「東北地方で、仙台に次ぐ都市はどこなのか」
この話題は、インターネット上で繰り返し取り上げられてきました。郡山、盛岡、いわき、秋田、山形、福島。人口を調べれば簡単に決められそうですが、実際には、どの都市を第2位とするかは「都市をどの範囲で捉えるか」「都市の何を比較するか」によって変わります。
例えば、いわき市は行政区域の人口で見ると仙台市、郡山市に次ぐ規模ですが、いわき市は大きな都市圏を抱えていない一方、郡山市の周囲には須賀川市や本宮市、三春町などがあり、通勤や買い物、企業活動は市境を越えてつながっています。盛岡市と滝沢市、山形市と天童市も同じです。
市町村の境界は行政サービスを行ううえで重要ですが、人の暮らしや経済活動が市境で途切れるわけではありません。
当ブログ記事では、2022年に、都市計画区域の人口と経済規模を用いて「東北第2位は、郡山市・須賀川市・鏡石町で構成される県中都市計画区域ではないか」とする旧記事を書きました。当時の問題意識は現在も変わっていません。ただし、その後に2020年国勢調査を基にした都市雇用圏が更新され、経済センサスや都市計画現況調査も新しくなりました。
そこで今回は、以前の結論をそのまま更新するのではなく、都市の定義から改めて考えてみます。
比較するのは、行政区域、都市計画区域、都市雇用圏の3つです。対象は東北6県の指定都市・中核市に加え、2020年国勢調査で人口10万人以上だった市と、その市を中心とする都市圏です。人口だけでなく、人口集中地区、事業所、従業者、産業構成、通勤流動、交通手段、人口の増減、観光・宿泊などを重ね、何を基準にすると、どの都市が第2位になるのかを確認していきます。
加えて、比較対象となる都市圏は、同じ縮尺・同じ凡例の地図で紹介していきます。
青森と八戸、盛岡と一関、秋田、山形と庄内、福島県内の各都市では、市街地の形も、産業も、雪や気温も、周辺の観光地との関係も異なります。本稿と次編の2本で、東北の主要都市がどこにあり、どのような仕事と暮らしがあり、旅行するなら何に注意したいのかまで把握できる構成を目指してみます。
最初に結論を少しだけ示すと、一つの都市がすべての指標で第2位になるわけではありません。
- 2025年国勢調査人口速報の行政区域人口では郡山市
- 令和7年都市計画現況調査の都市計画区域人口では県中都市計画区域
- 2020年都市雇用圏人口では郡山圏
- 事業所で働く人の数や産業の厚みでは郡山圏と山形圏
- 公共交通の利用や人口減少の緩やかさを含む総合評価では盛岡圏
というように、評価する都市機能によって結果が分かれます。なお、2020年の行政区域人口ではいわき市が仙台市に次ぐ第2位でしたが、2025年速報では郡山市が逆転しました。「行政人口ではいわき」というこれまでの常識も、最新値では書き換える必要があります。
これは順位が決められないという意味ではありません。むしろ、「どの意味で第2位なのか」を明示すれば、都市の個性が見えやすくなります。
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「都市」と「市町村」の区別
日常会話では、「都市」と「市」をほぼ同じ意味で使うことがあります。しかし、統計や都市行政の視座に立って考えると、この二つは分けた方が分かりやすくなります。
市町村は、行政サービスを提供するための区域です。都市は、人が居住し、働き、買い物や通院、通学などを行う空間です。両者が一致する都市もありますが、市街地が市境を越えて連続する場合や、一つの市の中に離れた市街地が複数ある場合もあります。確かに、明治時代発足時の自治体の単位は都市の単位に近いものがありました。しかし、交通網の発達に伴う流動の拡大により、次第に行政区域は都市の単位ではなくなっていきました。
たとえば、いわき市は1966年に5市4町5村が合併して成立しています。一般的に面積が広大であることが知られており、平、小名浜、常磐、勿来など複数の拠点が分散しています。行政区域は一つでも、市街地の構造は単一中心型ではありません。
