【基礎設計】浜通り・県央・県北(いわき・日立・水戸・ひたちなかなど)の凍結深度のまとめ+観測史上最低気温

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この記事では、福島県浜通り、茨城県県北・県央地域の凍結深度をまとめています。
凍結深度は、建築物の基礎を設計する際に考慮しなければならない基準一つとなっておりますが、この記事で解説する都市は、一般的に温暖な地域に分類されるため、各行政庁(県、市役所)では凍結深度の指定を行っていません

そのため、=イコール安全というわけでもないです。

行政で指定を行っていないだけで過去には寒波によって凍結による被害も発生していますので、「稀に発生する寒波に対して大丈夫かどうか」確認する必要がありますし、また、都市内のエリア毎にも標高によって凍結深度の値が変わってきますので、ぜひ、この記事を読んで頂き、建物を建てる際の参考にして頂ければ幸いです。

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目次

建築基準法では基礎底盤を凍結深度より深く設置しなければならない

建築基準法のルールでは、建物の基礎底盤を凍結深度より深い位置に設置しなければならないとするルールがあります。

このルールでは、凍結深度(土が凍結する深さ)よりも、基礎構造の底盤(基礎構造のうち最も低い位置)を深く設置することで、地盤凍結時の膨張による建物への被害を防止する役割があります。

建築基準法施行令第38条第3項
平成12年5月23日建設省告示第1347号「建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件」
→「第1 第3項第4号(抜粋) 根入れの深さは・・・(略)・・・凍結深度よりも深いものとすることその他凍土を防止するための有効な措置を講ずること。

冬の寒い時期。特に氷点下になると地盤が凍り、水から氷になると体積が増えるために地盤が膨張します。この膨張によって、基盤構造の底盤が凍結深度よりも浅い位置にあれば基礎に影響を及ぼし建物が傾くことになります。

一般的なべた基礎の例*出典:まもりすまい保険設計施工基準・同解説(住宅保証機構)

地盤改良等によって含水率が低い場合には凍結膨張の恐れは少ないですが、そのような対策等を行わない場合には凍結膨張に対する対策が必要となります。

建物のみならず、道路や道路関連の工作物、上下水道管もこの凍結深度に注意しないと、水から氷になる際の凍結膨張によって、被害を受けることになり、復旧にコストや時間を要することなります。

ちなみにですが、冬場に断熱材等で保温されていない水道管を「水抜きしてください!」と聞くことありますよね。なぜかといいますと、その水道管に溜まった水が氷になることで体積が増加するため、その体積が増加するときの圧力に対して管が耐えることができないために膨張破壊(亀裂)するからです。

この凍結深度ですが、建築基準法に基づき、冬季に積雪が多い日本海側や北東北、北海道で多く指定(代表的な凍結深度を下表に例示)されておりますが、今回解説するいわき市や日立市、ひたちなか市などの地域では、凍結深度は指定されていません。

都市凍結深度(単位:㎝)
旭川市80以上
札幌市60以上
函館市50以上
八戸市60以上
長野市45以上
凍結深度を指定している代表的な都市

ちなみに、建築基準法では、凍結深度が指定されていないケースでは、基準上は、地盤面から基礎の底盤までの根入れ深さは、べた基礎で12㎝以上、布基礎で24㎝以上と決められています。

がしかしです。より安全側で設計しようとすると 12㎝ or 24㎝というのは不安が生じます。

では、今回、解説する地域である、福島県浜通りや茨城県県北・県央地域の凍結深度はどうかというと、参考となる値を福島県が公表しています。

いわき市を基準にすれば、それよりも南の地域(山間部を除く)では比較的温暖に分類または同等の値となるため参考になるかと思います。また、仙台市でも凍結深度早見表を公表しており、いわき市等と気候が類似しているので参考になります。

それでは本題の解説です。

いわき市等の凍結深度

いわき市の凍結深度の参考となる数値としては、福島県が公表している参考値(https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/41065b/toketusindo.html)や、今回解説する地域に気温が近い仙台市が公表している凍結深度早見表(https://www.city.sendai.jp/kenchikushido-kanri/jigyosha/taisaku/kenchiku/gyose/oshirase/kozo.html)が参考になります。

福島県浜通り地域の凍結深度の参考値 *出典:福島県(https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/41065b/toketusindo.html

