この記事では、建築基準法第43条第3項(敷地と道路の関係)のうち、地方自治体が制限を追加できる内容(路地状敷地等の場合に制限付加を行う条例について、仙台市・いわき市・日立市・ひたちなか市・水戸市の取り扱いを解説しています。
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建築基準法第43条第3項とは?
建築基準法第43条第3項とは、次のような規定です。
なお、第1項が接道義務、第2項が無接道敷地の特例許可・認定についての規定となり、第3項については、地方公共団体(都道府県・市区町村)が建築基準法の最低基準に対して制限を付加(制限を厳しくする条例)することができる規定となっています。
建築基準法第43条は、建築物の敷地と道路の関係性(いわゆる接道)に関しての規定となり、都市計画区域及び準都市計画区域内に適用される集団規定の中でも最重要の法令です。
3 地方公共団体は、次の各号のいずれかに該当する建築物について、その用途、規模又は位置の特殊性により、第1項の規定によっては避難又は通行の安全の目的を十分に達成することが困難であると認めるときは、条例で、その敷地が接しなければならない道路の幅員、その敷地が道路に接する部分の長さその他その敷地又は建築物と道路との関係に関して必要な制限を付加することができる。
建築基準法第43条第3項
一 特殊建築物
二 階数が3以上である建築物
三 政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物
四 延べ面積(同一敷地内に2以上の建築物がある場合にあつては、その延べ面積の合計。次号、第四節、第七節及び別表第3において同じ。)が1,000㎡を超える建築物
五 その敷地が袋路状道路(その一端のみが他の道路に接続したものをいう。)にのみ接する建築物で、延べ面積が150㎡を超えるもの(一戸建ての住宅を除く。)
どういった規定なのかを改めて確認すると、はじめに、建築物の敷地は建築基準法第43条第1項の規定により、建築基準法上の道路(一般的には幅員4m以上の公道)に2m以上接しなければならないとする最低限の規定が設けられています。
ところが、この規定を全ての建築物に適用すると問題が生じます。
例えば、不特定多数が利用する収容規模の大きい建築物が道路に2mしか接していないケースでは、火災等があった場合の避難経路幅として、想定される利用者に対して不足していると考えることができます。
こうした理由により、一定の建築物(特殊建築物、3階以上の建築物、採光が取れない居室を有する建築物、1,000㎡超の建築物、袋地状道路に接続する建築物)については、自治体の条例により制限を付加(強化)することが可能となっています。
その規定が、建築基準法第43条第3項となります。
ではでは、各都市の制限の概要を解説する前に「なぜ、旗竿敷地や路地状敷地」と呼ばれているのか簡単に解説します。
旗竿敷地とは?
旗竿敷地とは、下図のようなケースの敷地をいいます。
通路(敷地)部分の幅員は4m未満、通路部分の長さが20m以上の場合に旗竿敷地(路地状敷地)と言われています。この路地状の形を見ると、”旗竿”に見えません? 業界的には路地状敷地よりも「旗竿敷地」と使用している人が多いかなーという印象です。
仙台市の旗竿敷地の建築制限
仙台市の場合には「宮城県建築基準条例」が適用されます。
つまり、仙台市のみに適用される建築制限の条例があるわけではないため、宮城県内はある程度統一された基準が設けられているということ。建築士や宅建士の方々にとっては分かりやすくていいことですよね。
ということで「宮城県建築基準条例」の内容についての解説です。
(路地状部分のみ道路に接する敷地と道路との関係)
