福島県鏡石町の由来や都市圏の話

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福島県民であっても「鏡石町ってどこ?」と質問されても即答できる人は少ないと思います。という私も例外ではなく、仕事の関係で福島県内最大の郡山都市圏に属している鏡石町という理解くらいでした。

鏡石町があまり知られていない理由としては、鏡石町は福島県内で見ても他市町村に比べて町域が小さくかつ人口も少ないためメディア等に露出する機会も少ないことがあげられます。

*鏡石町の位置

観光地といえば明治天皇の御料地であった岩瀬牧場や、松尾芭蕉が訪れたとされる鏡沼跡地かと思います。
*明治天皇による鏡石町来訪は1876年6月14日

本題の鏡石町の由来ですが、ネット上で調べても何にも情報が出てきませんでした。

鏡石町の公式ページを確認しても情報を見つけることができなかったため、国立図書館のデータベースから過去資料を調査してみました。その結果をお伝えしていこうと思います。

また、都市計画上の鏡石の地勢を簡単に紹介しています。

目次

鏡石町の由来

冒頭で鏡石町は町域が小さいと言いましたが、これまでに9村が合併して鏡石町が誕生しています。

江戸時代まで遡ると鏡石町の前身の村々は概ね白河藩領内として幕末まで存続していたようです。

9村とは、「森宿村」、「行方野村」、「細谷村」、「笠石新田村」、「成田村」、「高久田村」、「鏡沼村」、「仁井田村」、「久来石村」です。

このうち、江戸時代の旧宿駅が設置されていたのが「久来石宿」と「笠石宿」です。

なお、鏡石から北に5kmほど進むと白河藩領の最北端の宿駅として栄えていた「須賀川宿」があります。

それでは本題の鏡石町の由来です。

鏡石町の前身である「鏡石村」が明治22年(1889年)に誕生した際の文書が残っていました。その時の資料によると次のように書かれています。

旧名称ヲ参互折衷シ鏡田村ノ鏡字ト久来石笠石両村ノ石字トヲ採リ新名称トス
>>>【現代語訳】旧名称を参考に折衷し、鏡田村の「鏡」という字と、久来石村と笠石村の「石」という字を採用し、新しい名称とする。
※出典:鏡石町史 第1巻(通史編)

つまり、鏡石とは、鏡田村(明治9年に鏡沼村、高久田村、仁井田村の三村が合併)の”鏡”と久来石村と笠石村の”石”をあわせて鏡石としたとのこと。これ以降、鏡石という文字が使われるようになります。1911年に開業した駅も「鏡石駅」という名称です。

ということで鏡石町の由来は、旧鏡田村と旧久来石村・旧笠石村が合併した際にそれぞれの文字をあわせた旧鏡石村という名称が用いられたことに起因します。

鏡石町は郡山都市圏に属する

鏡石町は福島県内最大の都市圏である郡山都市圏の最南端に位置する人口1.3万人の町です。

郡山都市圏の中心である郡山市から鏡石町までは、直線距離にして約18kmほど、電車では3駅17分、車では道のりで約30分の距離に位置しています。

イタリアの物理学者のマルケッティ定数(1994年,別名:ザハヴィの時間予算説)によれば、人の1日あたりの移動時間は社会全体の平均でおよそ1時間とされています。古来から普遍的であるとするもので超巨大都市圏を有する東京を除けば、片道の通勤時間はおよそ30分程度に収まるといわれています。

そうした面でみると、鏡石町は郡山都市圏の最南端の町として機能していることが考えられます。

鏡石町の南側の町である矢吹町は、郡山の都市圏に属していない(グレーゾーン)ことが次の資料から分かります(10%通勤・通学割合が矢吹町は白河市)。この点からも郡山都市圏の最南端は鏡石であることが分かります。
*鏡石町はどちらかというと須賀川市の郊外的位置

☑️矢吹町及び鏡石町における他市町村への通勤通学者数の割合

鏡石町割合
就業者・通学者数
(常住地による人口総数)
7,658人
1位 須賀川市1,469人約19.2%
2位 郡山市960人約12.5%
3位 矢吹町447人約5.8%
*令和2年国勢調査,従業地・通学地による人口・就業状態等集計(鏡石町)
矢吹町割合
就業者・通学者数
(常住地による人口総数)
10,218人
1位 白河市1,007人約9.9%
2位 須賀川市691人約6.8%
3位 郡山市654人約6.4%
*令和2年国勢調査,従業地・通学地による人口・就業状態等集計(矢吹町)

鏡石町は緩やかな社会増

面積及び人口規模も小さく東北地方の田舎というイメージで人口減少しているだろうと思われがちです。

ですが、実態は社会増減数として極端に減少が進んでいる地域ではなく、むしろ若干のプラスで推移しています。
社会増減数とは、転入者数−転出者数のことです。

自然増減数がマイナス(=出生数−死亡者数)のため全体人口は減少しているため社会増減数にのみ注目しないと分からないのが特徴です。増えている理由として、郡山や須賀川に比べて地価が低く手に入れやすい土地が空いていることで郡山市街地に勤務する方のベッドタウンとして注目されていることが理由と考えられます。

