この記事では、建築物の断熱性能について国土交通省が定める地域区分で茨城県県央・県北地域で唯一『6地域』である日立市は、同じ6地域である東京都と断熱性能は同じで良いのか?といった疑問に分かりやすく答えていきたいと思います。
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東京と日立は同じ地域区分
建築物物に求める断熱性能については、日本国内で夏と冬の気温が地域によって大きく異なることから地域区分ごとに異なる基準値が定められています。
この地域区分で日立市は6地域となります。周辺市村は5地域(*値が大きいほど温暖な地域)です。
ちなみに、この法律(建築物省エネ法)で定められる基準値(省エネ基準値)は、2025年4月からはほぼ全ての建築物で一律に『断熱等性能等級4、一次エネルギー消費量等級4』に適合させる必要があります。
断熱性能を上げれば魔法瓶のように温まりやすく冷めにくくなるため冷暖房費を節約することができる上に、冬に亡くなることが多いですが、急激な温度変化によって血圧が乱高下したり脈拍が変動するヒートショックを防ぐこともできます。
最近の注文住宅ですとZEH水準(断熱等性能等級5)とする住宅が増えてきています。確かに省エネ基準値に比べれば冬の室内は暖かいですが、Tシャツ1枚で暮らせるような超快適な断熱性能ではないです。※等級7とする必要があります。
なお、賃貸住宅では、積水ハウスが提供する賃貸住宅のシャーメゾンで2022年4月からランクが1つ上のZEHである「断熱等性能等級5」と「一次エネルギー消費量等級6」の仕様を標準化しており、賃貸住宅業界でも省エネ基準値超とするのが一般的になりつつあるように思います。*賃貸住宅でもZEH以上としているところの方が快適に暮らせるのでおすすめしたいです。
話を本題に戻しまして、東京と日立市ですが、建築物省エネ法における地域区分が同じです。
こちらの図をご覧ください。令和3年4月から適用されている省エネの地域区分となります。
県央・県北地域の中にポツンと日立市だけ6地域となっています。
つまり、求められる断熱性能が東京と同じということ。
なお、少しだけ専門的な視点でお話しすると、6地域は外皮平均熱貫流率は5地域の水戸で同じで、冷房期の平均日射熱取得率の基準値が5地域の水戸と異なり若干低く設定されています。
地域区分が同じですと『そんなに気候的に同じ!?』と思いますよね。
気象庁のデータによると、次のようになります。参考までに水戸市も掲載しておきます。
日立市 | 水戸市 | 東京23区 | |
---|---|---|---|
1月平均気温℃(1991~2020) | 4.6 | 3.3 | 5.4 |
1月最低気温℃(1991~2020) | 0.2 | -1.8 | 1.2 |
8月平均気温℃(1991~2020) | 25.0 | 25.6 | 26.9 |
8月最高気温℃(1991~2020) | 28.5 | 30.0 | 31.3 |
年間日照時間h(1991~2020) | 2,046.8 | 2,000.8 | 1,926.7 |
ご覧いただくと、日立市は近隣の水戸市よりも東京都に気候が近く、かつ夏季は比較的涼しいことが分かります。日立市の背後の阿武隈高地、東側に面する太平洋のおかげで寒暖の差が小さいのが特徴的です。
*日立市の気候と全く類似しているのがいわき市(小名浜)です。よかったらこちらの記事も読んで頂けますと嬉しいです。
東京都と日立市では気候が異なる
以上から日立市と東京都では気候が若干異なることが分かります。
特に夏場の平均気温は2℃近く違うので、日立市の方が冷房使用量は少なく済みますし、一方で冬季は1℃近く日立市が寒いため暖房使用量では日立市のほうが多くなる傾向になるはず。
このため、地域区分は同じでも断熱性能を同じで良いとするのはちょっとだけ違うように思いますよね。
そこで、HEAT20(一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会)さんで公表している外皮水準地域補正ツールが参考になります。HEAT20と言ってもなぞですよね…。そこで、国交省の公表資料が参考になります。『民間基準(参考)』と書かれているところがHEAT20さんで提唱してるG1~3のグレードの値となります。
また、独自取り組みを行っている鳥取県の取り組みも参考になります。
鳥取県(地域区分4〜6)では推奨基準をG2としています。
国が目指しているのは2025年4月に次世代基準ですので、断熱性能値で2倍以上の差があることが分かります。ZEH(積水ハウスさんの賃貸住宅が標準としている値)でも欧米に比べてしまうと性能は低いと言われてしまいます。
分かりやすくいうと、断熱性能は欧米並みの水準であるG2水準をクリアすれば快適、G3水準であればかなり快適に暮らすことが可能ということです。
私個人としては、鳥取県さんのように最低G1水準はクリアし、標準としてはG2水準をクリアする設計を行えば年中室内は快適です。
では、この外皮水準地域補正ツールを使って、断熱等性能等級5(ZEH水準:UA0.6W/(m²・K) )で東京都と日立市を比べてみます。
断熱等性能等級5(ZEH水準:UA0.6W/(m²・K) )では、東京都はG1水準に適合、G2水準に概ね適合、G3水準に不適合となりますが、日立市ではG1水準のみ適合となります。
・G1(6地域):概ね10℃を下回らない
・G2(6地域):概ね13℃を下回らない
・G3(6地域):概ね15℃を下回らない
つまり、地域区分は同じであり基準値はクリアできたとしても気候が若干異なるため日立市の方が断熱性能を高めないと、実態の快適性とは乖離する結果となります。
まとめ
ということで、建築物省エネ法における地域区分が同じである東京と日立市は基準値は同じであっても、快適と言われる水準で比べてみると違いが生じると言った話でした。
少しだけ気候が違うので当然でしょ=!と言われればそれまでなのですが、住宅営業で断熱性能等級は国の基準をクリアしていると言われた際に、実際には地域によっては快適性を有する断熱性能は違いますので、HEAT20の話をしてもいいかもしれないです。
なお、今後、次の段階として、2030年にはZEHが義務化される予定です。
このことを踏まえてもこれからの住宅はZEH水準はクリア。できればHEAT20のG2(又は断熱等性能等級6or7)以上とするのが望ましいと考えられます。
こちらの記事が住宅の断熱性能を選択する際の参考となりましたら幸いです。