第7条 指定建築物(前条第二号又は第四号から第八号までに規定するもので、その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡以内であるものに限る。)、階数が3以上である建築物又は法第43条第3項第三号に規定する建築物で、都市計画区域又は準都市計画区域内にあるものの敷地が路地状部分によつてのみ道路に接する場合においては、道路にその路地状部分の長さの10分の1(建築物の延べ面積の合計が200㎡を超えるときは、7分の1)以上接しなければならない。ただし、路地状部分の幅員が4m以上の場合においては、この限りでない。(指定建築物の敷地と道路との関係)
第8条 都市計画区域又は準都市計画区域内にある指定建築物(前条の指定建築物を除く。)の敷地は、前条の規定にかかわらず、道路に4m以上接しなければならない。(大規模建築物の敷地と道路との関係)
宮城県建築基準条例第7・8・9条
第9条 都市計画区域又は準都市計画区域内にある延べ面積の合計が1,000㎡を超える建築物の敷地は、前2条の規定にかかわらず、道路に6m以上接しなければならない。
対象建築物 | 路地状部分の幅員 | 適用除外 |
---|---|---|
指定建築物で床面積200㎡以下 ・病院・診療所 ・ホテル・旅館 ・簡易宿所・下宿 ・共同住宅・寄宿舎 ・児童福祉施設等 ・店舗・飲食店で床面積100㎡以上 ・展示場・展覧会場 ・遊技場 ・ダンスホール ・公衆浴場 ・倉庫で床面積50㎡ ・自動車車庫で床面積50㎡以上 ・工場で作業場床面積50㎡以上 | 路地状長の1/10以上 (延べ面積200㎡超1/7) | 路地状幅4m以上有 |
3階以上の建築物 | 路地状長の1/10以上 (延べ面積200㎡超1/7) | 路地状幅4m以上有 |
採光・排煙無窓の建築物 | 路地状長の1/10以上 (延べ面積200㎡超1/7) | 路地状幅4m以上有 |
劇場・映画館 演芸場・観覧場 公会堂・集会場 学校・体育館 博物館・美術館・図書館 ボーリング場・スキー場 スケート場・水泳場 スポーツの練習場 *(注)劇場等は県条例第10条で別途制限 | 4m以上 | ー |
延べ床1,000㎡超 | 6m以上 |
なお、制限内容は、都市計画区域内のみ適用される条例の規定です。ですので、都市計画区域外は制限の対象外となります。
上記の表については、例えば、木造2階建ての共同住宅で床面積が200㎡、路地状の延長が30mであれば、路地状幅として3m以上の確保が必要となります。その他、3階建ての一戸建て住宅も同様に例えば路地状長が25mであれば、路地状幅として2.5m以上が必要となります。
他隣県と異なり、「路地状の幅員を2・3・4m」と切りより数字ではなく、「延長の1/10,1/7」というように小数点も幅員を計算します。
第8条及び第9条は接道幅に関する規定(それぞれ、接道幅は4m、6m以上)となり、通路部分についても同様に4m・6m以上が必要となるので注意が必要です。
いわき市の旗竿敷地の制限
いわき市の場合には「福島県建築基準法施行条例(福島県例規集)」が適用されます。
つまり、宮城県仙台市と同じように県内統一の基準が設けられているため、各市町村毎に条例を確認する必要性がないところがいいところです。
福島県建築基準法施行条例では次のように規定されています。
(路地状敷地の形態)
福島県建築基準法施行条例第3条の2
第3条の2 建築物の敷地が当該敷地の路地状部分のみによって道路に接する場合には、当該路地状部分の幅員は、当該路地状部分の長さに応じて、次の表に掲げる幅員以上としなければならない。 ただし、建築物の配置、用途及び構造、建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める場合は、この限りでない。
2 建築物の延べ面積(同一敷地内に2以上の建築物がある場合は、それらの延べ面積の合計)が 500㎡を超えるものの敷地に対する前項の規定の適用については、同項の表中「3m」とあるのは、「4m」とする。
敷地の路地状部分の長さ | 幅員 |
---|---|
20m以下のもの | 2m |
20mを超えるもの | 3m |
例えば、路地状部分の延長が20m以下であれば路地状の幅員は2mでOKとなりますが、20m超の場合には3mが必要となります。また、建築物の延べ面積が500㎡を超える場合には、3m→4mとなります。
