この記事は、令和2年(2020年)国勢調査結果から、いわき市の人口集中地区がどのように推移したのかをまとめています。また、その推移からいわき市の将来性を考察しています。
*人口集中地区:国勢調査基本単位区及び基本単位区内に複数の調査区がある場合は調査区を基礎単位として、1)原則として人口密度が1平方キロメートル当たり4,000人以上の基本単位区等が市区町村の境域内で互いに隣接して、2)それらの隣接した地域の人口が国勢調査時に5,000人以上を有する地域 つまり、40人/haとイメージして頂ければOKです。この人口集中地区の人口及び人口密度がどの程度かによって物販店舗や飲食店の存続可能性などを検討することが可能です。
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人口集中地区(DID)の人口及び面積が減少
はじめに、いわき市内の人口集中地区(以下DID)の位置図です。2020年国勢調査結果によるといわき市内のDID地区は全部で8ヶ所あります。
最大規模は平(旧平市街地)・内郷・好間により構成されるNo1のエリアとなります。続いて、小名浜・泉で構成されるNo2のエリア、また、同じく平地区である郷ヶ丘・中央台(いわきニュータウン)で構成されるNo3のエリアとなっています。
こちらの表は、いわき市における人口集中地区(全ての地区の合計)の人口と面積の推移です。
年 | 総人口 | DID人口(人)・総人口に占める割合 | 面積(ha) | 人口密度(人/ha) |
---|---|---|---|---|
1970 | 327,164 | 121,034(37%) | 1,900 | 64.7 |
1990 | 355,812 | 169,239(48%) | 4,390 | 38.5 |
2010 | 342,249 | 164,757(48%) | 4,583 | 35.9 |
2015 | 350,237 | 173,057(49%) | 4,646 | 37.2 |
2020 | 333,202 | 143,992(43%) | – | – |
見て頂くと今から50年前の人口密度は64.7人/haを有していたのが、2015年には37.2人/haまで減少しています。
今回2020年の国勢調査ではいわき市内のDID面積が一部で消滅しているので、おそらく35人/ha前後あたりになると想定されます。*令和2年の人口集中地区(DID)の面積については、現時点で令和2年度の値が公表されていませんので掲載しておりません。
DID地区の面積が減少するのはコンパクトシティを進める上で良いことですが、DID地区人口は絶対に減少しちゃダメ・・・。人口が減少するということは、簡単な話、人口が薄く広がる傾向から何十年も変化していないということ。
もう少しコンパクトシティの形成に力を入れないと将来、スポンジのようなスカスカの都市が形成されます。
話を戻して、総人口に占めるDID地区人口も49%から43%まで減少していることが分かりますよね。
いわき市では、なんとか2015年までDID人口を維持していきたのですが、とうとう、この日が来てしまったのかというのが正直な感想です。これから人口減少による都市への影響が顕著に現れ、都市を蝕んでいきます。
*2015年の値は震災による双葉郡の被災者流入に人口増加が要因
この人口集中地区の人口が2020年の国勢調査結果によると前回の調査に比べて29,065人減少しています。前回(2015年)まで人口集中地区だった、「平窪」、「明治団地」、「湯本町」、「中岡町」の一部が消滅しています。
(注)平窪は令和元年東日本台風による水害の影響を受けて人口が減少・DID地区が消滅。
この人口密度が薄く広がったことで、1haあたり40人未満となっていることが課題です。可能であれば、1970年代の60人/ha前後で確保できていると、車を所有しないでも住みやすい市街地が形成されやすくなります。
40人/haという数字は市街化区域に関係します。
一度は聞いたことがあるかもしれません。水戸や日立、ひたちなかでも同様ですが、都市計画区域内には市街化区域を指定しています。
都市計画区域とは、簡単に言うと無秩序に乱開発されて秩序の無い汚い都市が形成されないよう指定するもので、人口規模が大きいと市街化を促進するための区域(=市街化区域)と、市街化を抑制する市街化調整区域を指定します。