これに対して仙台市や郡山市は、周辺市町村から通勤者を受け入れる中心都市です。山形市と天童市、盛岡市と滝沢市のように、市境を越えて市街地や生活圏がつながる都市もあります。
この違いを無視して市町村人口だけを並べると、合併の経緯や行政区域の広さを都市の規模と取り違える可能性があります。反対に、行政人口をまったく無意味とするのも適切ではありません。自治体が提供する行政サービスや財政規模、公共施設の配置を考えるとき、行政区域は重要な単位だからです。
要するに、行政区域は「間違った都市の定義」ではなく、複数ある都市の見方の一つであると捉えておく必要があります。
本記事で用いる三つの都市範囲
行政区域
行政区域は、市町村の境界で都市を区切る方法です。人口、事業所、税収などの統計を入手しやすく、自治体間の比較にも向いています。
一方で、市町村合併の影響を強く受けます。広い市域に複数の市街地を含む都市と、中心市の周辺が別自治体になっている都市を同じ条件で比較するには限界があります。
都市計画区域
都市計画区域とは、都市計画法に基づき、一体の都市として総合的に整備・開発・保全する必要がある区域です。
市町村の全域が指定されるとは限りません。また、一つの都市計画区域が複数の市町村にまたがることもあります。郡山市、須賀川市、鏡石町の一部は県中都市計画区域、盛岡市、滝沢市、矢巾町の一部は盛岡広域都市計画区域に含まれます。
土地利用や市街地形成を比較するには有効ですが、区域指定は政策判断を含むため、日常的な生活圏や通勤圏と完全に一致するわけではありません。
都市雇用圏
都市雇用圏(Urban Employment Area、UEA)は、通勤関係を用いて機能的な都市圏を設定する方法です。
東京大学空間情報科学研究センターの2020年版では、DID人口によって中心都市を設定し、中心都市への通勤率が10%以上の市町村を郊外都市として都市圏を構成します。DIDとは人口集中地区のことで、国勢調査の基本単位区などを基に、人口密度が高く連続した市街地を捉える指標です。多くの都市研究において引用されている論文の一つでもあります。
都市雇用圏は、人がどこに住み、どこへ働きに出ているかを反映します。そのため、経済活動の広がりを見るうえでは、行政区域より実態に近い場合があります。
ただし、通勤率10%という基準も一つの分析上の定義です。買い物、通院、観光、物流など、通勤以外の結びつきをすべて表すものではありません。
「総合順位」を先に作らない比較方法
都市ランキングでは、複数の指標を点数化し、総合順位を出す方法がよく使われます。しかし、重み付けによって結果を調整できてしまうため、今回は先に指標別の結果を示します。
比較する部門は、次の6つです。
1. 人口と都市圏の規模 2. 市街地の集積と密度 3. 事業所・雇用・産業構成 4. 交通と暮らしやすさ 5. 成長性と持続性 6. 交流と観光
その後で総合順位を作ります。ただし、仙台は規模が突出しているため、東北最大の基準都市として別に示します。第2位以下の候補群について各指標を0〜100点に換算し、規模22点、経済・雇用22点、集積・中心性18点、交通・暮らし14点、成長・持続性14点、交流・観光10点で評価します。
ここでいう観光は、単純な観光客数だけを意味しません。観光地点を訪れた人数、宿泊につながった人数、外国人宿泊者、宿泊施設と関連雇用、鉄道や空港からの訪れやすさを分けて確認します。「観光人口」という便利な一語でまとめると、日帰り客と宿泊客、延べ人数と実人数が混在してしまうためです。
さらに、規模を重視した場合、経済を重視した場合、暮らしを重視した場合の感度分析を行います。配点を変えたときにも上位が維持されるのかを確認するためです。ランキングはエンターテインメントとして楽しめるものにしつつ、計算方法と使用データは追試できるように公開します。
本評価は都市の優劣を公的に判定するものではなく、「都市の規模・働く場・中心性・移動選択肢・人口変化・来訪経済」を同じ土俵で比較するための分析モデルです。
郡山圏と山形圏が接近する都市雇用圏人口