*総務省人口動態,JR東日本

鏡石町が属する郡山都市圏は東北地方第2位の人口

鏡石町が属する郡山都市圏は、東北地方第2位の人口を有しています。

こちらは東北地方における都市圏人口の比較です。ご覧いただくと、仙台がダントツの1位ですが、2位は郡山都市圏です。

 順位都市圏名❶都市圏人口❷都市計画区域人口❶の構成市町村
1位仙塩159.1万人157.3万人各市町村
・仙台市、塩竈市、名取市、多賀城市、
 岩沼市、富谷市
・松島町、七ヶ浜町、利府町、大和町、
 大郷町、亘理町、山元町、柴田町、
 大河原町、村田町、柴田町、川崎町
・大衡村
2位郡山50.3万人45.6万人各市町村
・郡山市、須賀川市、本宮市、田村市
鏡石町、三春町、小野町
・大玉村
3位山形46.7万人45.4万人各市町
・山形市、寒河江市、天童市、東根市、上山市
・河北町、大江町、山辺町、中山町
4位盛岡45.0万人43.0万人各市町
・盛岡市、滝沢市、八幡平市
・矢巾町、雫石町、岩手町、紫波町
5位福島41.2万人38.3万人各市町
・福島市、伊達市、二本松市
・桑折町、国見町、川俣町
6位秋田37.5万人35.0万人各市町
・秋田市、潟上市、男鹿市
・五城目町、八郎潟町、井川町
7位いわき31.6万人31.2万人各市町
・いわき市
・広野町
8位八戸30.8万人27.0万人各市町
・八戸市
・南部町、おいらせ町、階上町、洋野町
9位青森29.0万人28.2万人各市町村
・青森市
・外ヶ浜町、平内町
・蓬田村
10位弘前27.0万人24.0万人各市町
・弘前市、黒石市、平川市
・板柳町、藤崎町、田舎館村、大鍔町
・西目屋村
11位会津22.2万人22.2万人各市町村
・会津若松市、喜多方市
・磐梯町、猪苗代町、会津美里町、会津坂下町
 下郷町、三島町、柳津町
・湯川村
*令和2年国勢調査,従業地・通学地による人口・就業状態等集計(10%通勤・通学圏),人口:令和5年1月1日(総務省),令和4年都市計画現況調査(国土交通省),人口20万人以上

都市圏とは、複数の市町村で構成され都市経済が一体となっているエリアのことをいいます。

分かりやすい都市圏の指標としては、都市計画法上の「都市計画区域」、「都市雇用圏(10%通勤圏:経済産業省)」、「都市圏(5%通勤・通学圏:国土交通省)」。実態よりも都市圏が広がりますが行政上の連携を行う「連携中枢都市圏(10%通勤圏等:総務省)」などがあります。

都市圏内の都市住民の人口としては都市計画区域(複数市町村で構成される都市を一体的にコントロールするエリア)の人口が最適ですが、国の各種統計や土地利用状況などを踏まえて5年毎に再編を行っているため、その区域は最新の実態経済を適切に反映できていない場合もあります。

このため、適切な都市圏を見る場合には、都市計画区域と都市経済学上の都市雇用圏(5年毎の国勢調査で分かる)を見て判断しています。これまでの経験則からも両方を捉えて判断するのが適切だと考えています。なお、都市圏の定義については研究者や経済上のアプローチによって異なるため一概には言えない部分があります。

いずれにしても、鏡石町単体ではなく都市圏として俯瞰すると鏡石町が居住地として魅力的とされる側面が見えてくると思います。なお、都市圏最北端の本宮でも社会増減がプラスとなっている状況です。

鏡石町への移住

鏡石町自体は人口規模が小さく将来性に不安を覚える方もいるかもしれませんが、都市圏全体で見れば福島県内最大都市圏内の自治体のため将来性に問題はないです。

ちなみに郡山市自体も人口減少(2023年の増減率はマイナス0.69%で、増減率の順位は22位/227)が進んでいますが、東北全体でみれば減少率は小さい方ですし、同一都市雇用圏内の大玉村に至っては人口増加(2023年前年比+0.31%)となっており、今後も東北第2位の人口・経済規模を維持していくはずです。

鏡石町への移住相談は、鏡石町公式ページに専用サイトが設置されているのでこちらのページをご覧になってください。各種支援制度が用意されているので福島県内最大の都市圏に住むメリットは十分にあります。

その他:東北第1位の人口増加率

福島県内には東北地方第1位の人口増加率となっている西郷村があります。TOKIOさんが手がける「TOKIO-BA」としても注目を集めている自治体です。関連記事はこちら。

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この記事を書いた人

▼水戸〜日立〜いわき〜仙台エリアまでの常磐線沿線都市での生活・ビジネス・まちづくりに役立つ情報・サービスを届けています
▼不動産・建築・都市計画
▼主な活動範囲:水戸〜いわき(相馬+仙台)
▶︎これまでの”都市づくり”の常識を覆し、わたし達が住む地域を住みやすさを世界1位にすることを目的に活動しています。 

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