この記事では、2025年8月29日に閣議決定、同年9月3日(火)に公布された『建築基準法施行令の一部を改正する政令』に関して、何が変わり、建築主・建築士どのようなメリットをもたらすものなのか、その概要を解説します。
改正の背景
改正の背景は、2020年代前半から続く国の戦略の一つである「脱炭素社会の実現」にあります。
国では、2050年までのカーボンニュートラルの実現を目指しています。このため、温室効果ガスの吸収効果や貯蔵効果を有する”木材”利用の促進を図るために本改正が実施されます。
今回の改正では、木材利用の促進にあたり、これまで使い難いとされてきた規定・基準(内装制限、排煙等の防火関係規制)に関して見直しが実施されます。今年4月1日には令和4年改正法の最終施行があり、大変な思いをしている建築士の方もいると思いますが、今回は緩和規定となりますので朗報に近いです。
なお、今回の改正は、法律ではなく、大臣の意思(総理を含む全閣僚による決定)で変更可能な施行令が改正されます。
※従来、国会を通さないとならなかった法文については、近年の法改正により、技術的な規定を法律から施行令に組み込む措置が行われてきたため、今回のように施行令による改正により対応可能になったといった感じです。
加えて、これまでの合理化改正にあたっての代替措置の多くが「告示」に規定されることに注意しておく必要があります。
改正の概要
改正のポイントは大きく8つあります。
- 【施行令第112条第8項、同条第9項、同条第11項、同条第14項】防火区画等に係る室内の内装制限の見直し
- 【施行令第114条第3項第三号】小屋裏隔壁に係る制限の緩和
- 【施行令第116条の2第1項第二号】無窓居室の判定基準の見直し
- 【施行令第126条の2第1項】防煙壁として扱うことのできる対象の拡大
- 【施行令第126条の3第1項第三号】自然排煙口に係る建築材料規制の緩和
- 【施行令第128条の2第1〜3項】避難及び消火上必要な敷地内の通路の見直し
- 【施行令第137条】既存の建築物への制限の緩和
- 【施行令第129条の3第1項】建築基準法の規制対象とするエレベーター、小荷物専用昇降機の範囲の見直し
1.についての詳細は告示で定められる予定です。
特に、竪穴区画の緩和措置(準ずる措置)が設けられる予定となっているため、木造の場合、そこまで市場的に使うケースは多くはないと思いますが、木造準耐火建築物以上で竪穴区画が要求される3階以上の建物については朗報かもしれません。どのような緩和措置が設けられるかについては、告示が示され次第、参考までに記事にしてみたいと思います。
2.についての詳細についても告示で示される予定です。
建築面積300m2超は、準耐火構造以上の小屋裏隔壁(もしくは天井でのファイヤーカット)の設置が必要となりますが、これに関して、告示で示す基準に適合する建築物(内装の仕上げ、排煙設備、避難上の支障等に関しての基準)であれば、不要になるようです。木造300m2は中規模の木造建築物(その他構造)でもよくあるパータンなので使う可能性はありそうです。
3.についての詳細についても告示で示される予定です。
こちらの規定は、排煙無窓解除検討として多くの建築士が気にする規定で、よく調べられるものです。簡単にいえば居室の1/50の開放窓がなければ排煙設備要求が生じるものです。基本的にどのような建物でも必ず1/50検討を行う必要があります。
こちらの規定に関して、”時に生ずる煙を有効に排出することができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いる給気口及び排気口を有する場合にあつては、給気口の開口面積、排気口の高さ及び居室の床面積に応じて国土交通大臣が定める方法により算出した割合”について緩和措置が設けられる予定です。排煙口・給気口の設置位置及び性能に応じた面積で良いとされるため、1/50足りない場合に代替措置として利用できる可能性が高いです。特に一般的に使用される規定なので告示が分かり次第、記事にしてみたいと思います。
併せて排煙告示も見直しが行われます。おそらく、この排煙告示緩和がもっとも恩恵を受けるのではないかと思います。


4及び5.についての詳細についても告示で示される予定です。
こちらの規定は、排煙区画に不可欠な防煙壁(垂れ壁)の規定ですが、新しく、準耐火構造(高さが一定以上のもの)が追加されます。加えて、梁についても防煙壁として明確化されます。梁に関しては一部の特定行政庁において「梁であって壁じゃない!」って規定していたことに対する合理化かと思いますが、準耐火構造の方に関しては、高さがどのような規定になるのかによって汎用性が変わりそうです。あわせて、排煙口の構造に関しても緩和されるため、告示が分かり次第、記事にしてみたいと思います。
※内装制限の無窓解除(施行令第128条の3の2第一号)についても同様に告示規定が設けられる予定です。
6.についての詳細についても告示で示される予定です。
こちらの規定は延べ面積が1,000m2超の大規模木造建築物に対して敷地内通路を設けなさいとするものです。告示により緩和される予定です。寺社仏閣や木造公共建築物など以外では一般的に使う規定ではないので、多くの建築士にはあまり関連しないかと思います。
7.については、既存不適格建築物の制限の緩和に関して、大規模の修繕・模様替えに対する緩和措置に屋根・外壁・軒裏が追加されます。従来は火炎遮断壁等の設置が必要でしたが、既存不適格であれば現行基準適用(遡及)をしなくても良いとなります。個人的な感覚として、22条指定は多くの都市で昭和中期頃までには指定済みのため既存不適格建築物が多いとは考えにくいです。このため、一応合理化しておこうという国の意思かなと思っています。
8.については、建築基準法の適用を受ける昇降機から、”労働安全衛生法施行令第1条第九号に規定する簡易リフト”が除かれることとなります。これに関しては、私自身が簡易リフト等の設置に携わったことがないのでわからないのですが、、業界から要望があったのかなと思います。他法令で基準チェックしていれば基準法は適用除外ということになります。
この他、避難階段・特別避難階段規定(施行令第123条第1項第三号、同条第3項第四号)についても緩和措置が設けられます。
▶︎閣議決定時のURLリンク(国土交通省)はこちら。https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_001079.html
改正施行令の施行日
改正日の施行日は、2025年11月1日(土)からです。
この日以降着工する建築物について適用されます。なお、施行令の運用に不可欠な国土交通大臣告示については、施行日前には公布される予定かと思います。通常、告示公布前には、パブリックコメントが実施されるため遅くても10月中には概要が分かるかもしれません。