2020年版都市雇用圏で東北の主要都市を比較すると、仙台圏は162万1,242人で突出しています。第2位は郡山圏の52万7,382人、第3位は山形圏の51万6,884人、第4位は盛岡圏の45万7,552人です。
郡山と山形の差は1万498人、率にすると約2%です。
旧記事を書いた時点では、県中都市計画区域の人口が盛岡広域や山形広域を上回ることから、郡山を中心とする都市圏が第2位と考えました。今回の都市雇用圏でも郡山が第2位ですが、山形との差は大きくありません。
さらに、従業地で数えた15歳以上就業者数を見ると、山形圏は25万8,423人、郡山圏は25万1,833人です。この指標では山形が郡山を上回ります。
人口規模では郡山、働く場所としての集積では山形。ここで早くも、何を測るかによって第2位が変わりました。
出典:東京大学CSIS『2020年都市雇用圏』
いわゆる「都会っぽさ」だけで考えると、郡山より盛岡を大きく感じる方もいるでしょう。一方、郡山駅の新幹線ホームや国道4号沿道の広がりを見て、郡山を東北の交通・経済拠点と感じる方もいます。
どちらも間違いではありません。盛岡は連続した市街地と公共交通、県都としての中心性が強い都市です。郡山は広い通勤圏、従業者数、製造業と卸売・小売業の厚みを持つ都市です。「駅前の見た目」と「都市圏全体の機能」は、分けて考えた方が良いのです。
出典:東京大学CSIS『2000年・2020年都市雇用圏』
地図に表れる2020年都市雇用圏の形
比較対象の位置と広がりを、QGISで同じ地図に重ねました。青の面が2020年都市雇用圏、濃紺が人口集中地区(DID)、橙色の点が中心市の主要駅です。
仙台圏は宮城県中部に大きく広がり、DIDも仙台市の境界を越えて連続します。一方、郡山圏と山形圏は広い通勤圏を持ちつつ、DIDは複数の拠点に分かれます。盛岡圏は北上川に沿って市街地が縦長に延び、滝沢市、矢巾町へと生活圏がつながります。
いわき圏は、平、小名浜、常磐、勿来など複数のDIDが沿岸に分散します。「駅前が大きいか」という単一中心型の視点だけでは、この都市の形は捉えきれません。
この地図で大事なのは、青の面が「市街地の連続範囲」ではないことです。都市雇用圏は市町村全体を構成単位とするため、山林や農地も含みます。実際に建物や人口が集中する範囲は濃紺のDIDで読み取ります。
2025年に逆転した郡山といわきの行政区域人口
2020年国勢調査では、仙台市に次ぐ行政人口はいわき市の33万2,931人、郡山市は32万7,692人でした。差は5,239人です。
しかし、2025年国勢調査人口速報では、郡山市31万3,125人、いわき市30万6,495人となり、順位が入れ替わりました。郡山の2020年からの減少率は4.45%、いわきは7.94%です。
行政区域で見た東北第2位は、現在の最新速報では郡山市です。
| 順位 | 市 | 2025年人口 | 2020年比 |
|---|---|---|---|
| 1 | 仙台市 | 1,096,951人 | 0.0% |
| 2 | 郡山市 | 313,125人 | -4.4% |
| 3 | いわき市 | 306,495人 | -7.9% |
| 4 | 秋田市 | 293,588人 | -4.6% |
| 5 | 盛岡市 | 278,636人 | -3.8% |
| 6 | 福島市 | 265,803人 | -6.0% |
| 7 | 青森市 | 256,180人 | -6.9% |
| 8 | 山形市 | 235,685人 | -4.8% |
| 9 | 八戸市 | 205,136人 | -8.2% |
| 10 | 弘前市 | 155,952人 | -7.4% |
| 11 | 石巻市 | 128,827人 | -8.1% |
| 12 | 大崎市 | 118,567人 | -6.9% |
| 13 | 鶴岡市 | 113,149人 | -7.5% |
| 14 | 会津若松市 | 109,015人 | -7.1% |