日立市の旗竿敷地の制限
日立市の場合には、「日立市建築基準条例」が適用されます。
日立市建築基準法施行条例では、次のように規定されています。
(路地状敷地)
日立市建築基準条例第3条
第3条 都市計画区域内においては、建築物の敷地が路地状部分によって道路に接する場合、その路地状部分の幅員は、路地状部分の長さに応じて、次の表に掲げる数値としなければならない。ただし、建築物の用途及び構造並びに敷地及び周囲の状況により市長が安全上支障がないと認める場合は、この限りでない。
路地状部分の長さ | 幅員 |
---|---|
20m未満 | 2m以上 |
20m以上40m未満 | 3m以上 |
40m以上 | 4m以上 |
(大規模の建築物等の敷地と道路との関係)
日立市建築基準条例第4条
第4条 都市計画区域内においては、延べ面積(同一敷地内に2以上の建築物がある場合は、その延べ面積の合計)が1,000㎡を超える建築物及び地階を除く階数が3以上の建築物(令第126条の6第2号に定める構造の窓その他の開口部を道路又は道路に避難上有効に通ずる通路その他の空地に面して設けているものを除く。)の敷地は、道路に4m以上避難上有効に接しなければならない。ただし、周囲の状況等により市長が安全上支障がないと認める場合は、この限りでない。
(特殊建築物の敷地と道路との関係)
日立市建築基準条例第6条
第6条 都市計画区域内においては、法別表第1(い)欄(2)項から(5)項までに掲げる用途に供する建築物の敷地は、その用途に供する部分の床面積の合計が500㎡を超えるもの(第14条に規定する共同住宅及び寄宿舎を除く。)は、道路に4m以上接していなければならない。ただし、市長が避難上支障がないと認める場合は、この限りでない。
日立市の場合には、路地状部分の延長が20m未満であれば幅員は2m以上、20m以上40m未満であれば3m以上、延長が40m以上であれば幅員は4m以上必要となります。
また、延べ面積が1,000㎡超の建築物と階数が3以上の建築物の敷地については、建築基準法上の道路に4m以上避難上有効に接する必要があります。
また、日立市建築基準条例第6条の規定では、特殊建築物のうち床面積の合計が500㎡を超えるものについては、建築基準法上の道路に4m以上接しなければならないとされています。
ひたちなか市の旗竿敷地の制限
ひたちなか市の場合には、「ひたちなか市建築基準条例」が適用されます。
ひたちなか市建築基準条例では次のように規定されています。基本的に日立市と同じ内容です。
(路地状敷地)
ひたちなか市建築基準条例第3条
第3条 都市計画区域内においては、建築物の敷地が路地状部分によって道路に接 する場合、その路地状部分の幅員は,次に掲げる限度以上としなければならない。 ただし、建築物の用途及び構造並びに敷地及び周囲の状況により市長が安全上支障がないと認める場合は、この限りでない。
(1) 路地状部分の長さが20m未満の場合は、2m
(2) 路地状部分の長さが20m以上40m未満の場合は、3m
(3) 路地状部分の長さが40m以上の場合は、4m
(大規模の建築物等の敷地と道路との関係)
ひたちなか市建築基準条例第4条
第4条 都市計画区域内においては、延べ面積(同一敷地内に2以上の建築物があ る場合は、その延べ面積の合計)が1,000㎡を超える建築物及び 地階を除く階数が3以上の建築物(令第126条の6第2号に定める構造の窓そ の他の開口部を道路又は道路に避難上有効に通ずる通路その他の空地に面して設 けているものを除く。)の敷地は、道路に4m以上避難上有効に接しなければならない。ただし、周囲の状況等により市長が安全上支障がないと認める場合は,この限りでない。
(特殊建築物の敷地と道路との関係)
ひたちなか市建築基準条例第6条
第6条 都市計画区域内においては、法別表第1(い)欄(2)項から(5)項までに掲げる用途に供する建築物の敷地は、その用途に供する部分の床面積の合計が500㎡を超えるもの(第14条に規定する共同住宅及び寄宿舎を 除く。)は、道路に4m以上接していなければならない。ただし、市長が避難上支障がないと認める場合は、この限りでない。
