2023年8月、観測史上最高気温という言葉を耳にすく機会が多かった中、本州でダントツ涼しかった地域があったのです。
それが「福島県いわき市(沿岸部)」です。昨年、勝浦市は100年以上の観測において一度も猛暑日(35℃以上)を記録したことがないということで移住地として有名となりました。ところがです。2023年8月の月最高気温・月平均気温ともに、その勝浦よりも涼しかったのです。
いわき市小名浜の8月の最高気温は32.0℃と、軽井沢や奥日光などの避暑地を除く地域では最も涼しいとされる千葉県勝浦市の32.5℃を抜いて本州トップ(北海道・沖縄を除く111観測点)の涼しさとなりました。
こちらのその結果です。
本州・四国・九州観測点111地点における2023年8月最高気温
*気象台及び主要な観測所(避暑地及び主要都市に限定)
順位 | 観測所 (標高m) | 市町村名 | 最高気温 (℃) | 月平均気温 (℃) | 相対湿度 (%) |
---|---|---|---|---|---|
1 | 奥日光(日光) (1,291.9m) | 栃木県日光市 | 28.0 | 20.4 | 91 |
2 | 草津 (1,223m) | 群馬県草津町 | 28.9 | 21.1 | – |
3 | 軽井沢 (999.1m) | 長野県軽井沢町 | 30.7 | 22.5 | 90 |
4 | 那須高原 (749m) | 栃木県那須塩原市 | 30.9 | 23.2 | 94 |
5 | 小名浜 (3.3m) | 福島県いわき市 | 32.0 | 27.5 | 86 |
6 | 勝浦 (11.9m) | 千葉県勝浦市 | 32.5 | 27.9 | 87 |
6 | 石廊崎 (52.2m) | 静岡県南伊豆町 | 32.5 | 27.8 | 86 |
7 | 潮岬 (67.5m) | 和歌山県串本町 | 32.7 | 27.6 | 89 |
8 | 猪苗代 (519m) | 福島県猪苗代町 | 32.8 | 25.8 | 85 |
9 | 河口湖 (859.6m) | 山梨県富士河口湖町 | 33.0 | 23.6 | 84 |
10 | 御前崎 (45.1m) | 静岡県御前崎市 | 33.1 | 28.4 | 86 |
11 | 銚子 (20.1m) | 千葉県銚子市 | 33.4 | 28.0 | 85 |
いわき市の久之浜や四倉、小名浜、北茨城の磯原や大津港といった沿岸部に居住されている方であれば、海からの涼しい潮風を経験したことがあるはずです。
気候的に太平洋側の沿岸部は陸地との気温差によって海からの風が入るこむことで比較的涼しいことで知られていますが、特にいわきや北茨城、日立の沿岸部は海流や背後の阿武隈高地の影響もあって、比較的涼しい分類に入るかと思います。
とはいえですが、月平均気温でみると、標高の高い避暑地と比べれば3〜5℃ほど高い傾向にあるため避暑地のほどの涼しさはないことに留意が必要です。
続いてこちらの資料は勝浦市といわき市小名浜地区の比較(参考に北茨城市、日立市も併記しています)です。
月平均気温の平年値をみると小名浜の方が低いですが、冬季の気温差が2℃ほどあるので、勝浦の方が温暖といえます。また、勝浦よりも小名浜の方が地区人口が5倍、都市圏人口が18倍ほど大きいので利便性の高さでいえば小名浜の方が暮らしやすいといえます。
勝浦市 | いわき市 小名浜地区 | 北茨城市 | 日立市 | |
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2023.8月最高気温(℃) | 32.5 | 32.0 | 34.1 | 34.1 |
2023.8月平均気温(℃) (平年値) | 27.9 (25.9) | 27.5 (24.5) | 27.0 (23.8) | 27.7 (25.0) |
過去観測記録で猛暑日を記録した年 | 0回 | 7回 | 3回 | 10回 |
2023.1月平均気温(℃) | 6.7 | 4.4 | 3.4 | 5.0 |
2023.1月降雪量合計 | 0 | 0 | 0 | 0 |
行政区域人口(万人)*令和5年7月末 | 1.6 | 8.1 | 4.0 | 16.7 |
都市圏人口(都市計画区域:万人) | 1.7 | 30.7 | 3.5 | 19.8 |
都市計画区域面積(ha) | 4,055 | 37,617 | 4,305 | 14,113 |
加えて、これらの地域は冬季の積雪・凍結の恐れが少ないことで知られていますので、通年で穏やかに暮らすことができるのも移住地としては良いかもしれないですね。
なお、勝浦市が都内から100km程度に対して、いわき市周辺は150~200km近く離れており、比較的近い位置には那須高原や奥日光、草津といった北関東最大の避暑地があるので、都内からの観光客はそうした有名な地域に流れやすいのかもしれないです。
とはいえ、そうした地域は混雑しやすいので、いわき市や北茨城、日立周辺も夏期の避暑地としての魅力を東京圏に向けてアピールしていくことで観光業(内需)が盛んになるかもしれないですね。
ということで以上となります。