| 15 | 奥州市 | 103,899人 | -8.0% |
| 16 | 一関市 | 101,916人 | -8.9% |
| 17 | 酒田市 | 92,122人 | -8.1% |
出典:総務省統計局『令和7年国勢調査 人口速報集計』
ただし、これは市町村という行政単位の比較です。広域合併を早く経験したいわきと、須賀川市や本宮市など周辺自治体と通勤圏を共有する郡山を、市域人口だけで比べる限界は残ります。
県中が第2位の都市計画区域人口
令和7年都市計画現況調査(2025年3月31日現在)の現在人口では、仙塩広域都市計画区域が144万3,600人で突出します。続くのは県中37万500人、盛岡広域35万5,299人、山形広域33万5,200人、県北31万6,700人、秋田30万8,500人です。
出典:国土交通省『令和7年都市計画現況調査』
| 順位 | 都市計画区域 | 現在人口 | 面積 | 人口密度 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 仙塩広域 | 1,443,600人 | 889.4km² | 1,623人/km² |
| 2 | 県中 | 370,500人 | 371.2km² | 998人/km² |
| 3 | 盛岡広域 | 355,299人 | 567.6km² | 626人/km² |
| 4 | 山形広域 | 335,200人 | 284.7km² | 1,177人/km² |
| 5 | 県北 | 316,700人 | 351.0km² | 902人/km² |
| 6 | 秋田 | 308,500人 | 486.6km² | 634人/km² |
| 7 | いわき | 295,900人 | 376.2km² | 787人/km² |
| 8 | 青森 | 255,300人 | 237.7km² | 1,074人/km² |
| 9 | 八戸 | 209,500人 | 214.3km² | 978人/km² |
| 10 | 弘前広域 | 189,400人 | 289.1km² | 655人/km² |
| 11 | 石巻広域 | 141,999人 | 270.0km² | 526人/km² |
| 12 | 大崎広域 | 129,699人 | 159.3km² | 814人/km² |
| 13 | 会津 | 112,699人 | 190.8km² | 591人/km² |
| 14 | 鶴岡 | 106,500人 | 252.8km² | 421人/km² |
| 15 | 奥州 | 87,600人 | 235.8km² | 372人/km² |
| 16 | 酒田 | 74,800人 | 121.4km² | 616人/km² |
| 17 | 一関 | 58,100人 | 108.3km² | 536人/km² |
出典:国土交通省『令和7年都市計画現況調査』(2025年3月31日現在)
2022年の旧記事で使った指標を最新値に更新しても、都市計画区域人口の第2位は郡山市、須賀川市、鏡石町の各一部で構成される県中都市計画区域です。
ここでは、盛岡広域との差は1万5,201人です。県中の優位は維持されていますが、「圧倒的な差」と呼ぶほどではありません。
都市計画区域は土地利用政策を比べるには有用ですが、通勤圏の全体とは一致しません。例えば山形圏の生活・雇用は東根市、寒河江市、河北町などにも広がりますが、これらのすべてが山形広域都市計画区域に入るわけではありません。
経済・雇用で並ぶ郡山圏と山形圏
下図では、2021年経済センサスの市町村データを、2020年都市雇用圏の構成市町村で合算しています。
仙台圏は6万5,717事業所、76万5,964人で、ここでも別格です。第2集団では、山形圏が2万4,362事業所・22万7,118人、郡山圏が2万3,323事業所・24万2,332人、盛岡圏が2万307事業所・20万5,571人です。
出典:総務省・経済産業省『令和3年経済センサス―活動調査』