まず福島県の参考資料によると、いわき市の凍結深度は27〜63㎝(市街地は27㎝)となります。

また、いわき市と気候が類似している仙台市の参考資料によると、仙台市の中心部では、標高0mで18㎝、標高50mで20㎝となっており、標高250m地点で25㎝とされているので、福島県さんが公表されている概ね27㎝というのは、理論上の最大値(安全側の設計)として参考になるかと思います。

なお、いわき市でも阿武隈高地や阿武隈高地よりの山間部、大子町をはじめとする標高の高い地域(山間部)では福島県の資料によると凍結深度は42㎝〜81㎝の範囲とされていますが、仙台市の早見表では山形県との県境の標高の高い地域でも最大で63㎝としていますので、地形・地質的に凍結膨張が起きやすい地域で無い限りは最大でも60㎝程度で見込んでおけば良いと考えられます。

つまり、いわき市や日立市、水戸市、ひたちなか市といった都市の市街地での凍結深度は20〜25㎝(標高100m以下が大半ですので21㎝程度)として根入れ深さを考慮すれば、凍結による建物被害は防げるかと思います。おそらくですが、現代の住宅のべた基礎であれば標準でクリアしている深さとなります。

また、大子町や標高の高い山間部では最大でも60㎝程度、より安全性を考慮すれは80㎝程度で見込んでおけば安全側で設計できるかと思いますが、山間部でも市街地並みに標高が低い地域は一般的に凍結深が小さいので市街地並で見込んで良いと思います。

なお、凍結深度が1m超の北海道では凍結膨張による建物被害を防ぐために、現代の住宅では標準のべた基礎とせず布基礎としているようですので、北海道地域の基礎標準断面図などが参考になるかと思います。

各地域の観測史上最大の最低気温

福島県さんが公表している凍結深度の参考値の他に気象庁が公表している観測史上最低気温も参考になります。

こちらの表は、気象庁が公表している観測史上最低の気温を一覧にしたものです。

2023年1月の大寒波も寒さが厳しかったですが、過去にはそれ以上に寒い日があったことが示されているので、凍結深度を算定する際の参考になるかと思われます。

過去にはマイナス10℃を超えるような寒さを観測した日もあったというのはちょっと驚きですね。とはいえ、やはり日立市はやはり温暖です(日立市の温暖さに関しては、また別記事にしたいと思います。)

大子などの山間部でかつ標高が高い地域を除けば基本的には凍結深度は仙台市の早見表を参考にしておけば安全側で設計することが可能かと思います。

観測地点( 海面上の高さ)観測史上最低気温観測日2023/1/26寒波時の最低気温
相馬(9m)-14.0℃2010/2/7-6.0℃
浪江(43m)-12.4℃2014/2/6-8.9℃
小名浜(3m)-10.7℃1952/2/5-6.2℃
北茨城(5m)-9.3℃2014/2/5-7.9℃
日立(34m)-6.9℃1984/2/4-3.3℃
水戸(29m)-12.7℃1952/2/5-6.0℃
大子(120m)-15.6℃1985/1/30-12.5℃
笠間(72m)-13.3℃1984/1/20-5.3℃
*参考:仙台(39m)-11.7℃1945/1/26-5.0℃
*観測史上最低気温と2023年1月25日寒波時の最低気温,出典:気象庁(https://www.jma.go.jp/jma/menu/menureport.html

まとめ

ということで、福島県浜通り、茨城県県北・県央地域の凍結深度について解説しました。

簡単にまとめると、次のようになります。

  • 福島県浜通り、茨城県県北・県央の沿岸部よりの市街地:20〜27㎝
  • 上記以外の山間部で標高が高い地域:27〜81㎝(*個々の状況によって異なる)

凍結深度を知ることは、建築物の基礎を設計する際や水道管等の設計を行う際に大切であることがご理解頂けたかと思います。

なお、凍結深度は、参考となる値があっても、標高や、地下水位、地形、地質等によって地域毎に異なりますが、いわき市や水戸市、日立市は基本的に温暖な地域に分類されますので、設計上は、標高に注意して標高から福島県や仙台市の資料を参考にして類似値を算出するのが良いかと思います。

それでは以上となります。こちらの記事が参考となりましたら幸いです。

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この記事を書いた人

▼水戸〜日立〜いわき〜仙台エリアまでの常磐線沿線都市での生活・ビジネス・まちづくりに役立つ情報・サービスを届けています
▼不動産・建築・都市計画
▼主な活動範囲:水戸〜いわき(相馬+仙台)
▶︎これまでの”都市づくり”の常識を覆し、わたし達が住む地域を住みやすさを世界1位にすることを目的に活動しています。 

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