【いわき市】「製造品出荷額等」が東北地方第1位の市とGDP(仙台や郡山との比較)

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今年3月に経産省が発表した「製造品出荷額等」。ご存じの方も多いと思います。

いわき市は「製造品出荷額等(令和2年)」で東北1位(8,853億円)、仙台市が東北2位(8,184億円)という結果となりました。ニュース等で1位になったことを喜ぶ報道がありましたよね。いわき市の産業構造(何でお金を稼いでいる都市なのか)を知る上では製造品出荷額等は重要な指標となります。

いわき市は、東北第2位の都市と言われるけど、いわき駅前は郡山や盛岡よりも賑わいが乏しいし第1位の仙台に比べると大きな差があるのに…人口30万人を支えている産業は何?という疑問を抱く方がいると思います。

特に、いわき市を移住先や定住先として選択肢となるかどうかは、どういった仕事が多いのかにもよりますよね。

そこで今回は、「GDP(市内総生産)」と「製造品出荷額等」のデータを用いていわき市の市民を支えている主産業は何かなどを解説していきたいと思います。

また、市内総生産(市内GDP)と合わせてみるとよりいわき市の産業の構造が分かるようになり、移住先や定住先、どういった方々をビジネスのターゲットにすればいいのか見えてくるので、ぜひ、こちらの記事を参考にして頂ければ嬉しい限りです。

その前に自己紹介です!

株式会社UrbanPoleShiftの満山といいます。

国と市役所職員を経験した元公務員で、現在は一人で起業し地方都市の活性化につながる仕事に携わっていきたいと考えています。

普段はこのブログ(まちスタ)では、水戸から仙台エリアにかけての街の魅力や情報を発信しています。
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目次

いわき市の概要と結論

こちらの記事を読まれている方はいわき市をご存知の方が多いとは思いますが、念のため、いわき市の簡単な紹介です。

いわきは、東北地方最南端の中核市(人口20万以上の市で県の事務の一部が移譲)で、行政区域内の人口としては仙台市に次ぐ2位(2020年国勢調査)、都市圏人口としては、仙台や郡山、盛岡、山形などに次ぐ規模となります。

西側は1000m級の阿武隈高地、東側は太平洋に面しているため冬季は温暖で夏季は比較的涼しい気候として知られています。

この都市圏と気候に関してはコチラの記事をご覧ください。

いわき市は1964年の新産業都市の指定(石炭産業中心の構造から転換)を受け、その後の大規模合併により他都市に比べて早期に広域的な視点から都市政策を実現できたこともあり、小名浜港背後への積極的な工場誘致と、市街地郊外での工業団地の造成誘致などを積極的に進めたことが今の工業都市を形つくっています。

地政学的にみて運が良かったというと。

東北地方の中核市の中で比較すると「製造品等出荷額」では従前から1位また2位で推移しています。

いわき市同様に新産業都市の指定を受けて工業に特化してきた郡山市も同様に東北地方では3位となっています。

こちらの数値は東北地方南部の中核市における製造品出荷額等の推移ですが、1〜4位とそれ以外の地域では大きな開きがあることが分かりますよね。新産業都市の指定(東北地方:八戸、仙台、秋田、常磐・郡山)を受けた地域は工業都市として大きく発展しています。

*製造品等出荷額とは?
1年間の「製造品出荷額」、「加工賃収入額」、「修理料収入額」、「製造工程から出たくず及び廃物」の出荷額と「その他の収入額」の合計の値です。消費税等の内国消費税を含んだ額。

また、工業都市として発展を遂げることができた理由として、いわき市は他都市に比べて製造業やこれに関連する産業に就職可能な高卒・高専卒の人口を多く有していたことも工業都市で発展を遂げた理由になります。

参考としてこちらの記事を置いておきます。
記事をクリックしてご覧いただくと今から100年前の人口を見て頂くと仙台よりもいわき地方の方が人口が多いことが分かります。

ですので、いわき市とは?何で稼いでいるまちなの?と聞かれたらブルーワーカーの方々が経済を牽引している都市としていいと思います。

こちらのデータですが、2016年のため震災復興期において建設業の好調による小売業が良かったときの値のため現在とは多少経済構造が異なりますが、それでも全国平均で比べると製造業や建設業の割合が高いです。