出典:経済産業省『2024年経済構造実態調査 製造業事業所調査』参考表。青森圏・弘前圏は秘匿値(X)の自治体を含むため公表値合計。
従業者の総数では郡山圏が山形圏を約1万5,000人上回ります。一方、事業所数は山形圏の方が多く、卸売・小売業の従業者は山形圏4万6,484人、郡山圏5万1,235人で郡山が多いという違いもあります。
製造業従業者は郡山圏4万4,768人、山形圏4万5,353人で、山形圏がわずかに上回ります。山形市だけを見て「行政・商業の都市」と考えると、天童、東根、寒河江などを含む都市圏の産業構造を過小評価します。
情報通信業と学術研究・専門・技術サービス業の従業者を合計すると、盛岡圏は1万186人、郡山圏は9,405人、山形圏は7,154人です。前稿の本文にあった数値は再集計により訂正しました。企業の支店、情報サービス、士業、設計、研究開発などの厚みを見ると、盛岡圏と郡山圏が上位に位置します。
出典:総務省・経済産業省『令和3年経済センサス―活動調査』
経済を比べる際に市町村内総生産(GDP)を主指標にしなかったのは、県ごとに推計方法や公表年がそろわず、六県横断での厳密な比較に注意が必要だからです。今回は全国同一調査である経済センサスを主軸にしました。
中心市の昼夜間人口比率
都市の中心性を見る手がかりの一つが、昼夜間人口比率です。昼間人口を夜間人口で割り、100を超えれば、通勤や通学によって昼間に人が増える都市と読み取れます。
出典:総務省統計局『令和2年国勢調査』
弘前市は106.7、山形市は106.4、会津若松市は105.3、仙台市は105.1です。弘前市は行政人口では上位ではありませんが、大学、医療、商業、行政が集まる津軽地方の中心都市であることが数値に表れています。
反対に、いわき市は98.3、大崎市は97.4、奥州市は96.8です。これは「都市として弱い」という一言で片付けられる結果ではありません。広い市域に複数の雇用拠点がある、隣接都市への通勤がある、居住都市としての性格が強いなど、都市構造を考える入口です。
ただし、昼夜間人口比率には行政区域の取り方が強く影響します。昭和期以降の市町村合併で広い市域を持つ都市では、旧市町村間の通勤が同じ市内の移動として処理され、昼間人口の流入として表れません。いわき市では平、小名浜、常磐、勿来などの拠点間で人が移動しても、市全体の比率では相殺されます。平地区や小名浜地区を独立した都市核として測れれば、中心性の見え方は大きく変わるはずです。
もう一つの注意点は、比率が夜間人口を分母にした相対値であることです。昼間に同じ1万人が流入しても、夜間人口10万人の都市と30万人の都市では上昇幅が異なります。比率が高い都市は必ずしも流入人口の絶対数が最大とは限らず、反対に大都市は多くの人を受け入れていても、分母が大きいため比率が目立たない場合があります。
また、100を下回る都市を直ちに『中心性が弱い』と評価することもできません。工業団地や港湾、医療、商業などの雇用拠点が市内に分散する多核型都市、周辺都市と相互に通勤する都市、住宅地として選ばれる都市では、中心市一つの昼夜間人口比率だけでは機能を捉え切れないためです。本稿ではこの弱点を補うため、都市雇用圏の就業地・居住地就業者比、DID人口比率、従業者数、通勤交通手段を併用しています。昼夜間人口比率は都市の優劣を決める指標ではなく、都市構造を読み始めるための一つの入口として扱うのが適切です。
また、人口集中地区の人口も中心性を考える上で重要です。ただし、DIDには「都心の賑わい」を直接測る性格はありません。人口密度の高い居住地が連続しているかを示すもので、商業店舗の売上げや歩行者量とは別の指標です。
公共交通で暮らせる可能性
国勢調査には、通勤・通学時に使う交通手段の調査があります。ここでは交通手段不詳を除き、鉄道・電車または乗合バスを明示する回答を「公共交通」として集計しました。
出典:総務省統計局『令和2年国勢調査』
仙台圏の公共交通利用率は25.1%、自家用車のみは50.7%です。第2集団で公共交通利用率が最も高いのは盛岡圏の9.7%、続いて福島圏8.7%、青森圏8.1%です。