40人/haを維持できていないということは、この市街化区域が消滅の危機の状態にあるのです。
すなわち、都市をコントロールする必要性が低いということは都市の経済力が低いということです。
一般的に40人/ha以上は市街化区域を指定するために必要です。いわき市の場合、小名浜地区の住宅が建築できない臨港地区約380haを差し引いても2015年でギリギリ40人/ha維持できているかどうか。
この市街化区域が消滅するということは、都市として存続できるかどうかに結びつきます。
「のどかな田舎のままでいいや〜〜」であれば考える必要もないのですが、中核市として浜通りの中心都市でありたいなら話は別です。
こちらの資料は、国土交通省が公表しているサービス施設の存在確率に関する資料となります。
何を言いたいのかというと、私達が普段利用している施設については周辺に一定の人口と人口密度を有していないと立地できない(立地している場合には今後、存続できない可能性を有している)ということ。
ただ人口があってもサービス施設は立地できなのです。暮らしやすい・住みやすい都市を形成するために重要なファクターは人口と密度となります。
コンビニでイメージして頂くと分かりやすいです。例えば、一般的には街中(幹線道路以外)のコンビニが立地するためには少なくとも日中の人口密度が40人/ha以上が必要と言われています。コンビニ以外にも飲食店や物販店舗、スーパーが維持するためには、施設周辺の人口が大切です。
もっと簡単に説明すると、なぜ、”不味くは無いが決して美味くは無いラーメン店”が都内だと維持できて、いわき市内では撤退(閉店)しやすいのか。→周辺人口規模の違いです。
”とりあえず入ってみるかの人の数”が違うのです。→いわき市内のラーメン店で美味いお店が多いのは、個の質を上げて商圏を広げているからです。個の質が低いと周辺人口のみでビジネスを成立させるしかありませんから、いわき市のような低密度の都市ではすぐに潰れます。
人口密度の話に戻します。
国土交通省が公表している人口集中地区の人口密度の全国平均で53.6人/ha(2015年国勢調査結果)。
都市規模別で見ると、10〜50万人都市で46.2人/haとなっていますが、いわき市の場合には、2015年に37人/haです。一方、水戸市では49.7人/ha、日立市は38.0人/ha、ひたちなか市は39.7人/haとなっています。4市の中で最も人口の大きい「いわき市」が最も密度が低いのです。
すなわち、今後、飲食店や店舗、医療などのあらゆるサービス施設の立地が困難となっていきます。
くどいんですけど、医療や飲食、店舗ビジネスの基本は密度なんです。
密度を維持もしくは増加させることが暮らしやすい都市につながります。誰もがそうですが、自家用車で何十分もかけて移動しないとサービスを受けられないよりも、徒歩や自転車の10分圏域内でサービス施設が多いの方が便利ですよね。
これからはモノが移動する時代に近づくものの、人が移動する根本的な基本原則は揺るぎませんし、リアルな店舗等のサービスでしか得られない価値は絶対的ですからね。
今後のいわき市について
従来からいわき市は複数市町村が合併した影響により同一規模の拠点が分散し、各地区不公平感なく投資(団地造成・工場用地造成)を行ってきた影響により人口集中地区が分散していています。そのような状況下に人口減少が拍車をかけているような状況です。
令和元年にコンパクトシティの形成を推進する立地適正化計画(国土交通省所管法:都市再生特別措置法)を作成し、これから推進していく段階ではあるものの、DID地区や居住誘導区域内に集中的に財政投資を行っていかないと、さらに住み難い都市が形成されていく可能性があるように考えられます。
立地適正化計画で定めている居住誘導区域やDID地区内であれば、暮らし自体の不満は少ないかもしれませんが、太った身体を華奢な足で支えるのが精一杯で、”みんなで豊な都市をつくろう”というマインド形成が難しく、 市民一人あたりのGDPも減少していく一方となる可能性が高いです。
今後も若く優秀な方は、暮らしやすい首都圏や仙台圏へ移住しちゃいますよね。
そうならないためにも、今から出来ることの一つに地道なコンパクトシティの形成があると考えています。我々でも出来ることを取り組んでいく予定です。
ということで以上です。少しでもまちづくりに興味を持って頂けたら幸いです。
次回は、水戸市・日立市のDIDに触れてみます。