いわき市の製造品出荷額等と内訳

いわき市製造品出荷額等はこちらです。最新の製造品出荷額等としては、8,853億円となっています。この数値は、福島県・東北地方で1位、全国では68位となります。

都市名製造品出荷額等(百万円)
仙台市818,366
郡山市646,687
いわき市885,340
令和2年(2020年)製造品出荷額等

このうち、最も割合が大きいのは26%が「化学工業(化学)」、次が11.5%で「情報通信機械器具製造業(情報)」、8.8%が「パルプ・紙・紙加工品製造業(紙・パルプ)」、6.4%が「金属製品製造業(金属)」、5.7%が「非鉄金属製造業(非鉄)」となっています。

一方で、仙台市の製造品出荷額等の大半は「石油製品・石炭製品製造業(2019年:約5400億円)」、「鉄鋼業(2019年:約830億円)」、「食料品製造業(約590億円)」となっています。いわき市の製造品出荷額等で最も大きい額は化学工業(化学)で約2,300億円ですので、稼いでいる分野が違うわけです。

ちなみに仙台には東北唯一の製油所(エネオスさん)が立地している製造品出荷額等を牽引している形です。なお、郡山市の場合には、化学工業と食料品製造業、電子部品が牽引しています。

また、製造品出荷額等における従業員一人あたりの現金給与総額をみると、情報通信機器が最も高い結果となっています。続いて化学工業となります。市内の情報通信機器の大手企業の工場といえばアではじまる会社としてイメージやすいかなと思います。

続いて、GDPをみていきましょう!

いわき市のGDP(名目)

最新の統計データによると、いわき市のGDP(市町村県民経済)は1.36兆円で、製造品出荷額等ではいわき市に近い郡山市や仙台市と比べると次のようになります。結論としては、仙台市、郡山市には及んでいないです。

都市名GDP(百万円)第1次産業第2次産業第3次産業
仙台市5,211,9713,588649,4474,557,835
郡山市1,363,56910,210298,4441,051,309
いわき市1,357,77211,036435,084908,062
令和元年(2019年)市町村内総生産(実数)*市町村県民経済

続いて、こちらがいわき市のGDPの内訳です。全体に占める割合が大きい分野を掲載しています。

億円全体に占める割合(%)(参考)郡山市(参考)仙台市
製造業3,27924%2,197億円3,765億円
建設業1,0528%775億円2,726億円
卸売・小売業1,43311%1,724億円10,878億円
不動産業1,48111%1,671億円7,029億円
保険衛生・社会事業1,2549%1,466億円4,447億円
令和元年いわき市内総生産の内訳と郡山市・仙台市との比較

GDPでみると、仙台市と郡山市・いわき市の間には差があります。

仙台市の稼ぎ頭は「卸売・小売業」で1.1兆円、続いて、「不動産業」が0.7兆円となっています。

一方で、いわき市の稼ぎ頭は「製造業」が0.33兆円続いて、「不動産業」が0.15兆円です。ちなみに仙台市の製造業は0.38兆円となっています。

仙台市といわき市については、人口と抱えている都市圏に大きな差(3〜5倍近く)があるため単純な比較をできないのですが、仙台市は大都市として大きな集積装置の役割を担っていることから商業等をはじめとする第3次産業で稼いでいるのが特徴的であり、かつ商工業に加えて医療も充実している都市が仙台市となります(なので、仙台都市圏は今でも成長を続けています)

ちなみに労働生産性という側面でみるといわき市と仙台市とでは一人あたり200万円以上の差がある状態です。

東北地方第1位の背景にある事実

製造品出荷額等で東北地方第1位にあるものの、その背景には、新産業都市の指定による国の支援、早期に広域合併したことにより広域的な見地から都市計画を柔軟に運用できたこと。比較的人口が多かったことがあげられます。また、小名浜港を有していたこともメリットとして高いです。

ただしです。第三次産業が脆弱なのが特徴的です。

特に商業・金融等は郡山や仙台に比べると大きな差があります。

これは、都市が分散配置したまま発展を遂げるという合併初期に中心地を定めなかったことが一つの原因で、人口密度が低いことから飲食・物販をはじめとする人などを相手にするサービス業が非効率にならざるを得ないことがあげられます

非効率な状態であってもその分、人口が増加することで解決できたのですが、人口は最高で36万人で止まり、昭和中期に目標とした50万人都市は及ばず、その後は急速に人口現象が加速し首都圏に流出したことにより非効率な経済活動を展開せざるを得ない状況下です。

