できる場所がない」という意味ではありません。東北の既存スターバックス自体が限られ、商業施設内、ドライブスルー、中心部通常店を同じ基準へ十分に分けられていないことに加え、今回の候補点に道路型と大型商業施設型が入っていないためです。むしろ、駅・中心部の公開指標だけでは、既存スターバックスに近い条件を十分に再現できないことを示します。

候補地点分析の未確認条件

この予備選別には真の負例がありません。未出店地点の中には検討されたが採用されなかった場所、物件が出なかった場所、まだ検討されていない場所が混在します。候補点の作り方によっても結果は変わり、主要駅を入れる設計は駅前型に有利です。道路交通量、車線数、出入口、駐車場、商業施設規模、用途地域、地価、賃料、採用環境を同じ精度で付けるまでは、全国順位表へ拡張しません。

次の段階では、郊外道路型、駅・中心市街地型、大規模商業施設型を別々に候補生成し、同じ圏域・同じ店舗形式の既存店だけと比較します。既存店を地域単位で隠し、その周辺地点を上位へ戻せるかを空間ブロック交差検証で確かめます。公開表の名称も「出店可能性」ではなく、「既存店環境に近い地点群」「一部条件が近い地点群」「追加確認が必要な地点群」とします。

空間検証と解釈上の限界

空間的偏りと生存者バイアス

近い店舗は似た都市環境を共有します。そのため、同じ自治体の店舗を一つのまとまりとして誤差を見積もり、地域を区切って予測精度を確かめます。さらに、近い地域ほど似た誤差が残っていないかをMoran’s Iという指標で確認します。

本稿が見ているのは、取得時点で営業している店舗だけです。閉店した店や、候補になったものの出店しなかった場所は含まれません。残っている店舗だけから条件を考えることで、成功した側へ見方が偏ることを「生存者バイアス」と呼びます。このため、本稿から言えるのは現存店の周辺環境であり、「出店すれば成功する条件」ではありません。

データの制約と解釈範囲

主なデータの基準年と役割
データ基準年分析単位主な制約
スターバックス公式店舗検索2026年8月30日取得現存掲載店閉店履歴・開店日・ホスト施設区分なし
国勢調査2020年1kmメッシュ小半径では面積按分の仮定
経済センサス活動調査2021年1kmメッシュ従業者は昼間人口・来街者ではない
都市モニタリングシート2024年市町村東京都23区は特別区部へ統合
道路交通センサス2021年度道路区間観測値と推定値が混在
駅別乗降客数2024年度事業者間で算出基準が不統一
地価公示2026年標準地点店舗賃料・実売価格ではない

数値は、異なる年の公的データを現在の店舗へ重ねたものです。過去の出店判断へ現在値を逆投影しません。取得日、加工法、欠損理由、単位はデータ辞書へまとめ、集計値の再現に必要なスクリプトと検査結果を保存しています。

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この記事を書いた人

▷一級建築士,建築基準適合判定資格者(建築主事試験),宅地建物取引士,建築物省エネ適合性判定員など
▷建築関連法規や都市計画法規などに関することや、都市計画・公共交通・住宅政策などが得意分野です。
▷コンサルタント依頼はこちらから(https://visasq.co.jp)

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