【北側斜線制限・天空率】北側斜線制限の回避なら天空率を使う。

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この記事では、「戸建て住宅設計者」、一種低層住居専用地域で住宅建築を検討している「施主」向けに北側斜線制限を回避する天空率を簡潔に解説しています。

解説の前に簡単に自己紹介です!

株式会社UrbanPoleShiftの満山です。

国と市役所職員を経験した元公務員です。現在は起業し建築・都市計画系のWEBメディア運営や大手メディアの寄稿、建築相談などを行っています。将来的には社会になくてはならないまちづくり事業者になるベくチャレンジ中です。

目次

北側斜線制限とは?

北側斜線制限は、都市計画区域の用途地域のうち「第一種低層住居専用地域」、「第二種低層住居専用地域」、「田園住居地域」、「第一種中高層住居専用地域」、「第二種中高層住居専用地域」で指定されています。

なお、中高層住居専用地域では日影規制が適用されている場合には北側斜線制限は適用されません。これは、北側斜線制限よりも日影規制の方が厳しい制限であるためです。

一種低層住居等で指定されている北側斜線制限は「5m+1.25」が適用されます。

例えば、下図のようなケースでは、真北(磁北とは異なり、北極点方向。iPhoneでも真北測定が可能です。)から屋根庇(樋がある場合は樋先)までの距離が1.386mの場合には、その1.386mの地点の高さの上限は、5m+1.386m*1.25 =6.7325→6.73mとなります。
*下図(左側)の場合には、最高高さがGL+8.3mのためOUTとなるため不適合です。

この北側斜線制限は、北側隣地の日照、通風等を確保して低層住居の目的である住環境保護を図ろうとするものです。真北方向に対して一律に斜線制限が適用されるためもう少し制限方法を合理化しようとして平成15年1月に制度化されたのが「天空率」となります。

天空率とは?

天空率とは、ある地点(測定点)において、建築物(擁壁、塀等の附属物を含む)を天空に投影し、平面上に正射影した場合の円の面積に対する空の面積の割合のこと

天空率は、建築基準法第56条第7項、具体的なルールは施行令(建築基準法施行令第135条の5〜)に規定されています。

天空率が100%に近づくほど、全方向が天空であることを示します。

この天空率を計画建築物と敷地建築可能な建物形状(適合建築物)でそれぞれ算出し、計画建築物>適合建築物 となれば北側斜線制限に適合させる必要はなく、高さ制限(建築基準法第56条第1項第三号)は適合となります。

この北側斜線制限の合理化した制限が天空率となります。

天空率で斜線制限をクリアできるケースとしては、屋根の一部分が不適合である場合や真北に接する敷地長に対して建築物の幅が小さいなどです。建物が全面的に北側に寄っている場合には天空率を適用しても適合させるのは難しいです。

天空率の算定例

北側斜線制限天空率の算定例となります。

この例では、北側に寄った建築物の屋根の一部が北側斜線制限に不適合となっていますが、天空率を使うことで北側斜線制限を回避することができます。

計画建築物と適合建築物の例
※天空率(積分法)
※三斜法による天空率算定(近接点のみ)

具体的な天空率の基準は施行令に規定されています。ただし少し複雑ですので、施行令を読み解くが苦手という方はこちらの参考書籍が有効です。

また、補足としまして、確認申請図書作成に必要な細部の規定は施行規則に定められていないため各自治体が取り扱いを定めています。

基準を定めていない自治体は、建築行政会議でまとめた天空率のルールを使っているため、一般的には、計算ソフト(積分法)による「計画建築物≧適合建築物」を検討し、最も厳しい地点(近接点)で三斜法により0.02%以上を確認します。

天空率算定はフリーのJWcadで算出可能です。
特に戸建て住宅や長屋などの小規模な建築物であれば高度で便利な計算ソフトは使用しなくても十分に対応可能ではありますが、計算ソフトを使うと便利らしいです。

>>>天空率を算定する際に活用できる書籍

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計画建築物の算定には、建築物本体の他に附属する門や塀、フェンス、擁壁などの外構面を全てモデル化する必要があるため、天空率の算定と同時に外構プランをつくっておく必要があることに注意が必要です。

(注)仮に外構なしで検討し、完了検査時に外構がある場合には、虚偽申請となるため計画変更確認申請または追加検討指示により再度検討が必要となります。

補足:天空率の算定には別途費用がかかる?

施主さんの中には、できる限り北側に建築物を寄せたいと考えている方がいると思います。

この場合、外壁後退距離制限(境界線から1mまたは1.5m)や絶対高さ制限(10mまたは12m)をクリアしても北側斜線制限に抵触することがあると思いますが、一部が不適合であれば天空率の適用によって制限をクリアすることができる可能性が高いです。

天空率の算定には、通常の確認申請図書の他に2、3枚程度の図面が追加されるため戸建て住宅であれば少なくとも3〜5日程度の検討時間、規模によりますが費用としては5万円(税込)〜かかります。
*当社では配置図、立面図等を提供いただき、納品まで5日営業日、5万円(戸建て住宅。税込)としています。

なお、検討では安全側に建物・附属建築物をモデリングして行います。

初期プランでは不適合となることも想定されるため適合させるために必要な提案を行いますが確認申請後の変更は計画変更確認申請が必要となるため別途、費用が発生します。

注文住宅の価格からすればごく僅かなので一種低層住居専用地域や二種低層住居専用地域において、より自由度の高い建築物を検討されている方は天空率を検討してみても良いかもです。

北側斜線制限の天空率作成に悩んだらご相談ください

弊社でも天空図作成を行っております。

一種低層住居専用地域で屋根の一部分のみ北側斜線制限にかかっている場合には天空率適用が可能なケースが多いです。屋根形状を変更する必要はないです。また、なるべく南側空地を確保したいときにもギリギリまで北側に寄せることも可能です。

事前相談はいつでもお受けてしておりますのでメール(info@iwaki-poleshift.jp)からお願いいたします。
メールを確認した上でご返事いたします。

それでは以上となります。

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この記事を書いた人

▼水戸〜日立〜いわき〜仙台エリアまでの常磐線沿線都市での生活・ビジネス・まちづくりに役立つ情報・サービスを届けています
▼不動産・建築・都市計画
▼主な活動範囲:水戸〜いわき(相馬+仙台)
▶︎これまでの”都市づくり”の常識を覆し、わたし達が住む地域を住みやすさを世界1位にすることを目的に活動しています。 

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