この記事では、2022年(令和4年)の最新の犯罪統計(警察庁,福島県警本部)から福島県内の主要都市内の治安の傾向を調べてみました。この記事を読むことで福島県内の都市別の犯罪発生の傾向を掴むことができます。
その前に簡単な自己紹介です!
株式会社UrbanPoleShiftの満山といいます。
国と市役所職員を経験した元公務員で、現在は一人で起業し建築系のWEBメディア運営や建築相談などを受けています。将来的な地域になくてはならないまちづくり事業者になるベく日々努力継続中です。
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福島県内の主要都市の治安の傾向
こちらの表は、警察庁及び福島県警が公表している令和4年犯罪統計のデータから福島県内のうち主要都市(市)と双葉郡の「検挙率」と「行政区域内の人口1万人当たりの年間刑法犯認知件数」をまとめたものです。
データの見方として、Y軸(縦軸)は検挙率を示します。
検挙率=検挙件数/認知件数となっており、検挙率が低いと認知件数に対する検挙数が低いことを意味するため犯罪者が捕まっていない状況(=治安が悪い傾向)にあります。一方で、検挙率の高さは認知件数に対して検挙数の割合が高いことを意味するため警察による犯罪捜査が優れていることや警察官配置の充足率が高いなどが考えられます。
次のX軸(横軸)ですが、こちらの行政区域内の人口1万人あたりの年間犯罪認知件数です。(認知件数/行政区域内人口)*1万人となっており、数値が高いほど総人口に対する犯罪の発生件数が高いことを意味します。一方で、数値が低い場合には犯罪の発生率が低いことを意味します。
データをご覧いただくと、福島県内の市の中で人口あたりの認知件数が少ない最も少ないのは、二本松市で18.7件、検挙率では田村市で61%となっています。
一方で、治安が悪い傾向にあると考えられるのは、人口あたりの認知件数でみると、いわき市で44.9件、郡山市で43.9件となってなり、検挙率では31%の双葉郡、33%が会津若松市となっています。
福島県内の方であれば、原発被害の関連によって双葉郡の治安が悪いのでは?とイメージしている方もいますよね。実際、令和4年のデータで見ていると、人口あたりの年間認知件数は低い(20.4件)ものの、検挙率も低い(31%)という結果となっています。
検挙率が低いという結果は警察官の充足率の低さや街自体に人口が少ないことより住民の監視の目が少ないことが要因なのではと考えられるところです。
こちらは一覧表です。
自治体名等 | 検挙率(%) | 人口1万人あたりの年間刑法犯認知件数 |
---|---|---|
福島県全体 | 48 | 37.5 |
全国 | 42 | 48.8 |
福島市 | 36 | 38.9 |
伊達市 | 55 | 32.6 |
二本松市 | 47 | 18.7 |
郡山市 | 53 | 43.9 |
本宮市 | 33 | 38.9 |
須賀川市 | 60 | 41.5 |
白河市 | 55 | 40.0 |
田村市 | 61 | 36.9 |
会津若松市 | 33 | 39.8 |
喜多方市 | 46 | 20.0 |
いわき市 | 51 | 44.9 |
南相馬市 | 41 | 43.3 |
相馬市 | 43 | 39.6 |
双葉郡 | 31 | 20.4 |
都市計画からアプローチする治安
ここからは私自身の考えなので興味がある方のみ!
治安の向上は、住民が安全で快適な生活を送ることが可能な環境の創出や、企業・個人事業主のビジネスのしやすさにも直結するくらい大切です。
都市計画では既にCPTEDが知られています。建築士試験やインテリアコーディネーター試験などを経験されている方はご存知の方もいるのではないでしょうか?
建築物や公園、道路などの物理的な環境を計画的にデザインすることで、人々の行動を良い方向へと導き、より安全で快適な生活空間を創出する試みの一つです。正式には「Crime Prevention Through Environmental Design(CPTED)」とも呼ばれ、直訳すると環境デザインによる犯罪防止となります。
CPTEDの原則は主に以下の3つです。
- Territoriality(領域性)
人々は自分たちが所有すると感じる領域を守り、他人の領域を尊重する傾向がある。
このため、領域性を明確にすることで、不審者が侵入することを抑止することができます。 - Surveillance(監視)
犯罪者は目撃されたくないと考えます。
したがって、物理的特性や活動、人々の配置を最適化して全体を見渡しやすくすることで犯罪を抑止する。 - Access Control(アクセス制御)
正しく配置された出入り口、フェンス、照明などにより、歩行者や車両の流れを制御することで犯罪を抑止する。アクセス制御は犯罪目標へのアクセスを制限し、犯罪者の行動範囲を制限することで、彼らが犯罪に対するリスクを感じるようにする。
*最近では闇バイトによる叩きの横行で3つの原則が適用されない例も多くなっている印象です。
これに加えて、人口密度と用途地域(建物立地をコントロールする都市計画のツール)から次のようなアプローチも有効ではと考えています。
- 適切な人口密度を維持(市街地)
一般的に、人口密度の高い地域では目撃者の存在が多く、自然監視が備わっているため、それが犯罪を抑止する効果があるとされます。加えて人口密度が高いと、街並みに活気があり24時間人の出入りがある地域ではより自然な監視が働きやすく治安が保たれます。
少なくとも夜間人口または昼間人口が極端に少なくなるような地域が生じるとそこでの人口が少ない時間帯での犯罪発生率が高くなる傾向にあるため、過度にならず適切な市街地の人口密度を維持する都市計画的なアプローチは非常に重要だと考えられます。 - 職住近接型の用途地域
現在の都市計画では、商業地域や住居地域、工業専用地域といったように、地域を特定の用途に分ける「単一用途区域」が主流となっています。むしろ生活環境の保護の観点から住工混在は避けるべきという考えが一般的です。
しかしながら、エリアを明確に分けると時間帯で人口が極端に少なくなる可能性があり、その場合、監視の目が行き届かなくなり治安の悪化を招く可能性があります。
そのため「複合用途」を認めるような職住近接の用途規制も選択肢としてありえるのではと考えています。特に軽工業であれば住宅混在であっても環境悪化の恐れは少ないため、むしろ人口減少や密度低下が進む地方都市では合理的ではと考えています。
少し最後の方は長くなってしまい読まれた方は疲れたと思いますがこれで以上となります。次回は茨城県についてまとめてみたいと思います!