自家用車のみの割合は、酒田圏85.7%、鶴岡圏82.8%、いわき圏80.4%です。この指標は「自動車が便利か」を否定するものではありません。自動車が運転できなくなったとき、生活選択肢がどの程度残るかを考える数値です。
盛岡圏が総合評価で上位に来た大きな理由の一つが、この交通部門です。都市圏人口や従業者数では郡山・山形に届きません。しかし、中心市の集積、鉄道・バスの利用、徒歩・自転車の比率を合わせると、生活の選択肢が比較的残っています。
出典:国土交通省『国土数値情報 駅別乗降客数(2024年度)』、東京大学CSIS『2020年都市雇用圏』。非公表駅があるため参考指標。
東京駅・仙台駅からの時間距離
都市のアクセス性は、地図上の直線距離では分かりません。新幹線の停車パターン、在来線への乗り換え、高速バスの有無によって、時間距離が大きく変わります。
2026年8月ダイヤの代表例では、東京駅から仙台駅は約1時間36分、盛岡駅は2時間17分、八戸駅は2時間52分、新青森駅は3時間21分です。秋田駅は代表列車で3時間49分、山形駅は2時間21分、いわき駅は特急ひたちで2時間33分です。
仙台を起点にすると、盛岡39分、福島約25分、郡山約40分、石巻は仙石東北ラインの代表列車で55分です。いわきは特急ひたちで2時間10分、庄内は高速バスで鶴岡がおおよそ3時間、酒田が3時間50分程度です。
これらは「最短記録」ではなく、列車と乗継の代表例を丸めた値です。実際の旅行では、運行日、列車種別、乗換待ち、道路状況を最新時刻表で確認してください。
東北の基幹軸は新幹線により南北に強く、東西の移動は都市ごとの条件差が大きい。この構造が、企業の拠点選択にも、観光の周遊にも影響します。
全都市圏で続く人口減少
今回、2020年都市雇用圏の構成市町村を固定し、2025年国勢調査人口速報を合算しました。その結果、14都市圏はすべて人口減でした。
出典:2020年・2025年国勢調査。2025年は人口速報集計。
出典:2020年・2025年国勢調査。緑は増加、赤は減少。
減少率が最も小さいのは仙台圏の0.98%、続いて盛岡圏4.31%、郡山圏4.93%、山形圏5.38%、秋田圏5.63%です。一方、酒田圏は8.58%、八戸圏は8.14%、いわき圏は8.00%減少しました。
この結果から「成長都市圏」と呼べる対象はありません。言えるのは、人口減少が相対的に緩やかな都市圏があるということまでです。
仙台市の行政人口は2020年から2025年にかけてほぼ横ばいですが、都市圏全体では約1万5,800人減少しました。中心市への集中と郊外部の減少が同時に起き得ることを示しています。
都市圏で捉える観光・来訪経済
観光庁の宿泊旅行統計では、宮城県南部の2025年延べ宿泊者数は852万3,340人泊、外国人延べ宿泊者数は96万1,720人泊で、東北の広域観光地域の中で突出します。山形県南部は341万2,830人泊、福島県南部は424万6,590人泊、会津地域は269万2,940人泊です。
ただし、観光庁の広域130区分は都市と一対一で対応しません。仙台を含む宮城南部と、仙台都市雇用圏を同じものとして得点化することはできません。
そこで総合評価では、全国同一条件で取得できる経済センサスから、宿泊・飲食サービス業と生活関連サービス・娯楽業の従業者数、人口当たり従業者数、人口当たり事業所数を「交流・観光の受け皿」の代理指標にしました。
出典:総務省・経済産業省『令和3年経済センサス―活動調査』
これは観光客数のランキングではありません。観光と日常消費の両方に支えられる産業の厚みを見るものです。正確な観光比較には、延べ宿泊者数、日帰り客、外国人宿泊、平均滞在日数、観光消費額を分けて読む必要があります。
総合順位と東北第2位の盛岡圏
指標別の結果を示した上で、最後に総合評価を行います。仙台圏は東北最大の基準都市として別枠にし、そのほかの13都市圏の中で各指標を0〜100のパーセンタイル順位に変換しました。同値は平均順位です。