路地状部分の延長が20m未満であれば幅員は2m以上、20m以上40m未満であれば3m以上、延長が40m以上であれば幅員は4m以上必要となります。
また、延べ面積が1,000㎡超の建築物と階数が3以上の建築物の敷地については、建築基準法上の道路に4m以上避難上有効に接する必要があります。
また、ひたちなか市建築基準条例第6条の規定では、特殊建築物のうち床面積の合計が500㎡を超えるものについては、建築基準法上の道路に4m以上接しなければならないとされています。
水戸市の旗竿敷地の制限
水戸市の場合には「水戸市建築基準条例」により規定されています。
水戸市の建築基準条例における旗竿敷地の建築制限は次のように規定されています。
(路地状敷地)
水戸市建築基準条例第3条
第3条 路地状部分によって道路に接する建築物の敷地の当該路地状部分の幅員は,それぞれ次の表に掲げる数値以上としなければならない。ただし,建築物の用途,構造,敷地及び周囲の状況により市長が安全上支障がないと認めるときは,この限りでない。
路地状部分の長さ(単位 m) | 幅員(単位 m) |
---|---|
20未満 | 2 |
20以上40未満 | 3 |
40以上 | 4 |
(大規模の建築物等の敷地と道路との関係)
水戸市建築基準条例第4条
第4条 延べ面積(同一敷地内に2以上の建築物がある場合は、その延べ面積の合計)が1,000㎡を超える建築物及び地階を除く階数が3以上の建築物(政令第126条の6第2号に定める構造 の窓その他の開口部を道路又は道路に避難上有効に通ずる道路その他の空地に面して設けているも のを除く。)の敷地は、道路に4m以上の幅で、かつ、避難上有効に接していなければならない。ただし、周囲の状況等により市長が安全上支障がないと認めるときは、この限りでない
(特殊建築物の敷地と道路との関係)
水戸市建築基準条例第6条
第6条 法別表第1(い)欄(2)項から(5)項までに掲げる用途に供する建築物でその用途に供する部分の床面積の合計が500㎡を超えるもの(共同住宅及び寄宿舎を除く。)の敷地は,道路に4m以上接していなければならない。ただし、市長が避難上支障がないと認めるときは、この限りでない。
水戸市の場合には、日立市・ひたちなか市と同じく路地状の延長が20m未満の場合には幅員2m以上、20m以上40m未満の場合には幅員3m以上、40m以上の場合には幅員4m以上と規定されています。
また、延べ面積が1,000㎡超の建築物と階数が3以上の建築物の敷地については、建築基準法上の道路に4m以上避難上有効に接する必要があります。
その他、第6条の規定では、特殊建築物のうち、床面積が500㎡を超えるものについても建築基準法上の道路に4m以上接する必要があります。
まとめ
仙台市、いわき市、日立市、ひたちなか市、水戸市それぞれの特徴として、路地状延長と幅員が異なります。
大きな括りとして、「仙台市」、「いわき市」、「日立市・ひたちなか市・水戸市」となります。つまり、県ごとに取り扱いが異なることとなる点がポイントです。また、路地状形態に対する制限に追加は、各県の条例により定められています。
基本的な考え方として、路地状の延長が20m以上の場合には幅員3m以上、延長が40m以上の場合には幅員4m以上必要となるほか、規模の大きな建築物の場合には4m(または6m)以上が必要となります。
なお、路地状の敷地については、あくまでも敷地のため、通路としての形態を確保する必要性はなく、路地状の部分に塀や植木等を設けてはいけないとする条例はありませんので問題なしですが、法の趣旨から言えば、防火・避難の関係から路地状の幅員を一定以上確保しようとする規定ですので、敷地とはいえ、なるべくモノは設置せずに、避難経路として問題がないことを確認しておく必要性はあると思います(あくまでも個人的な見解です)
ということで以上となります。
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