【地方都市の洪水被害対策】洪水被害から考える正義論の対立

*タイトル写真:那珂川下流浸水想定区域(計画規模)国土交通省

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それでは、今回の話です。

洪水被害は繰り返す

みなさん令和元年東日本台風被害は覚えてますか?水戸からいわき、宮城の広範囲において大きな被害をもたらした洪水被害。このあたりの地域で大きな洪水被害が生じたのは約30年ぶりとなります。

いわき市の場合には、平成元年(1989)8月に発生した夏井川の洪水被害により1,098戸の浸水被害、総額51億円の被害をもたらしています。一方で、水戸市周辺では、昭和63年(1988年)8月の台風10号により那珂川が氾濫し、床上浸水4,864戸が発生しています。

*出典:夏井川河川整備計画(福島県)、那珂川河川整備方針(国交省)

この前にも何度か洪水被害は発生しているのですが、市街地の拡大が大きく発生する前のことで、当時は、霞堤(簡単に言うと、堤防が無い区間を設けることで一定の浸水エリアを設け、そこに水を逃がし市街地の洪水被害を軽減する)を中心とした治水でした。

現在のように、連続堤(現在の堤防)が主流となっている状況とは異なります。
連続している=水の逃げ道がない。 よって、海以外に水の逃げ道なしです。

その影響を大きく受けてしまったのが今回の令和元年東日本台風被害です。

約30年ぶりに発生した洪水被害

いわき市では、夏井川水系が氾濫し、4,034棟(住宅)の床上浸水が発生、水戸市周辺7市町では、59棟の床上浸水544棟の床下浸水が発生しています。

特に夏井川水系では顕著だった特徴として、計画規模降雨(70年に一度)による浸水想定エリアと浸水エリアがほぼ一致しています。つまり、計画どおり浸水したということです。

少し視点を変えると、中心市街地全体にまで浸水被害が及んでいる状態が異常でもあると言えます。

ちょっと厳しいことを言うと、市街地を拡大させ過ぎた結果であり、自家用車を前提した都市づくりが及ぼした結果です。

ですので、旧市街地(江戸時代から昭和初期頃までの市街地)と低地につくられた新市街地との間において、対立が生じる可能性があると思っています。

その理由として、旧市街地の居住者としては、以前は霞堤による守られていた市街地が、低地に拡大した市街地によって旧市街地の洪水被害のリスクが高まったからです。

*本来、都市計画では浸水被害の恐れのある区域は市街化区域に設定することは望ましくないとされていますが、人口・世帯数増加に伴い郊外への開発を認めざるを得ない状況(当時は、郊外に一戸建てが憧れでしたし、今もですが新築住宅建築が経済を支えています)

自家用車の普及と郊外への開発進行による戸建て住宅建築によって地方都市は経済成長を遂げてきたこともあるため、都市全体で見れば、市街地拡大の良し悪しを一概に判断できないです。

そのため、互いの正義論がぶつかる要因になると思うのです。

・・・とはいえですが、地球環境から考えれば市街地拡大は”罪”ですけどね。
(個人的には、都市の保水力を考慮すれば、浸水被害の恐れのある低地の市街地はリスク軽減するか縁辺部から閉じていく必要がある)


では、話を戻します。

市街地拡大によりアスファルトとコンクリートだらけになった都市の保水力が低下、地方都市の財政力も悪化している中、堤防のみを嵩上げだけしているわけにもいかない状況にあります。

では、どこかでリスクを調整するのか、つまり、ある程度のリスクを受け入れる必要性が出てきます。

リスクで都市居住者全体で受け止めるのか、一部の人達が受け止めるのか、です。

これからの治水の動きと正義論

国では、今年になって特定都市河川法の改正を行っており、流域治水に大きくかじきりしています。

流域治水とは、マクロ的な部分的対処療法ではなく、河川流域全体でリスクを分散しながら洪水被害の軽減を図る治水対策のことです。つまり、どこかでリスク負担しなければなりません。

その場合に、行政や銀行、医療といった重要な施設が集積する旧市街地にリスクを持たせるようなことは現実的ではないとする考えが生じると思うのですが、実際は、昭和初期頃まで霞堤としての機能を発揮してきたエリアには既に居住されている方もいるため、当然ですが、人命や財産を守るという正義のもと、容易に理解を得ることはできないです。

こちらの記事が分かりやすいので良かったらどうぞ。
▷▷「なぜ自分たちが犠牲に?」霞堤と集団移転、治水対策に揺れる集落(朝日新聞)
▷▷「流域治水に武田信玄考案の霞堤「地域での合意形成必要」」(西日本新聞)

旧市街地である中心市街地を守るために、他を犠牲することはできないとする考えは最もであるものの、都市全体でみれば、都市の重要な機能が集積している地域の復旧に時間を要することになればどうでしょうか?

・・・結果的に大きな経済被害をもたらす結果になります。

こうして見たとき、最も大切なことは対話をし理解をもとめていくことになるとは思います。

ですがです。権利の主張が大きくなった日本において、個々の財産以上に大切なものは何かという視点に気づけない可能性が高く、いつまでたっても正義論のぶつかり合い、また、時間が経過すれば同様の被害をもたらすのではないかと思います。

「わたし達が犠牲になる」という考えと「わたし達が都市を救った」という思考の転換、ものの見方の転換が重要ではないでしょうか。

当然、移転が必要な場合には行政や民間が支援する必要があると思いますし、何より市街地を救う方々に対し敬う気持ちが大切だと思います。

簡単に治水事業を進められないものの、間違いなく洪水被害については短期スパンで発生し、温暖化による影響により降雨量が増加していく予測結果が国から出ています。ですので、事業者や住民の皆さんはリスク管理だけはしっかりやってください。

ということで以上になります。これからの都市のあり方を考える上での参考になりましたら幸いです。

補足:洪水予測エリアにおける土地取引

なお、水防法にもとづく、河川洪水マップ(ハザードマップ)の浸水想定区域は都道府県又は国が公表を行っております。インターネット上で「〇〇川 浸水想定区域」と検索すると計画規模降雨と想定最大規模降雨のマップが掲載されています。

計画規模降雨は頻度の高い洪水被害(50~100年1回確率)、想定最大規模降雨は1000年1回確率となり、土地取得の場合に気をつけなければならないのは計画規模降雨です。

この計画規模降雨によるハザードエリアで浸水エリアが3mを超える(2階部分まで浸水)ようなエリアでの建築はリスクが高いですので、できる限り0.5m未満の区域を選択するようにしてみてください。