配点は、規模22点、経済・雇用22点、集積・中心性18点、交通・暮らし14点、成長・持続性14点、交流・観光10点です。
UrbanPoleShift作成。配点と算定方法は本文・監査表を参照。
| 順位 | 都市圏 | 規模/22 | 経済/22 | 中心性/18 | 交通/14 | 成長/14 | 交流/10 | 総合/100 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 盛岡都市圏 | 18.3 | 18.1 | 14.5 | 13.4 | 14.0 | 8.0 | 86.3 |
| 2 | 山形都市圏 | 18.7 | 20.0 | 15.0 | 4.6 | 11.3 | 8.5 | 78.1 |
| 3 | 郡山都市圏 | 21.0 | 21.0 | 10.5 | 6.1 | 12.8 | 5.3 | 76.8 |
| 4 | 秋田都市圏 | 16.7 | 13.6 | 11.5 | 10.5 | 10.8 | 6.5 | 69.6 |
| 5 | 福島都市圏 | 16.0 | 15.5 | 5.5 | 11.2 | 9.3 | 3.5 | 61.0 |
UrbanPoleShift作成。19指標を13都市圏内のパーセンタイル順位へ変換し、部門配点を乗じた合計。
1位は盛岡圏86.3点、2位は山形圏78.1点、3位は郡山圏76.8点、4位は秋田圏69.6点、5位は福島圏61.0点となりました。ここで重要なのは、総合点を都市の価値そのものと受け取らず、各都市圏がどの部門で得点し、どこに弱点があるのかを読むことです。
盛岡圏は、都市圏人口では郡山・山形に届きません。製造品出荷額等も3,744億円で、郡山圏や山形圏より小さい値です。それでも、中心市の昼夜間人口比率、DIDへの集積、公共交通・徒歩・自転車の利用、2020〜2025年の人口減少の緩やかさ、宿泊・飲食・娯楽関連の雇用で幅広く上位に入りました。特定産業の規模ではなく、県都機能、都市のまとまり、移動手段、来訪の受け皿の間に大きな穴がないことが、総合首位の理由です。
山形圏は、都市圏人口51万6,884人、製造業従業者4万5,353人、製造品出荷額等1兆3,671億円という生産基盤を持ち、中心市の昼夜間人口比率も高い都市圏です。行政人口だけを見ると盛岡市や郡山市より小さく見えますが、天童、東根、寒河江などを含む広い雇用圏で捉えると、製造・物流・行政・観光の機能が分担されています。公共交通利用率の低さと自動車依存の高さが、総合点を押し下げました。
郡山圏は、都市圏人口52万7,382人で仙台圏に次ぎ、製造品出荷額等も1兆5,142億円で第2位です。従業者数、事業所数、専門サービス、製造業、東京・仙台への時間距離を合わせると、東北第2位の経済圏と呼ぶ根拠は十分にあります。一方、経済活動が駅前だけでなく国道沿道、工業団地、周辺市町へ広がるため、DIDへの集積や公共交通利用では盛岡圏ほど得点できません。これは経済力の弱さではなく、都市機能の分散という構造の違いです。
工業力を補助線として見ると、いわき圏も見落とせません。製造品出荷額等は1兆979億円で、今回比較した都市圏では仙台、郡山、山形に次ぐ規模です。総合点は37.2点ですが、これは工業都市としての重要性が低いという意味ではありません。広い市域、多核型の市街地、自動車依存、人口減少が総合評価では不利に働いた結果であり、港湾・製造・エネルギー・観光を担う産業都市としては別の強さがあります。
つまり、今回の定義で『東北第2位の都市』を一つ選ぶなら盛岡圏です。ただし、人口と工業・雇用を重視すれば郡山圏、広域的な製造・雇用の厚みでは山形圏、工業生産に着目すればいわき圏も有力になります。順位を一つに固定するより、『何の第2位か』を添えて読む方が、各都市圏の実像に近づきます。
配点変更後も維持された盛岡圏の首位
総合ランキングの弱点は、配点に作成者の判断が入ることです。そのため、基本配点のほかに、規模重視、経済重視、暮らし重視の3シナリオで感度分析を行いました。
- 規模重視:盛岡、郡山、山形