また、製造業を伸ばしてきたことで高卒・高専卒の雇用の受け皿になってきたものの、求人倍率で必ず上位に位置する事務職や広告・金融などの大都市で雇用が多いホワイトワーカー職の受け皿となる企業は増加しなかったことで、そうしたことも理由となって、首都圏へ進学し、Uターンしてこないのが今のいわき市の課題の一つとなっています。

これはいわき市のみに言えることではなく全国の地方の10〜30万都市では同様に課題として抱えている状況です。実際、都市計画に関わっているときにも感じましたが、いわき市にUターンにしようとすると、ホワイト職を目指す方にとっては第一候補に公務員が最優良の就職先となっている現状があります。

まとめ・補足

いわき市は製造品出荷額等で東北1位で、かつ多様な製造業により地域経済が活発であることが分かります。今後、少しづつAIに置き換わってはいく未来は予測できるものの、今すぐに労働力が削減されるわけではないため、今後もいわき市の経済を支えていくと考えられます。

ただし、社会経済や企業活動・企業競争に左右され、一般的に経済の好況時には消費者の購買力が増すため製造品の出荷額も増加する傾向にありますが、一方、経済が不況になると、消費者の購買力が低下し製造品の出荷額も減少する可能性があるのは事実です。

ですので今後も製造業を伸ばしていくことも大事ですが製造業のみに頼らないまちづくりも大切になってきます。その一つが人口減少下でも消費を促し経済を活性化させることができる観光業です。

いわき市というと観光業に力を入れているイメージが強いと思います。

観光GDPは国から統計値として比較的できるものがないので観光を示す明確なデータではないですが、GDPのうち第3次産業の「宿泊・飲食サービス業」で見てみると仙台市や郡山市と比べるといわき市が低いことが分かります。

都市名宿泊・飲食サービス業(百万円)
仙台市118,135
郡山市35,538
いわき市33,974
宿泊・飲食サービス業の比較(令和元年市町村県民経済)

いわき市は仙台市に劣らず観光資源が豊富なので、仙台市のように観光業に力入れていくことで第三次産業を強化していくことが新たな雇用創出につながるのではと考えている方です。まちづくりについても湯本地区で進めているような市街地再生事業のような必要不可欠になっていくと考えられます。

ということで以上となります

製造品出荷額等で東北地方で1位に輝いたいわき市ですが、その経済力を示す指標としての製造品出荷額等は確かに注目に値しますが、全ての経済活動や地域の豊かさをこの一点から判断するのは難しいと思います。

製造品出荷額等が高いことは単純に製造業が盛んであることを示します。また、製造業の規模が大きいことは地域経済を活性化させ多くの雇用を生み出す構造にあります。しかしながら経済は製造業だけに依存しているわけではないです。加えて、製造業(工場誘致)は、国内外の経済や企業活動(企業競争)に大きく左右されます。

地域経済は、製造業のみならずサービス業やIT業界、教育や医療、研究開発など、多岐にわたる産業が支えています。これら多様な産業が共存し、製造業とも連携しながら発展することで、地域経済はより健全で持続可能なものになると考えられます。

加えて、雇用の安定性、所得の公平性、教育の質、公共サービスの充実度、環境保全なども地域の経済や豊かさを評価する重要な要素です。これら全てがバランスよく整って初めて、地域全体としての豊かさや発展が実現すると考えられます。

したがって、製造品出荷額等で1位を獲得したことはその地域の製造業の強さを示す一つの指標であり、地域経済の規模や活動の一部を示しています。とはいえ、それだけが地域の豊かさや成功を全て示すわけではないというのが私の考えです。

東北一の都市を目指すなら、何よりも市民の所得(GDP)をあげていくことが大事なので、弱り切っている3次産業の分野を支える税投資が必要になるはず。

それではまた〜〜!

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この記事を書いた人

▼水戸〜日立〜いわき〜仙台エリアまでの常磐線沿線都市での生活・ビジネス・まちづくりに役立つ情報・サービスを届けています
▼不動産・建築・都市計画
▼主な活動範囲:水戸〜いわき(相馬+仙台)
▶︎これまでの”都市づくり”の常識を覆し、わたし達が住む地域を住みやすさを世界1位にすることを目的に活動しています。 

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