- 経済重視:盛岡、山形、郡山
- 暮らし重視:盛岡、郡山、山形
上位3圏の並びは変わりますが、盛岡圏はすべてのシナリオで1位に残りました。
基本配点
- 盛岡都市圏86.3点
- 山形都市圏78.1点
- 郡山都市圏76.8点
規模重視
- 盛岡都市圏85.4点
- 郡山都市圏82.2点
- 山形都市圏80.5点
経済重視
- 盛岡都市圏85.0点
- 山形都市圏81.1点
- 郡山都市圏78.2点
暮らし重視
- 盛岡都市圏88.9点
- 郡山都市圏71.9点
- 山形都市圏71.7点
UrbanPoleShift作成
一方、不動産価格、空室率、財政力、大学・高次医療、空港利用、商業販売額などの指標を加えれば、点差は変動します。ランキングは永久不変の真理ではなく、今回の定義と公表データに基づく結果です。
治安を総合点から除いた理由
暮らしやすさを考えれば、治安も無視できません。ただし、都道府県別の刑法犯認知件数をそのまま都市圏に割り当てると、評価単位が一致しません。市区町村別オープンデータもありますが、警察署管内と市町村境界のずれ、犯罪類型、昼間人口の影響を調整する必要があります。無理に一つの数値にするより、粗暴犯、窃盗犯、自転車盗、交通事故などを市区町村別・昼間人口当たりで再集計するべきです。今回は比較可能性を優先し、総合点から外しました。
都市の個性を示す「何の第2位か」
最新統計で更新した結論を、最後に整理します。
- 行政区域人口の第2位:郡山市(2025年速報)
- 都市計画区域人口の第2位:県中都市計画区域
- 都市雇用圏人口の第2位:郡山圏
- 都市圏の従業者数の第2位:郡山圏
- 中心市の昼間人口集中が最も高い候補:弘前市・山形市
- 総合評価の第2位(仙台に次ぐ都市圏):盛岡圏
2022年の旧記事では、都市計画区域の人口とGDPを主に使い、県中都市計画区域を東北第2位と評価しました。その結論は「都市計画区域人口」という条件では現在も有効です。
一方、通勤圏、雇用、市街地の集積、公共交通、人口の持続性まで広げると、盛岡圏が最もバランスの良い第2都市圏となりました。この結果は旧記事の否定ではありません。問いの定義を変えれば、答えも変わるということです。
「東北第2位」を一つの席として奪い合うより、郡山の規模と交通、山形の雇用と産業、盛岡の集積と公共交通、秋田の連続した市街地、弘前の高い中心性、いわきの多核型の産業都市構造を読み取る方が、東北の都市をより深く理解できます。
次編では、比較対象の17都市を青森からいわきまで順にたどり、都市の形、産業、公共交通、東京・仙台からのアクセス、気候、観光の特徴を図鑑形式で紹介します。
使用データと計算上の留意点
主な一次資料は次のとおりです。
- 総務省統計局「令和2年国勢調査」
- 総務省統計局「令和7年国勢調査人口速報集計」
- 総務省・経済産業省「令和3年経済センサス―活動調査」
- 経済産業省「2024年経済構造実態調査 製造業事業所調査」(製造品出荷額等は2023年実績)
- 国土交通省「令和7年都市計画現況調査(2025年3月31日現在)」
- 国土交通省「国土数値情報」行政区域、人口集中地区
- 東京大学空間情報科学研究センター「2020年都市雇用圏」
- 観光庁「宿泊旅行統計調査」
- 気象庁「1991〜2020年平年値」
- JR東日本「2026年8月時刻表」、庄内交通公式時刻表
都市雇用圏の2025年人口は、2020年の構成市町村を固定して再集計したものです。2025年の通勤流動に基づく新しい都市雇用圏ではありません。
また、大崎市、奥州市、一関市は比較対象の17市に含みますが、CSISの2020年都市雇用圏の中心都市に該当しないため、都市雇用圏の総合採点からは外しました。
計算表は、指標の定義、元数値、部門別得点、配点の感度分析を含む形で保存しています。ランキングだけを独り歩きさせず、何を数え、何を数えていないかを確認できることを優先しました。
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